月刊バスケットボール5月号

ブザービーターで敗れるも、大会を熱くした徳山商工【インターハイ2021】

 

 6月の中国大会で優勝し、シードで2回戦からの出場となった徳山商工(山口)。迎えたインターハイは2回戦、3回戦ともに手に汗握る大接戦となったが、両ゲームの明暗はハッキリと分かれた。

 

 奈良文化(奈良)との2回戦は、初戦の硬さもあって長く追い掛ける苦しい展開に。だが我慢して粘り強く食らい付き、4Q終了間際にスティールから#13上川紫乃がレイアップを決めて九死に一生を得る逆転勝利。キャプテンの#5矢原百華は「みんなが『絶対に勝つ』という気持ちで、最後まで諦めなかったから勝ち切れました」と振り返る。

 

 勢いそのままに、翌日はチームの目標である「ベスト8以上」を懸け3回戦で柴田学園(青森)と対戦。昨年のスタメンが全員残り、また高さでも勝る柴田学園相手に、徳山商工は序盤から一歩も引かずに互角の戦いを演じる。サイズでは劣るものの、激しいディフェンスやバックドアなど息の合った連係プレーを見せ、むしろ試合を引っ張ったのは徳山商工。4Q残り3分には、ロースコアな展開の中で価値ある6点リードを奪った。

 

 

 ところが、「勝ちを意識してしまったのかもしれない」と中村浩正コーチが言うように、ここからなかなかリードを広げられない。トラベリングなどのミスが出る間、逆に柴田学園に内外角バランス良く攻められて逆転を許してしまった。それでも3点ビハインドで迎えた最後のオフェンス、残り2秒で#13上川が値千金の3Pシュートを決めて同点に。試合は延長にもつれるかと思われたが、柴田学園は落ち着いていた。タイムアウトを挟み、残り2秒を使って#7相馬嘉乃が渾身のドライブ。これがブザーと同時にリングに吸い込まれ、そのまま66‐64で試合終了となった。

 

 目標のベスト8まで、僅か1ゴール届かず。喜びを爆発させた前日の2回戦とは対象的に、徳山商工の選手たちはがっくりとうなだれた。試合後、「昨日の試合同様に、自分たちのミスが多かった。そこがもう少し抑えられれば…。あとは3Pシュートを練習してきて、打てる状況は作るのですが、あまり思い切り良く打てていませんでした」と悔しさをにじませた中村コーチ。

 

 それでも、大きな選手がいるわけでもない県立高校で、全国8強まであと一歩に迫った実力は確かなもの。#5矢原は悔し涙で目を赤くしながらも「厳しい練習をみんなで乗り越えてきました。ディフェンスを頑張れるところや、勝負強さは自分たちの強みだと思います」と胸を張る。2試合連続でクロスゲームを戦い、全国大会を大いに熱くさせた徳山商工は、冬の大舞台でも躍動するはずだ。

 

 

取材・文/中村麻衣子 写真/松村健人

 

(月刊バスケットボール)



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