月刊バスケットボール5月号

メインコートへの挑戦権をつかんだ飛龍、“チビの生きる道”を体現し八王子学園八王子を下す【インターハイ2021】

 試合終了のブザーとともに飛龍#5山本愛哉がボールを宙へ放り投げ、喜びを爆発させた。

 

 3回戦で八王子学園八王子と対戦した飛龍は、最後の最後まで分からない大接戦をモノにし、ベスト8、メインコートへの切符をつかんだのだ。チーム史上最高成績に並んだ今年のチームは、#5山本を筆頭にもう一人のガード#4坂田翔やインサイドで泥臭く仕事をこなす#15渡邊晴ら3年生を中心にケミストリーがピカイチの集団だ。

 

 この試合では高さに勝る八王子に対して序盤から激しいクロスゲームを展開し、前半は35-38。後半に入っても一進一退の攻防が続いた。しかし、ここで抜け出したのが飛龍だった。好調の#9畑尻祐哉が3P、フローター、ミッドレンジジャンパーと連続得点で逆転に成功すると、4Qには#4坂田のスティールを#4山本がつなぎ、最後は#6庄司空人がレイアップ。直後には#5山本が追加点を挙げて9点のリードを奪った。

 

チームを引っ張った#5山本

 

「チーム全員が気持ちを全面に出して、そこからしっかりとディフェンスからオフェンスにつなげられたのが今日の勝利のカギになりました」と#5山本。

 

 しっかりと足を動かし、ルーズボールに食らい付き、泥臭くシュートをねじ込む。インサイドのディフェンスでも原田裕作コーチが「この試合のMVP」と語る#15渡邉が踏ん張り、ビッグマンに簡単な得点を許さなかった。こうした気迫が飛龍に良い流れを呼び込んだのだ。

 

#5ムスタファに簡単に仕事をさせなかった#15渡邉

 

 原田コーチは「リバウンド・ルーズなどでは(気持ちの面で)八王子さんを上回ることができたと思います。今年は例年よりもさらに小さいチームです。その中で私が言っているのは、言い方は悪いかもしれないけど、『チビの生きる道はどこだ?』ということです。チビが弱気になったり、ルーズで負けるのは絶対にダメ、大きい選手に勝てるのはそういうところだというのは常日頃から言っていることです。今日はそれを体現してくれました」と安どの表情を浮かべていた。

 

 特に最終盤では#9畑尻がラインギリギリのボールにダイブしてポゼッションを奪ったり、積極的にダブルチームを仕掛けて#6庄司の連続3Pを生み出したりと、最後まで逆転を許さなかった。

 

この試合で好調だった#9畑尻が何度もチームを勢いづけた

 

 最終スコア74-72。勝利した瞬間について#5山本は「最後の瞬間はものすごくうれしいという感情が一つ、それとチームの目標がベスト16だったのですが、それでもメインコートに立ちたいという気持ちで挑んで勝てたので正直、まだ実感が湧いていません(笑)」とはにかんだ。

 

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 明日の対戦相手は仙台大明成。小柄な飛龍とは対照的な超大型チームだ。「自分たちのバスケットを、飛龍らしいバスケットをすれば面白い試合になるんじゃないかと思いますし、自分たち自身も楽しいバスケットになると思います。勝ちにこだわるのは大前提ですけど、自分たちのすべきことを貫き通したい」と原田コーチ。

 

 今日の試合で体現した“チビの生きる道”。明日の準々決勝でもその点が試合の見どころとなりそうだ。

 

取材・文/堀内涼(月刊バスケットボール)

写真/松村健人

 



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