月刊バスケットボール1月号

3x3女子代表、パリ2024への旅路の始まりを告げた涙の大健闘

フランス代表相手の準々決勝終了直後、勝者と敗者はお互いの心をぶつけ合いながら健闘を称えあっていた(写真/©fiba.basketball)

 

 オリンピックのバスケットボール競技に今回の東京大会で初登場した新種目、3×3に出場した女子日本代表の戦いが、7月27日夜に行われた準々決勝で終わった。

 

 4強入りをかけたフランス代表との最後の試合は、1点ビハインドで残り時間0.6秒まで勝てる可能性を残す大激闘。14-16で勝負が決した直後、最終局面のプレーで同点ショットを決められなかった馬瓜ステファニーは、コートにしゃがみ込み顔をあげることができなかった。西岡里紗、篠崎 澪、山本麻衣。皆、目を赤くしていた。

 

 金メダル獲得を目指す挑戦が突如として幕を閉じた後、敗退を受け入れる準備はいまだにまったくできていない。しかし5位フィニッシュという無情な結果が突き付けられ、それを動かすことはもうできない。

 

 勝ちたかった。勝てた。勝ってほしかった…。プレーヤー、スタッフ、各種媒体で彼女たちの奮闘に声援を送ったファン。皆、そんな一つの同じような気持ちになったのではないだろうか。

 

 女子日本代表はグループラウンドを終えた時点で5勝2敗の4位。そこまでの経過でフランス代表に一度は勝っていたし、トップ通過のアメリカ代表を破ったのは彼女たちだけだ。1試合当たりの平均得点18.0は出場8チーム中3位の成績だった。

 

 アメリカ代表のプレーメイカー、ケルシー・プラムは、今大会唯一の黒星を喫した日本代表との試合後のズーム会見で、マッチアップしなければならなかった篠崎や山本について「とても素早くよく鍛えられていますね。今日はやられました」と素直に脱帽するコメントを返した。「持ってきたゲームプランを実行して、絶対に勝つという気持ちが伝わってきました」

 

 彼女たち4人とスタッフ、また最終選考でカットされたメンバーたちは、3×3女子日本代表に金メダルを語る資格が十分あることを示してくれた。戦績とプレーぶりに加え、上記のようなデータや対戦相手のコメントがそれを裏付ける。気の早い話かもしれないが、3年後のパリオリンピックで金メダルをねらえる位置に立っているということだ。

 

 連続4日間、4人で8試合。波のように押し寄せる感動を何度も届けてくれた80分間の激闘。パリ2024への旅路の始まりを告げた彼女たちの、涙の大健闘を心から称えたい。

 

☆3×3女子日本代表試合結果 ※スコア(勝敗)


7/24 vsROC 18-21(0-1)
7/24 vsルーマニア 20-8(1-1)
7/25 vsモンゴル 19-10(2-1)
7/25 vsフランス 19-15(3-1)
7/26 vs中国 12-15(3-2)
7/26 vsイタリア 22-10(4-2)
7/27 vsアメリカ 20-18(5-2)
7/27 vsフランス 14-16(準々決勝)

 

☆個別成績

プロフィール: 氏名、ポジション、身長、所属

スタッツ略号: P=得点 R=リバウンド KA=キーアシスト 1PM=1Pショット成功数 1PA=1Pショットアテンプト数 1P%=1Pショット成功率 2PM=2Pショット成功数 2PA=2Pショットアテンプト数 2P%=2Pショット成功率 FTM=フリースロー成功数 FTA=フリースローアテンプト数 FT%=フリースロー成功率 色付きの数字=ダブルファイブ(5人制でいうダブルダブルと同じ概念で、スタッツ2項目以上で5以上の数字を残すこと)

※表中の色付き行は準々決勝

 

篠崎 澪 G/167cm/富士通 レッドウェーブ

 

準々決勝での篠崎は9本中7本のショットを決め7得点と大奮闘だった(写真/©fiba.basketball)

 

 1対1からのドライブ、オフスクリーンでボールを受けてのペイントアタック、そして2P エリアからと、多彩な得点力を発揮した。大会前、オリンピック予選では迷いがあったと明かしていたが、この4日間は集中力と緊迫感を常に感じさせていた。全試合で3得点と2リバウンド以上。スタッツ項目2つ以上で5を上回るダブルファイブも3度あった。

 

 

西岡里紗 C/186cm/三菱電機 コアラーズ

 

リバウンドに食らいつく西岡。体を張ったプレーでチームを良く支えた(写真/©fiba.basketball)

 

 日本代表に欠くことのできないインサイド・プリゼンスを提供し、スクリーナーとしてよくチームを支えた。サイズのある世界のボーラーたちに対抗し、特にグループラウンドのフランス代表、アメリカ代表との試合では、長身で動ける相手をスローダウンさせるフィジカルなディフェンスも光った。

 


馬瓜ステファニー F/182cm/トヨタ自動車アンテロープス

 

まさしく最後の最後まで勝ちにいく根性を見せた馬瓜。その姿を誇らしく思ったファンが、今や世界中にいるはずだ(写真/©fiba.basketball)

 

 準々決勝では最後の最後に敗北の責任を感じてしまったかもしれないが、一人で背負うべきものでは決してない。間違いなく今大会のトッププレーヤーの一人。合計48得点は7位タイの記録で、準決勝以上に進出しなかった、試合数が8試合より少ないチームのプレーヤーの中ではトップだ。

 

 

山本麻衣 G/165cm/トヨタ自動車 アンテロープス

 

山本は今大会も、厳しいマークをかわし、かいくぐりエキサイティングなフィニッシュをたびたび生み出した(写真/©fiba.basketball)

 

 本人が望むだけチームを勝利に導けたと言ったらうそになるだろう。しかしどの試合でもアグレッシブに攻め、オープンにしたら決められるという脅威を相手に与える存在だった。特に、最終的に金メダルを手にしたアメリカ代表を倒した試合で今大会最高の8得点。相手の司令塔プラムが称賛した理由もわかる。

 

 

今大会の3×3女子日本代表を見て「私もやってみたい」と思った人も多いはず。それだけ人の心を動かす4人の活躍だった(写真/©fiba.basketball)

 

☆大会最終順位


3×3は7月28日に5日間に渡った全日程を終了。女子4強のメダル争いは、決勝でアメリカ代表がROCを18-15で下して金メダル。3位決定戦では、銀メダルを手にしたROCに敗れた中国代表が、フランス代表を16-14で破り銅メダルを獲得した。

 

1位 アメリカ

2位 ROC

3位 中国

4位 フランス

5位 日本

6位 イタリア

7位 ルーマニア

8位 モンゴル

 

文/柴田 健(月バス.com)
(月刊バスケットボール)



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