月刊バスケットボール5月号

飛躍の夏となった柴田学園は「バスケットが大好きな気持ちが第一」【インターハイ2021】

 

 今年のインターハイに男女アベック出場を果たした柴田学園(青森)。1956年に創部された全国常連の女子部に加えて、共学化した2年前に男子部が創設され、小野尚樹コーチが男女両方を指導してきた。男子部は3学年がそろった今年、全国初出場を果たした形だ。

 

 一足先に開催された男子インターハイ、男子部は悔しい初戦(2回戦)敗退となったが、そのとき3年生の#6齊藤凪がこんなことを言っていた。

 

「普通なら先輩から学んだりアドバイスをもらったりできると思うのですが、(1期生のため)それができないので苦労する部分もありました。ただ、先生のアドバイスを受けて、声を出すことなど女子の練習の仕方をまねするようにしたら、チームの雰囲気も変わってだんだん成長できました」

 

 小野コーチが、常々伝えていたのが「女子部のモチベーションの高さ、バスケットに取り組む姿勢を見習おう」ということだ。

 

「甘いと言われるかもしれませんが、私が第一にしているのは勝ち負けよりも『バスケットが大好き』という気持ちです。私もバスケットが大好きで、選手だった頃は人からやらされるのが大嫌いだった。バスケットが大好きだからこそ、『勝ちたい』『もっとうまくなりたい』という思いが湧き出てきます。その点、このチーム(女子)はバスケットを好きな子たちが高いモチベーションを持って、時にはケンカ腰で練習から切磋琢磨していました」

 

 そんな女子部は昨年の主力メンバーがほぼ残り、いわば今年が“勝負の年”。東北大会などが中止となり、その実力は自分たちでも未知数だったが、迎えた今大会は接戦を制して準々決勝まで上り詰めた。最後は大阪薫英女学院(大阪①)に完敗して目標の「ベスト4」には届かなかったものの、胸を張れる全国ベスト8。

 

 さかのぼれば2012年のウインターカップで中村優花(富士通)らを擁して8強入りしたが、インターハイでは創部以来初めての成績だ。かつてのような絶対的なエースがいないからこそ、「全員バスケット」(小野コーチ)で力を合わせ、チームの歴史を新たに塗り替えた。

 

 

 現2年生たちは中学時代にジュニアオールスターでベスト8を経験した選手も多く、そんな2年生に刺激を受けながら3年生も頼もしい存在へと成長。昨年から主力の変わらない経験値の高さももちろん飛躍の要因の一つではあるが、熱量を持って日々の練習に取り組み、お互い高め合ってきたからこその結果だろう。

 

 #5中三川叶羽は「今大会に来られなかったメンバーも含めて、チーム全員が同じ目標を持って同じモチベーションで練習しています。コロナ禍で練習試合ができないので、毎週日曜日などにチーム内で紅白戦をやるのですが、どこのチームとやるより自チームとやる方が苦戦するし勉強になる。相手も自分たちのことをよく分かって、止めてくるので。高いレベルでお互い切磋琢磨できて、3年間の練習の中で今年が一番楽しいです」と言う。

 

 一人一人が成すべきことを果たし、たどり着いたベスト8。だが「全国ベスト4」を目標に掲げている彼女たちにとって、見たい景色はこの先にある。充実の夏は終わったが、バスケットが大好きで、たゆまぬ向上心を持った柴田学園の選手たちは、冬を見据えて進化を止めないはずだ。

 

取材・文/中村麻衣子

写真/松村健人

 

(月刊バスケットボール)



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