月刊バスケットボール5月号

Bリーグ

2021.08.01

桶谷 大HC(琉球ゴールデンキングス)2021-22始動インタビュー

 昨シーズン、B1西地区チャンピオンとしてポストシーズンに臨み、プレーオフセミファイナルで千葉ジェッツと3試合を戦う大激戦を演じた琉球ゴールデンキングス。2021-22シーズンの開幕が近づく中、新たにヘッドコーチに就任した桶谷 大氏のインタビューが、チームから届けられた。

 

 桶谷HCは、琉球がbjリーグに所属していた2008 年から 2012 年まで4年間に渡りチームのヘッドコーチを務め、その間に2度リーグ優勝を達成した。その後岩手ビッグブルズ、大阪エヴェッサ、仙台89ERSのヘッドコーチを歴任し、2021-22シーズンに琉球に戻ってくることとなった。2005年に大分ヒートデビルズ(現愛媛オレンジバイキングス)のアシスタントとしてスタートさせた15年のコーチングキャリアを通じて、采配力や組織力などコーチとしてあらゆる面でレベルアップしている。

 

 9 年ぶりに琉球を率いることになった指揮官は、キングスに何をもたらそうとしているのか。来るべきシーズンへの意欲や、沖縄への強い思い入れとともに語られた言葉をつづる。

 

キングスは桶谷HCにとって、特別な思い入れのあるクラブだという(写真/©琉球ゴールデンキングス)


――ずっと見てきたキングスへの思い

 

 9 年ぶりのキングスですが、実は離れている間もずっと気になっていたチームでした。組織としての基礎や文化ができる創設期から関わったので、自分がいないキングスが勝ち過ぎても嫌だし、負けても癪(しゃく)だった。日本でバスケットボールに関わっている人なら誰でも、いつかはここで活動したいと思うようなチームになりましたし、自分もいつかはまたキングスで、という気持ちがずっとありました。実現はもっと先だと思っていたので、このタイミングでの就任は自分でも「まさか」と驚いています。

 

――変わったもの、変わらないもの


キングスは成長し、人も増え、大きくなりましたね。だが、背骨は変わっていない。選手やスタッフが変わっても勝ち続けなくてはならないが、勝つだけではダメで、観客に新しいエナジーを届けるものでなくてはならないという理念は変わっていません。そのことをかつて木村社長は「スペクタクル」と表現していましたが、その象徴が沖縄アリーナに現れていると思います。キングスが大きくなったことの象徴でもあり、キングスが変わらず目指してきたことの象徴でもあると思います。

 

 昔は、自分のやりたいバスケットを目指して選手に強いていたこともありましたが、今は、選手それぞれの良い部分を凝縮して、メンバー全員がやり切った感がないと満足できない。勝っても負けてもいいバスケットができないと意味がありません。かつてキングスで二度優勝しましたが、簡単なことではありませんでした。一日一日、一試合一試合、ワンポゼッションワンポゼッションを大切にやっていった結果です。その姿勢は今も変わりません。

 

bjリーグ時代に2度成し遂げたリーグ制覇をB1で実現することができるか、その手腕に期待がかかる(写真/©琉球ゴールデンキングス)

 

――産みの苦しみを乗り越えて


今季は大型補強と言われ、能力の高い選手が揃っていて、層が厚いと言われます。ですがバスケットボールは1+1+1+1+1が単純に5にならない競技です。13人の能力を活かしつつ、ディフェンスからオフェンスのフィニッシュまで、全員が自分の役割や自己犠牲の必要性を理解することで、はじめて機能する。また、層が厚い分、組み合わせが難しいですね。正解は試合の中でしか見つからないし、それはひとつではありません。シーズン前半でいろんな組み合わせを試していきたいと思います。うまく行かないこともあると思いますが、産みの苦しみが多くあればあるほど、チャンピオンシップで活きてくる。そこには 60 試合のストーリーがあり、ファンの皆さまにはその組み合わせの試行錯誤やシーズン通してのストーリーを楽しみながら見守ってほしいと思います。


沖縄のファンにふさわしい見応えのあるバスケを。もちろん目標は優勝で、優勝するために逆算すると、ホーム・沖縄アリーナでチャンピオンシップを戦える西地区優勝が不可欠で、そのためには一戦一戦が大事になるのは間違いありません。5年前の「雑草対エリート」と言われたアルバルク東京との B リーグ開幕戦を覚えている人も多いので、特に開幕戦への期待は高いと思います。


沖縄に戻ってきて、町で毎日声をかけられ、期待されていることを感じています。沖縄は、ファンの方はもちろんですが、本当に大勢の方が応援して下さるので、ただ勝つだけではなく、地域の皆さんにまた見たいと思われるような面白いバスケをお見せしたい。沖縄アリーナでバスケをすることには、身震いするような緊張感がありますが、観て楽しむには、日本では他にない最高のアリーナなので、その価値を引き出せるようなバスケットボールを期待してください。

 

「沖縄アリーナでバスケをすることには、身震いするような緊張感があります」と桶谷HCはシーズン開幕が待ちきれない様子だ(写真/©琉球ゴールデンキングス)

 

桶谷 大(おけたに だい)
生年月日: 1977年12月23日
出 身: 京都府
出 身 校: 京都府立朱雀高等学校→アリゾナ州立大学
主な経歴:
2005-06 大分ヒートデビルズ アシスタントコーチ(2006.1-ヘッドコーチ代行)
2006-08 大分ヒートデビルズ ヘッドコーチ
2008-12 琉球ゴールデンキングス ヘッドコーチ
2008-09 bjリーグ優勝
2009-10 bjリーグ3位
2010-11 bjリーグ準優勝
2011-12 bjリーグ優勝
2012-15 岩手ビッグブルズ ヘッドコーチ
2014-15 TKbjリーグ4位
2015-18 大阪エヴェッサ ヘッドコーチ
2018-20 仙台 89ERSヘッドコーチ


文/柴田 健(月バス.com)
(月刊バスケットボール)



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