月刊バスケットボール5月号

底知れぬポテンシャルを見せた京都精華学園の1年生トリオ【インターハイ2021】

 最終スコア63-66。

 

 インターハイ準決勝で女王・桜花学園に挑んだ京都精華学園だったが、同点で迎えた4Q残り2.3秒で相手エース#4朝比奈あずさの勝ち越しのバスケットカウントを許し、無念の敗北を喫した。

 

 試合は序盤から両者一歩も譲らぬ攻防が続き、前半を終えて32-34と桜花学園が1ゴール差でリード。後半も接戦は続き、一時は桜花学園が引き離しかけたものの、京都精華学園も食らい付く手に汗握る展開が続いた。

 

 そんな緊迫したゲームの中で京都精華学園を引っ張ったのは3人の1年生。ポイントガードの#11堀内桜花、パワーフォワードの#12八木悠香、そしてセンターの#15ディマロ・ジェシカだった。

 

 中学生の頃から高いポテンシャルを見せたこのトリオは、当時中学3年生だった今年1月のJr.ウインターカップでチームを準優勝に導き、高校でも#11堀内と#12八木はいきなりスタメン、#15ジェシカも#18イゾジェ・ウチェのバックアップとして重要な戦力となっていた。

 

#11堀内のゲームメイクは桜花学園の激しいディフェンスに対しても最後まで崩れなかった

 

「最後の方はシュートを打った後のリバウンドなどが取れなくて、相手に時間を使われたりもしてしまいました。でも、今まで校長先生(山本綱義コーチ)に言われてきたことをしっかりできていた部分も多かった」と#11堀内。#12八木も「校長先生からアップのときのミーティングで『練習どおりにやれば絶対にいけるから』と言われていて、それを信じてプレーしていました。チーム全員が日本一になろうと思って練習からやっているから、桜花さん相手にも普段どおりのプレーができた」と言う。

 

 普段どおりのプレーとひと口に言っても、桜花学園が相手となるとその名に圧倒されてしまう選手も多い。にもかかわらず、1年生ながら物おじすることなく女王に挑んでいった気概は見事なものだ。

 

 特に山本コーチが「この試合の影の功労者」と評した八木の活躍はすばらしかった。桜花学園のディフェンスが#15ジェシカや#18ウチェに集中する中で、果敢にドライブを仕掛け、リバウンドに飛び込み、終わってみれば22得点、11リバウンド(うちオフェンスリバウンド6本)のダブルダブル。得点とオフェンスリバウンド数はゲームハイの数字だった。

 

#12八木は苦しい場面で何度もチームをつないだ

 

「八木は本当に見えないところでずっと努力してくれていますし、ちょっと足を故障しているけど歯を食いしばって頑張ってくれました。本来は3Pシュートも入るし、ドライブからのジャンプシュートもいけるので、こられからはそういう多彩な得点ができるようにさせてあげたい」と山本コーチ。

 

 20得点、14リバウンドと気を吐いた#15ジェシカも、この試合で不振に陥った#18ウチェに代わり、今大会最長の約30分間コートに立ち懸命にチームを支えた一人だ。山本コーチも「今日はジェシカがよく頑張ってくれました。あの子はJr.ウインターカップでも40点くらい(準決勝で36得点)取っているので、やっと火がついたかという感じ」と奮闘を称えており、そこに抜群のパスセンスでチームを操る#11堀内を併せた1年生トリオが、チームの心臓として機能。

 

#18ウチェに代わってインサイドで懸命なプレーを見せた#15ジェシカ

 

 キャプテンの#4瀬川心暖は後輩の活躍についてこのように語っていた。

 

「#12八木が積極的にリングに向かってくれたので、それがチーム全員を前に進ませようとしてくれていました。#18ウチェがダメだったときには#15ジェシカが『自分がやる』という強い気持ちで戦ってくれて、1年生が今回の桜花学園戦ではすごく支えになりました」

 

 もちろん、精神面でチームを支えた2、3年生の存在あっての1年生の活躍で、先輩たちの存在なくして全国3位という結果はあり得なかった。それでも、桜花学園戦で底知れぬポテンシャルを覗かせた#11堀内、#12八木、#15ジェシカの3人は間違いなく好ゲームを演じた立て役者だったと言える。

 

 この3人がこの先の高校キャリアでどんな進化を遂げていくのか、今から楽しみでならない。

 

写真/石塚康隆

文/堀内涼(月刊バスケットボール)



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