月刊バスケットボール5月号

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2021.07.23

男子バスケアメリカ代表、ロスター全員がそろうのは初戦前日

ポーカーフェイスのポポビッチHC。プレーヤーとスタッフを信頼しているからこそ落ち着いた対応をしているのだろう(写真/©USA Basketball)


東京オリンピックに出場する男子バスケットボールのアメリカ代表は、女子代表チームとともに7月20日夜に日本に到着し、翌日には大会関連の手続き対応に続いて練習、そしてメディア向けの会見も開始するという忙しい日程をこなしている。初回の会見に姿を見せたのはグレッグ・ポポビッチHC(サンアントニオ・スパーズ)、ケビン・デュラント(ブルックリン・ネッツ)、ジャベール・マッギー(デンバー・ナゲッツ)の3人。翌22日にはアシスタントのスティーブ・カー氏(ゴールデンステイト・ウォリアーズHC)に続いてジェイソン・テイタム(ボストン・セルティックス)、ジェラミ・グラント(デトロイト・ピストンズ)が登場した。


21日は、アメリカ時間では午前中(アメリカ時間20日夜)にNBAファイナルが終わり、クリス・ミドルトンとジュルー・ホリデーが所属するミルウォーキー・バックスが50年ぶりとなるリーグ制覇を成し遂げた日。二人に加えて、敗れたフェニックス・サンズ側のデビン・ブッカーが、ようやく来日の準備に取り掛かることができるようになったタイミングだった。

 

 ポポビッチHCは来日前の時点で、「ファイナル組」の3人の合流が24日の土曜日になることをほのめかしていた。21日の会見では、実際の合流時期について把握できているかとの質問も飛んでいたが、回答は「No」。短い一言で返答する普段の“ポポビッチ節”が東京でも変わらず聞かれているのはある意味でアメリカ代表らしいのだが、各メンバーの力を一つにまとめ、強い結束で戦うというケミストリーがしっかり作っていけるかがやや気がかりになるコメントだった。

 

 翌日、カーAコーチが語った内容が、ポポビッチHCの一言を補足する。それによれば、ファイナル組の到着はやはり24日。アメリカ代表がフランス代表を相手に戦う大会初戦前日だが、いたしかたのないところだろう。ファイナル組はジェフ・バン・ガンディとともに来日するとのことで、チームのコンセプトや戦術面などについてはバン・ガンディが3人に伝えているそうだ。それでもカーAコーチは、「彼らをどれだけ早く(全開状態で)起用していけるかがコーチ陣の間でも大きな課題」と認めていた。

 

2日目に登壇したカーAコーチも、遅れて合流するメンバーの準備不足が課題であることを隠さなかった(写真/©USA Basketball)

 

コロナ対策でラビーンの合流も遅れている


また、異なる類いの問題として、新型コロナウイルス感染症対策がある。この問題でロスターから外れなければならなかったブラッドリー・ビール(ワシントン・ウィザーズ)に代わって、来日直前のキャンプ半ばから12人の最終ロスターに加わったケルドン・ジョンソン(サンアントニオ・スパーズ)がフィットしてこれている点、ビールとともに健康安全プロトコル適用となったグラントがその後チーム活動に参加できている点は良い兆候だ。しかし、やはり同プロトコル適用となったもう一人のメンバーであるザック・ラビーン(シカゴ・ブルズ)は、チームと同行しての入国とはならなかった。ポポビッチHCによれば、ラビーンは「金曜日の練習には間に合うでしょう。すべて順調なら日曜日(対フランス代表戦)も大丈夫です」とのこと。どうにか間に合う…といった現状で、持てる力のすべてを発揮できることを願いたいが、簡単ではないだろう。

 

 ポポビッチHCは、ケミストリーについて「(うまく作られていくことを)望んでいます…。これは無理に強いても育まれるものではありません。ケミストリーは一日一日の積み重ね。有機的に生み出されていくものですからね」とも話しており、プレーヤーたちとスタッフたちの人となりと力量に信頼を寄せるスタンスのようだ。「チームの雰囲気は非常に良い。人格者がそろっていますし、意欲満々です」とのことで、自信を持っている様子ではあった。

 

 公開された練習風景の映像などを見れば、やはりアメリカ代表は強そうだなと感じる。しかし、ロスターが顔をそろえていない現状と、ラスベガスで行われたエキジビションの結果(ナイジェリア代表とオーストラリアに連敗した後アルゼンチン代表とスペイン代表に連勝)を考えれば、FIBAワールドカップ2019の時のような結果(準々決勝でフランス代表に敗れ最終的に7位)にならないと断言もできない。何しろ世界のレベルは、日本を含めて上がっている。

 

 アメリカ代表は今大会でグループAに入り、前述のとおり25日(日)の対フランス代表戦で4大会連続金メダルへの戦いを始める。その後のグループラウンドは28日(水)にイラン代表と、31日にチェコ戦と対戦する予定だ。


文/柴田 健(月バス.com)
(月刊バスケットボール)



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