月刊バスケットボール6月号

女バス日本代表、希望膨らむプエルトリコ戦完勝

 東京オリンピックで金メダル獲得を目指す5人制バスケットボール女子日本代表が、7月17日に行われた三井不動産カップ2021で、プエルトリコ代表に対し貫禄の勝利を挙げた。

 

 94-59の圧勝。しかも、ここまでのエキジビション4試合でいまひとつ調子が上がっていなかった林 咲希(ENEOSサンフラワーズ)、故障明けの宮澤夕貴(富士通レッドウェーブ)、本橋菜子(東京羽田ヴィッキーズ)らが活躍し、12人全員が本番に向けて明るい材料を持っていくことができる状態。チームとしてもその過程で、全試合に勝利した。

 

この試合で3Pショット4本を決めチームハイの14得点を挙げた林

 

 

 この試合で日本代表が35点差の勝利を収めたことには、金メダル獲得の力量を図る上で大きな意義がある。プエルトリコ代表はFIBA世界ランキング23位。この6月に同国のサンファンで開催されたFIBAアメリカップには東京オリンピック向けのロスターで臨み、ホストとして準優勝と一定以上の結果を残した。しかし決勝戦で敗れたアメリカ代表は大学生のセレクトチーム。スコアとしても59-74と突き放された。

 

 プエルトリコはまた、日本代表が9位に終わったFIBA女子ワールドカップ2018のグループ戦で対戦し、苦しんだ相手でもあった。3年前の対戦では前半で15点差をつけながら、最終的には69-61と一ケタ得点差での勝利。FIBA世界ランキング10位で、自国開催の東京オリンピックで金メダルを手にしようというチームならば、この相手につまずいてはいられない。そんな中での35点差の勝利は、間違いなくチームに自信をもたらしたことだろう。

 

スロースタートから後半スパート


長岡萌映子、三好南穂(ともにトヨタ自動車アンテロープス)、高田真希、赤穂ひまわり(ともにデンソーアイリス)、町田瑠唯(富士通レッドウェーブ)の5人でスタートした日本代表は、赤穂のドライビングレイアップで先制。町田も鋭いドライブで得点すると、長岡もドライブからフリースローを得、2本沈めて約3分半を過ぎたところで6-0とリードを奪った。この時間帯は畳みかけるような勢いはなかったが、ディフェンスで楽なショットを打たせず、獲るべきリバウンドをしっかり自分たちのものにし、辛抱強く戦った。

 

 前半は粘られ、ハーフタイムのスコアは39-31。プエルトリコ代表はチームとしての完成度の点で日本代表に比べればやや粗削りなところはあるものの、この日21得点を挙げたジェニファー・オニルをはじめ、個々のタレントとしては粒ぞろいだ。それぞれが打開力を持っており、日本の厳しいディフェンスに対抗した。

 

 勝負を決めたのは第3Q開始から5分間の18-4のラン。第1Qにできなかった畳みかけるオフェンスに加え、相手から4つターンオーバーを誘う厳しいディフェンスで、一気に57-35と22点差まで突き放した。


日本代表はこの時間帯に町田が4アシストとWリーグアシストリーダーの実力をいかんなく発揮。果敢なアタックで相手ディフェンスのコートバランスを崩しては、長岡や高田らフロントラインのフィニッシャーをおぜん立てした。また、赤穂の3本をはじめオフェンス・リバウンドにチームとして力強く食らいついた。

 

 これ以降日本代表が危機を迎える時間帯がやってくることはなく、個々のプレーヤーが持ち味を最後まで発揮し続けてゲームセットを迎えている。

 

 

宮澤夕貴も故障からの復活を印象付けた

厳しいディフェンスでプエルトリコ代表を苦しめた日本代表(写真/©JBA)

 

いよいよ本番の戦いが始まる

 

 東京オリンピック本番の女子日本代表は、アメリカ代表(FIBA世界ランキング1位)、フランス代表(同5位)、ナイジェリア代表(同17位)と同じグループB。25日(日)までの第7次強化合宿を終えた後、7月27日(火)の対フランス代表戦から4チーム総当たりのグループ戦に臨む。


同グループの各チームは強豪ぞろいだが、最大の難敵と目されるアメリカ代表が、WNBAの多国籍オールスターとオーストラリア代表を相手に戦ったエキジビションで2連敗を喫しており、主力の一人であるダイアナ・タラシが故障を抱え両試合ともプレーできていないなど、大会本番に向けた最終調整で荒波に揺れている。

 

 初戦の相手であるフランス代表は、6月に行われたヨーロッパ選手権で準優勝と好成績を収め、士気を高めて大会に臨むことができる状態。ただし日本代表は、FIBA世界ランキング6位のベルギー代表を相手に戦った15日のエキジビションで84-76と勝利しており、好調な格上を迎えても対抗できる期待は十分ある。


ナイジェリアに関しては、ロスター全員がアメリカの大学でプレーした経歴を持つ。2020年2月のオリンピック予選決勝ではアメリカ代表に対し71-76と大健闘した実績もあり、非常に強力なチームだ。それに加えて気になるのは、ここに来てWNBAのトップスターの一人でアメリカ代表選考に落選したネカ・オグウミケ(ロサンゼルス・スパークス)が、ナイジェリア代表入りするのではないかとの見通しが報じられたことだ。FIBAはこの動きを認めない旨の通達をすでに本人にしたとの報道があるものの、最後の最後にどうなるか、やや気になるところだ。


日本代表がプエルトリコ代表を破ったのと同じ17日、女子オーストラリア代表の中心的プレーヤーだったエリザベス・キャンベージが急遽本大会出場を辞退することが明らかとなった。男子ではアメリカ代表のブラッドリー・ビールが新型コロナウイルス感染対策の健康安全プロトコル適用となり、やはり代表から離脱したことが伝えられている(ケビン・ラブも故障を理由に辞退)。

 

 各チームの統括団体やFIBAの決定が発表されたとしても、最終的にどうなるかはそのときが来るまでわからないような状況でもある。オグウミケが加わっても加わらなくても、女子ナイジェリア代表が要警戒対象であることは変わらないのだが、動向は注視したほうがよいかもしれない。

 

 グループ戦を終えた後は、上位8チームで行われるノックアウト方式の決勝トーナメントが待っている。この舞台に進めるのはA、B、C各グループの上位2チームと、3位チーム中で成績上位の2チーム。金メダルまでの道のりは6試合だ。



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