月刊バスケットボール5月号

“地元の中の地元” 新潟・長岡市でインターハイを戦う 帝京長岡

 

インターハイがいよいよ開幕する。

 昨年は新型コロナウイルス感染症の影響で史上初めての中止となったインターハイ。戦いの場を得ることなく卒業した3年生、その姿を目の当たりにした2年生と1年生、指導者、保護者。様々な人の思いを包み込んだインターハイが2年ぶりに幕を開ける。

 毎年、開催地のチーム(学校)にとっては“ホーム”での戦いとなるインターハイ。今年の男子大会の開催地となるのは新潟県長岡市だ。そして、新潟県予選を勝ち抜いて1位出場となったのは帝京長岡(開催地である新潟県からは予選2位の開志国際も出場)。そう、帝京長岡にとっては正に“ホームの中のホーム”で戦うインターハイとなる。

 今年に入り、1月の県新人こそ準優勝に終わったものの、その後の北信越新人とインターハイ県予選、そして北信越大会で優勝を飾り好調の帝京長岡。いよいよインターハイ開催月となった7月1日、同校の柴田勲コーチに話を聞いた。

 

 

私は選手たちが自分の力を

存分に出せるようなベンチワークをし

彼らには思い残すことのないように戦ってほしい

 

 

――今年はここまでとてもいい成績ですが、その要因はどんなところにあるのでしょう?

 

 今年も、他校との練習試合はあまりできなかったのですが、自分たちの練習は去年と比べてできてはいます。ただし、コロナ以前より練習時間は少なくなっています。以前ならば毎日3時間ほど行っていたのが、今は最初のウォーミングアップから最後の補強トレーニングまで入れても2時間から2時間半くらいで終わっています。また、補強トレーニングよりも2対3や3対4など対人形式の練習を増やしています。しかし、それが良かったのかな…と思う部分もあるのです。

以前は、ある程度時間をかけてやっていくことがいいのだと考えていました。しかし、練習時間が少なくなった今は疲労がそれほど溜まることなく、コンディション的にも毎日、適度な運動量と適度な疲労感の中で練習ができているのかなと思います。時間を短くしたことで成果が出たことに私自身も気付かされているところです。過去にこのチームを支えてきた先輩たちからすると、「ちょっと練習量が足りないんじゃないか?」「うらやましいな」なんて思われるかもしれませんが(笑)

こういう環境(コロナ)の中で練習にも様々な制限がありますが、得られるものもあるのだな…と感じています。

 

 

――それは意外な発見ですね。ところで、今年中心となっている選手について教えてください。

 

 今、この子が成長してくれたらチームがさらに強くなるな…と感じているのは本間栞汰(3年、178cm、SF)です。ディフェンスはとてもいいのですが、オフェンスでしばしばポカをやる。しかし、真面目で本当に献身的な選手で、彼の成長がチームの強化になると思っています。

 また、今うちが新潟や北信越で少しリードしている要因としては、島倉欧佑(3年、181cm、SG)、古川晟(3年、178cm、SF)の存在が挙げられます。インターハイでは、彼らがいつもどおりの力を出していけるかというメンタリティーがカギになってくると思います。

そして、そんな彼らを箕輪武蔵(3年、172cm、PG)が落ち着いて見ながらゲームを進めていってくれるといいと思います。

チーム全体としてはメンバーそれぞれに課題があり、例えば留学生でゴール下を守るコネ・ボウゴウジィ・デット・ハマード(3年、205cm、C)も、本当にケガのないように気を付けながらインターハイ本番に向けて練習をしています。

 

――今年は地元・長岡市での開催とあり、ひときわ特別なインターハイになると思いますが、どんな思いで臨まれますか?

 

 地元の中の地元。こういった巡り合わせはなかなかないと思いますし、選手たちの「よし、やってやろう!」という気持ちにもつながっています。監督としては何とか結果を残したい。でも、もし結果が残らなかったら…という心配や不安もありますが、ここまできたら選手たちが自分の力を存分に出せるようなベンチワークをして、やれるところまでやって、思い残すことのないように戦ってほしい。いただいたチャンスを彼らとともに楽しんでいけたら、結果もついてくるのでは…と思っています。

 

 

 

子どもの成長とは、

指導者が何らかの狙いを持って変えていくものではなく、彼ら自身が経験したり体験したり感じたことによって自ら変わってゆくもの

 

――今日(取材日の7月1日)は、バイオレーラ(VAYoreLA)とBMZの共同開発によるインソール(シューズの中敷き)の制作に際して、選手の皆さんの足型の測定と、人間の足本来の機能を知り、スポーツ選手にとっての足の負担などについて学ぶ『足育』が行われます。帝京長岡といえば長年バイオレーラのユニフォームを着用されていますが、始まりはどんなきっかけだったのでしょうか?

 

 私は帝京長岡に来て今年で12年目になります。

大学(国際武道大)を卒業して、私はまず東京の帝京高校に体育の講師として赴任し、バスケットボール部のアシスタントコーチを務めました。当時、同校で先輩だったのが現帝京長岡の浅川節雄校長です。その後、私は山梨県の日本航空高校を経て、浅川校長からの声掛けで帝京長岡でコーチを務めることになりました。

 バスケットボール部もゼロからの再スタートということでユニフォームを新調することになったのですが、そんな中いろいろ協力をしていただいたのがバイオレーラだったのです。新しいユニフォームを作るのに際して、学校や私からの希望を伝えて、それに対してプロの立場できめ細かく応えていただきました。あれから12年が経ちますが、当時バイオレーラはまだ比較的新しいブランドでしたので、帝京長岡はチームとして、そしてバイオレーラはバスケットの専門ブランドとして、ここまでいっしょに成長している…と私は、勝手にですが(笑)、感じています。

 

 

 

 

帝京長岡は学校教育を通じて子どもたちにたくさんのことを学んでほしいと考えていますが、バイオレーラは様々な社会貢献活動をされており、そんな部分でも厚くサポートしていただいています。今日の『足育』も、今だけのテーマではなく、子どもたちの将来を見据えてとても意義のあるものだと考えています。

 

 

――シューズのインソールに関しては、柴田コーチご自身も普段から関心がおありのようですね。

 

 私はシューズにして着るものにしても、普段身に付けるものは自分自身の感性で、「あ、これは合うな…」と感じられるものを選んでいます。でも、突き詰めて考えたとき、それが本当に自分の体に合っているのかどうかは、実は分かっていない部分が少なくないのではという疑問を感じることもあるんです。そういう意味で今日の足型の測定や『足育』という機会はとても貴重で、自分の感性だけなく、客観的なアドバイスをいただくことで新たな発見や気づきを得られるのではと思っています。

 

 

――部活動はスポーツを通じた『教育』だと思いますが、今日の『足育』にもそういった一面がありそうですね。

 

 子どもたちの成長というのは、僕らが意図したり、何らかの狙いを持って変えていくものではなく、彼ら自身が経験したり体験したり感じたことによって自ら変わってゆくのが本来のあり方だと思います。今日の『足育』も、子どもたちがそうした体験をできる機会なのだと思います。

 

 

――最後に、柴田コーチは普段から「日本一を目指す習慣」を子どもたちとともにモットーとされているとのことですが、帝京長岡での3年間で子どもたちに伝えたいことはどんなことですか?

 

 帝京長岡でやっていることが一番ではないでしょうし、最高でもないと思っています。しかし、卒業して次のステージに行ったときに、それぞれの環境の中で自分の立場や役割を考えながら、帝京長岡で学んだことをきっかけに自己成長していってほしいと考えています。常に、次につなげていける学びの姿勢、時代の変化に合わせて、自分に必要なものと、そうでないものをきちんと選別できる感性を磨き、社会貢献や自己実現に結び付けていってほしいと願っています。

「溌剌」という言葉は今年、帝京長岡バスケットボール部が掲げるスローガンなのですが、部活動を通じて溌剌と、力を合わせて、粘り強く、挑戦する心を育ててほしいと思っています。明るく、元気よく。そしてみんなで力を合わせなければ粘り強さというものもなかなか出てきません。そうしたことを日々の練習から大事にしながら、お互いに声を掛け合い、力を合わせることで粘り強さが生まれてくる。そして、その粘り強さの中から何かに挑戦する姿勢が生まれる。そうした考えを根底にしながら、子どもたちとの日々を過ごしています。

 

 

バイオレーラHP

https://vayorela.jp/

 

バイオレーラの "足育プロジェクト"

https://vayorela.jp/blogs/detail/377

 



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