月刊バスケットボール5月号

「結果と質」にこだわり毎試合で成長を見せた中部大第一【インターハイ2021】

 

 新潟県長岡市で開催されたインターハイ男子は、地元の帝京長岡(新潟①)を54‐37で下し、中部大第一(愛知①)の初優勝という形で幕を閉じた。昨年のウインターカップは屈辱の1回戦負けだった中部大第一。そこから「全国で一番走ってきました。そこは自信を持って言える」(#7田中流嘉洲)と、厳しい練習を乗り越え、優勝の瞬間には多くの選手たちが歓喜の涙を流した。

 

 

 さかのぼれば2018年、地元の愛知県で開催されたインターハイでは決勝に進出しながら開志国際(新潟②)に敗れて日本一まであと一歩届かなかった。今大会の組み合わせが決まったとき、常田健コーチは西村彩アシスタントコーチから「先生、これ愛知インターハイと一緒ですね」と言われてハッとしたと言う。というのも、順当に勝ち上がれば3回戦で大きな山場があり、そこから準々決勝、準決勝、決勝と勝ち上がっていく流れが奇しくも 2018年のインターハイとよく似ていたのだ。不思議なめぐり合わせを感じながら「愛知インターハイのリベンジを考えたら、このシナリオで勝たないと次はないなと。そういう思いも考えながら戦いました」と常田コーチ。

 

 

 今年の選手たちは、昨年から試合に絡んできたメンバーが多い。とはいえ昨年はインターハイが中止、ウインターカップは1回戦敗退だったため、決して全国での試合経験が豊富というわけではなかった。今年6月の東海大会ではガードの#11下山瑛司をケガで欠きながら優勝したものの、決勝は良い試合内容とは言えず。ただ、そこは伸びしろと捉えて、今大会に入っても常田コーチは「結果だけでなく内容、質にもこだわれ」とたびたび選手たちに伝えていた。それは経験を重ねながら、毎試合で成長していくためだ。

 

 

 実際、選手たちは毎試合で成長していった。最初の山場となった3回戦、因縁の相手・開志国際を破って勢いに乗ると、準々決勝(vs.北陸学院(石川))も快勝。そして真骨頂を見せたのは準決勝の福岡大附大濠(福岡)戦で、激しいディフェンスと内外角バランスの良いオフェンスを披露し、83‐69という会心のゲームで勝利を飾った。最後の決勝戦は、「お互いによく知っているチームで、前半は帝京長岡さんのペースにどっぷりハマって、自分たちの思いどおりにいかないストレスがすごく多い状況」だったものの、ゾーンとマンツーマンをうまく使い分けた巧みなディフェンスで我慢。3Qからはオフェンスが噛み合いだしてリードを奪い、終盤は相手を突き放して「本当に思うとおりにいかないゲームでしたけれど、最後は勝ち切れて、選手がよく頑張ってくれました」と常田コーチは手放しにたたえた。

 

 

 決して楽な組み合わせではなかったが、大会中にも成長を遂げて5試合を勝ち抜いた中部大第一。結果だけでなく内容にもこだわったのは、「インターハイはいわば全国大会の新人戦です。全国の強豪校がこのまま終わるわけはないですし、ウインターカップが本当の勝負」(常田コーチ)と、冬を見据える意味もあった。課題も見え、「ここで優勝しても、次のウインターカップは1回戦で負ける要素が十分ある」と気を引き締める常田コーチ。キャプテンの黒川才徳も「課題は本当に多いくらいあるので、質の高い練習を大事にしてそこをしっかり修正できるように。冬はまた違った、強い中部大第一を見せたいです」と誓い、夏冬の2冠を見据えていた。

 

※インターハイの模様は8月27日発売の「月刊バスケットボール10月号」で大特集! お楽しみに!

 

取材・文/中村麻衣子 写真/石塚康隆

(月刊バスケットボール)



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