月刊バスケットボール5月号

姉と比較された悔しさを胸に、意地を見せた桜花学園#6平下結貴【インターハイ2021】

 

 女子インターハイ決勝は、桜花学園(愛知)大阪薫英女学院(大阪①)を攻防にわたり圧倒し、94‐65で大会3連覇を飾った。

 

 薫英の安藤香織コーチが「的を絞れなかった」と脱帽したように、桜花学園は大黒柱の#4朝比奈あずさだけでなく、一人一人が果敢にリングにアタックして4人が2桁得点。中でもこの試合、前半だけで21得点(計25得点)の活躍を見せたのが#6平下結貴だ。

 

「アップのときのシューティングでシュートタッチが良くて、今日はどんどん打っていこうと思っていました」との言葉どおり、スティールから速攻を決めた先制点を皮切りに、序盤から積極性を見せてジャンプシュートを決めていった。2Q中盤、薫英に追い上げられて一時逆転された場面でも、強気に攻めてステップインで得点。このプレーで息を吹き返した桜花学園はここから連続得点を挙げ、流れをつかんで再びリードを広げた。あの時間帯のプレーについて「相手に追い付かれたところで逃げてしまったら、岐阜女に負けた東海大会と同じになってしまう。絶対逃げずにゴールまで向かっていこうと思っていました」と平下。

 

 振り返れば、6月の東海大会決勝では「最後、自分はボールをもらうこともやめてしまって、コートの端っこで逃げ回っているだけでした。それが原因で、自分のせいで負けたと思っています」と言うほどの屈辱を味わった。特に悔しかったのは、大会後に井上コーチから言われた一言だ。

 

「先生から、お姉ちゃんだったら絶対に今回の試合は勝てていた、と言われて、自分は本当にそれが悔しくて…。インターハイは絶対に自分が点を取りに行って、チームを勝たせようと思っていました」

 

 

 そのことを口にして思い出すだけでも、平下の目からは思わず涙がこぼれ出た。姉とは、2019年に桜花学園をキャプテンとして高校3冠に導いた平下愛佳(トヨタ自動車)。幼い頃からずっと「ライバルはお姉ちゃん」と公言してきた彼女にとって、それほど井上コーチの言葉はショックだったのだろう。だが悔しさをエネルギーに変え、闘志を奮い立たせたからこそ今大会の活躍があった。

 

「逃げずに強気に攻められて、東海のときから変われてうれしいです」と笑顔を見せた平下。そんな彼女について、井上コーチも「お姉ちゃんにちょっと近付いたんじゃないかな」と賛辞を送っていた。

 

 ただ、平下は大きな自信を手にしつつも、まだまだ満足はしていない。

 

「基本的に今日はみんなシュートが当たっていました。シュートが入っているときは自分たちの流れに持っていけるのですが、準決勝などシュートが入らない時間帯で流れを持ってくるのに時間がかかっています。そういう苦しい時間帯こそディフェンスが重要だと思うので、もっとディフェンス力を上げたい。特に今年は留学生がいないので、高さで勝てない分、足を動かしてディフェンスでもっと勝負していかなければいけません。ウインターカップに向けてしっかりディフェンス面を強化したいです」

 

 優勝直後にもかかわらず、明確に自分たちの課題を語っていた平下。その目はすでに、冬の頂点を見据えていた。

 

取材・文/中村麻衣子

写真/石塚康隆、松村健人

 

※インターハイの模様は8月27日発売の『月刊バスケットボール10月号』で!

 

(月刊バスケットボール)



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