月刊バスケットボール5月号

【TOKYO2020】3x3男子日本代表、激闘の軌跡 presented by 日本郵政【気持ちを届ける、想いを託す】

©fiba.basketball

 

過去を背負い、今に燃え尽き、未来に向けて⽻ばたく準備を整えた。

勝利の歓喜も、忘れられない悔しい瞬間も味わった。

東京2020オリンピックという⾶躍の舞台に、全⾝全霊をぶっつけた3×3⽇本代表男⼥8⼈のボーラーたち。

⼀⼈⼀⼈が⼼と体に刻んだ⼀瞬⼀瞬の記憶が、パリ2024オリンピックへの道しるべとなる。

 

 

 東京2020オリンピックで初めて登場した3人制バスケットボール3x3。青海アーバンスポーツパークを舞台に、開会式翌日の7月24日から28日まで5日間にわたって繰り広げられた世界のボーラーたちの激闘に、男子日本代表はホストとして参戦していた。

 

 保岡龍斗、ブラウン アイラ、富永啓生、落合知也。4人の心に、開催国枠で出場したホストとして負けられない意地は当然あっただろう。しかしそれにも増して、今大会に臨んだ4人には、それぞれ異なる「勝ちたい理由」があったように思う。その思いが一つとなり、激戦に次ぐ激戦の末に絶体絶命の窮地から決勝トーナメント進出をつかみ取った。

 

 2勝5敗の6位でグループラウンドを通過。負け越して終わったとはいえ、実はこの中には延長2試合(1勝1敗)が含まれており、5つの黒星のうち4つは3点差以内の僅差の勝負だった。その果ての6位フィニッシュは、最低限の結果を残せたと言ってよいだろう。

 

 3x3が3x3(スリーエックススリー)と呼ばれる前から、そのカルチャーの土台であるストリートボールの世界で戦っていた落合は、男子日本代表の開催国枠での出場を可能にした国内における長年の普及・発展経過の中で日本をけん引してきたプレーヤー。長年しのぎを削った仲間たちと作り上げてきた日本のストリートボール・シーンを、ここからさらに飛躍させたい。リバウンドやルーズボールに飛びつく姿、ハドルでチームメイトの肩に手を回し語り掛ける姿から、そんな思いが強く伝わってきた。

 

 最終選考前、保岡は「自分は選ばれるかどうかの瀬戸際」と話していた。しかし一方で、昨年生涯を終えた祖父に、オリンピック出場を約束していたという。試合の応援にもよく足を運んだ亡き祖父が「夢の舞台でプレーしている姿を見てくれていると思うので、自分らしさを出していきたい」という思いは、今大会で全体の10位にあたる総得点46というパフォーマンスにつながった。

 

 日本代表が手にした2つの白星はいずれも、最終局面で富永がノックアウト弾となる2Pショットを成功させて勝ち取ったものだ。4人の中では最年少の20歳は、今秋からNCAAディビジョンIのネブラスカ大学でプレーすることが決まっている。新たな舞台で飛躍しようというタイミングでの大舞台に、燃えないわけがない。心の中の炎が、劇的なショットや華麗なドライブを通じて見る側にも飛び火してくるような、ワクワクするプレーぶりだった。

 

 日本国籍を取得し、かつては5人制で、そして今回は3x3で日本代表入りとなったブラウン アイラは、ついに究極の舞台と言えるオリンピックにたどり着いた。大会前に「帰化した多くのプレーヤーの中から選ばれたことを誇りに思います」と話していたが、並々ならぬその意欲は、身体能力の高さを生かした豪快なダンクやリバウンドでの価値ある貢献、さらには今大会で唯一、トリプルファイブ*を2度記録したプレーヤーだった事実に現れている。

 

※=トリプルファイブは得点、ハイライトおよびリバウンドの3項目でいずれも5以上の数値を残すパフォーマンスを指す(ハイライトとは、キーアシスト、ドライブ、ダンク、ブロック、ブザービーターの合計数。キーアシストは制限区域内の味方プレーヤーに得点に有利な状況を生み出すラストパス。ドライブは特に2Pエリアからゴールにドリブルで直接的にアタックするプレーを指している)

 

 4つの異なる個性はそれぞれの意欲を融合させる術を見出し、不屈の闘志で決勝トーナメント進出の道を切り開いてみせた。準々決勝で戦ったラトビア代表は、最終的に金メダルを持ち帰ったチーム。その相手に対し、日本代表は開始から4分経たずに5-13と主導権を奪われながら、2Pショット攻勢で一気に反撃し15-16まで追い上げる大健闘を見せた。

 

 胸が張り裂けるような悔しいノックアウト負けは、3年後のパリ大会で頂点に立つためには何が必要かを学ぶ試練だったと捉えたい。これからにつながる高揚感をもたらした彼らの姿は、レガシーとして受け継がれるべきだし、そうなるだろう。

 

 そのパリ大会での3×3は、大会公式サイトによればコンコルド広場が舞台となる。風光明媚なこの舞台に立つためのステップとなるワールドカップは、早くも来年、2022年6月にベルギーのアントワープで開催される。

 

 

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#23 保岡龍斗

「たくさんの応援ありがとうございました。皆さんの期待に応えられず悔しいですが自分の持てる力を全て出したので後悔はありません。何より、皆さんに3x3の魅力を少しでも伝えられたと思ってます。必ず3年後この舞台にもう一回立ちリベンジしますので応援よろしくお願いします!」

 

 

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#30 富永啓生

「こんな素晴らしい舞台とこのチームメイトでバスケをできたことがとても楽しかったし、これからのバスケ人生においてとてもいい経験になりました。自分たちのプレーを見て一人でもバスケに興味を持ってくれたり面白いと思ってくれた人がいたらとても嬉しいです。最後に一言 バスケ最高🔥🔥」

 

 

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#33 ブラウン アイラ

「彼ら(準々決勝で敗れた相手のラトビア代表)は素晴らしいチームです。長い間ずっと3×3に専念し、この競技のすべてを知っています。そこが私との違いであり、足りない部分でした。悔しい結果でしたが、準々決勝に進出できたことを幸せに思っています」

 

 

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#91 落合知也

「11年前ストリートボールに出会い、その中で3×3を始め、世界を相手に戦うようになり人生が大きく変わりました。…夢の舞台は終わりましたが、まだまだ自分のSTREET DREAMは続きます。世界に勝ちたい。この東京オリンピック後も続く3×3を是非一緒に盛り上げてください」

 

(月刊バスケットボール)



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