月刊バスケットボール1月号

日本代表

2021.08.26

車いすバスケ、男子も白星発進 – コロンビア代表に競い勝つ

 東京2020パラリンピックの車いすバスケットボールは、2日目の8月26日に最終戦で男子日本代表が登場。コロンビア代表に63-56で競い勝ち、大会初勝利を挙げた。


8月26日第5試合 予選ラウンドグループA(武蔵野の森スポーツプラザ)
日本(1勝)63-56コロンビア(1敗)

コロンビア 56(15 13 15 13)
日本 63(24 12 15 12)


初のメダル獲得に向け是が非でも初戦に勝利したい日本代表は、試合開始7秒に藤本怜央(持ち点4.5)が早くも3Pショットを成功させ先制すると、その後秋田 啓(3.5)と鳥海連志(2.5)を軸に得点を重ね、徐々にリードを広げた。秋田は第1Q終了間際にブザービーターとなるミドルショットを決め、このクォーターだけで得点を2ケタ(10得点)に乗せた。

 

 24-15の9点リードで迎えた第2Q、今度は最初のポゼッションで、ディフェンス・リバウンドをつかんだ藤本から鳥海へとつながるスーパープレーが飛び出す。藤本のパスは、マイアミ・ヒート時代のドウェイン・ウェイドからレブロン・ジェームズへのタッチダウンパスを思い起こさせるような力強さで、バックコートのゴール下付近から、フロントコート深くまで突っ走った鳥海めがけて飛んでいった。鳥海は高速で飛んでくるそのボールを、まとわりつく相手ディフェンダーを巧みにかわしながら右手一本でティップしてコントロール。同時に前方を確認しながらそのボールをいったん高くバウンドさせ、かつ車いすを急激にストップさせる絶妙の状況判断とボディーコントロール――自身の体と車体のコントロール――で、勢い余ったディフェンダーを一人やり過ごしてかわし、得点を奪ったのだ。

 

 この説明で、あの瞬間に生み出された驚くべき創造性と判断力、身体能力の高さが伝わるかどうか、まったく自信はない。鳥海の右手に指が4本しかないということがまったく信じられない。パラリンピックの舞台で思いっきりバスケットボールを楽しもうという意欲が、長年のたゆまぬ努力を後押しした結果としてあの瞬間を生んだのだろうか。

 

 車いすを使わないバスケットボールでは「アンクルブレーク」という言葉が世界的に通じる。感覚的には、それを見ているようだった。やり過ごされて背中を向けたディフェンダーが悔しそうに振り返る様には目もくれず、鳥海はイージーバスケットを成功させ、日本代表のリードを26-15と11点差に広げた。

 

 しかし試合はこの後、やや硬直した展開が終盤まで続く。日本代表はリードを保ってはいるものの、決定的に突き放すことができない。コロンビア代表も日本代表を追い詰めるまでの反撃機をつかめなかった。

 

 日本代表が主導権を維持できた要因の一つには、チームで唯一のプロプレーヤーである香西宏昭(3.5)が、徐々に詰められそうな雰囲気が漂っていた第3Q半ばに7連続得点で流れを作ったことが挙げられるだろう。また、4分間以上得点できず53-47と6点差に詰められた第4Q残り4分40秒過ぎに、鳥海からのバックビハインド・パスを受けたキャプテンの豊島 英(2.0)がきっちりレイアップを沈め、嫌なムードを払しょくしたのも大きかった。

 

 振り返ってみれば、序盤のアグレッシブさが勝負の分かれ目となったこの試合で、日本代表は全員がコートに登場し、結果としても好スタートを切ることができた。秋田はフィールドゴール18本中12本を成功させてゲームハイの24得点。鳥海は15得点、16リバウンド、10アシストのトリプルダブルだった。11得点を挙げた藤本を含め、日本代表は3人が2ケタ得点。豊島は4得点、3リバウンド、3アシストに加え、+11がチームハイだった。

 

文/柴田 健(月バス.com)
(月刊バスケットボール)



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