月刊バスケットボール6月号

和歌山信愛vs.足羽は1点差のクロスゲームに!【インターハイ2021】

 

 インターハイ女子1回戦、足羽(福井)和歌山信愛(和歌山)の試合は、最後の最後まで勝敗の読めない大接戦となった。

 

 序盤から互いに激しくディフェンスを仕掛け合い、前半はなかなか点数の伸びないロースコアな展開に。それでも5~10点前後のリードに成功し、試合を引っ張ったのは足羽。だが足羽の林慎一郎コーチは「引き離せそうな大事なところでターンオーバーや些細なミスが出て、思うようにリードを広げられませんでした」とチームがイマイチ流れに乗れていないことを感じていた。

 

 

 一方の和歌山信愛は、「前半はオフェンスがうまくいかず苦しい展開でしたが、自分たちは特別点数の取れる選手がいるわけではないので、どれだけディフェンスで粘れるかが勝負だと思っていました」(#4木村麻甫)と堅いディフェンスを見せて離されずに付いていく。結局、前半を終えて9点ビハインド(24‐33)で折り返した。

 

 そして迎えた3Q、先に流れをつかんだのは和歌山信愛。ゾーンディフェンスで相手のミスを誘い、攻めては#4木村の速攻やジャンパー、#5早川芽衣の3Pシュートなどでじわじわとその差を縮めていく。そして4Q序盤には#7軒野玲菜の3Pシュートで42‐45と3点差に。

 

 

 対する足羽は、シックススマン#12八木ちえの2連続3Pシュートでリードを保つが、和歌山信愛がついに逆転したのは残り4分17秒。オフェンスリバウンドから#5早川が決めて54‐53とひっくり返した。

 

 そこからは互いに一歩も譲らぬ大接戦に。残り1分45秒、強心臓のルーキー#14中川詩央里がこの日5本目となる値千金の3Pシュートを決め、足羽が1点リードに成功。その後は互いにミスが出て、得点が動かないまま残り時間が刻々と削られていく。

 

 

 このまま足羽が逃げ切るかと思われた最終盤、圧巻の勝負強さを見せたのが和歌山信愛のキャプテン#4木村。「いつも練習しているシュートなので、自信を持って打ちました」とハイポストからジャンプシュートを決め、残り22秒で59‐58と再逆転。続く足羽の最後のオフェンスを守り切り、和歌山信愛が劇的な逆転勝利を飾った。

 

 チームを勝利に導くシュートを決めた#4木村は「監督からは『最初から強気でいけ』と言われていたのですが、前半はなかなかそれができずみんなを引っ張れませんでした。みんなにディフェンスで助けてもらった分、後半は強気に攻めて取り返そうと思っていて、決められたので良かったです」と喜びのコメント。

 

 

 続く2回戦では、同日の1回戦を危なげなく突破した聖カタリナ学園(愛媛)との対戦になる。2回戦に向けて#4木村は「相手はオフェンスで切ってくるチームなので、もっとディフェンスを強化して、全員攻め気あるバスケットで戦いたいです」と意気込みを語っていた。

 

 一方、悔し涙に暮れた足羽だが、「絶対的エースがいない」という今年のチームは10人以上のメンバーを代わる代わる起用するのがスタイル。この試合でもそれはぶらさず、勝負強いシュートを決めた1年生の#14中川ら、下級生も含めて多くの選手が貴重な経験を積んだ。「下級生の頑張りが、冬に向けた刺激になれば」と林コーチ。苦い敗戦を糧にさらなるレベルアップを図り、ウインターカップで雪辱を果たしたいところだ。

 

取材・文/中村麻衣子 写真/松村健人

 

(月刊バスケットボール)



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