月刊バスケットボール10月号
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馬瓜エブリン
PF/181 cm
トヨタ自動車 アンテロープス[/caption]

 

[東京2020 女子日本代表の横顔]

攻防でカギを握る起爆剤。初の五輪で救世主になるか

 

 2020‐21シーズン、トヨタ自動車アンテロープスをWリーグ初優勝に導き、プレーオフベスト5にも選出された馬瓜エブリン。力強くダイナミックなドライブや、体を張った飛び込みリバウンドが持ち味で、レギュラーシーズンでは平均15.79得点、9.16リバウンドを記録した。

 日本育ちで両親はガーナ人。U16日本代表に選出された中学生のとき、「日本代表になりたい」と妹のステファニー(トヨタ自動車)を含めて一家四人で日本国籍を取得する。ただ、2016年のリオデジャネイロオリンピックでは代表メンバーから落選。悔しい思いを味わった分、その後は代表メンバー定着を目指して全力を尽くしてきた。

 A代表としては2017、19年のFIBAアジアカップや2018年のワールドカップに出場。特に世界の強豪相手に貴重な経験を積んだのが、スターターで起用されたワールドカップだ。「トムさん(ホーバスHC)からも『あなたの仕事はドライブだ』と言われていて、そこは負けないという気持ちでプレーしました」と、指揮官の期待に応えて果敢にアタック。また、代表活動の中で本格的に取り組んできた3Pシュートも高確率で決めてみせ、ベルギー戦では延長戦に持ち込む同点3Pシュートに成功した。このプレーについて当時の馬瓜は「それまでシュートは入っていなかったのですが、感覚的には入りそうな感触がずっとあったので『絶対入るな』という気持ちで打ちました」と度胸満点のコメント。勝負どころで活躍できる気持ちの強さ、クラッチプレーヤーの素質をうかがわせた。

 アジアカップやワールドカップでは、ディフェンス面が一つの課題となってきた。だが馬瓜自身もそれを理解して強化に取り組み、今年6月に行われた国際強化試合では成長の跡を披露。ホーバスHCに「ドライブやローポストでのアクティブなディフェンスなど、いい仕事をしました」と言わしめた。193cmのエース・渡嘉敷来夢(ENEOSサンフラワーズ)がケガで代表メンバーから外れ、ホーバスHCは「サイズダウンするので、より足を使ったディフェンスが必要。オールコートでプレッシャーを仕掛けて、スティールを増やして速いバスケットがしたい」と構想を語る。自分より高さのある相手に付くこともある馬瓜のポジションは、ディフェンス面において重要な役目を担いそうだ。

 コートを一歩離れれば、周囲を盛り上げるエンターテイナー。頭の回転が早く、陽気なキャラクターでその場の雰囲気を明るくする存在だ。自身初めてのひのき舞台でも、その勝負強さやキャラクターを生かしてコート内外で仲間を勢い付けるだろう。

(中村麻衣子/月刊バスケットボール)



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