月刊バスケットボール5月号

【南東北インターハイ記者の目】2人の2年生が起こした自己改革

南東北インターハイは大会4日目。男女の各8チームがあづま総合体育館に集い、準々決勝が行われ、男子は福岡第一、明成、帝京長岡、福岡大附大濠、 女子は岐阜女、大阪桐蔭、桜花学園、明星学園の4強となった。 男子はここ数年でベスト4入りの経験がある強豪が勝ち上がり、明日は決勝進出を懸けた準決勝が行われるが、中でも福岡大附大濠は3年ぶりの初戦突破から一気に勝利を積み重ね、優勝した2014年以来のベスト4入りとなった。

大濠の試合を見ると、コート上にもコーチがいるように錯覚するほど、存在感を放つ選手がいる。2年生の#13中田だ。 高校生で唯一、U-19日本代表に選ばれ、世界10強入りに貢献した中田は、「U-19に選ばれているのに『大したことない』と思われるのが嫌。泥臭いところをやることが今大会の目標です」と自身に大きな課題を課している。 そんな背番号13に片峯コーチは全幅の信頼を置き、その期待どおり、的確な言葉でチームを引っ張る背中は、「頼もしい」という一言に尽きる。時計が止まれば選手を集め、ハーフタイムでも、ベンチにいるときでも、常に言葉を発している。 決して3年生が頼りないからではなく、リーダーの性格に適した者がチームを引っ張るのは必然的で、今の大濠には2年生でも発言できる土壌がしっかりできている。それは3年生の理解、協力がなければできず、3年生がいるからこそ中田はリーダーシップを存分に発揮できているのだ。  

そしてもう一人、中田と同じ2年生の#10山本(写真右から4番目)も、チームを鼓舞する部分では欠かせない選手である。 実績のある選手が多い大濠だが、山本も#12土家とともにジュニアオールスター優勝や全中準優勝を経験。ただ、「僕は中学のときから何もできなくて。大濠に入ってもできることが少なかったんです」と自分の役割を見いだせていなかった。 それでも同学年の中田の姿を見て、「自分にも何かできるのではないか?」と考え始める。その答えは泥臭ささ。コート上ではあまり表現できない思いを、ベンチから常に声を出し、ベンチに戻ってきた選手を励ますことで表現するようになったのだ。 「今は声を出さずにはいられないんです(笑)。昨年、一昨年に足りなかった泥臭さは今の大濠に必要だし、それを体現したいと思っていました」 山本のベンチの様子は悪い言い方をすれば、“でしゃばり”だ。片峯コーチの後ろで立ち続けている場面も今大会は多い。ただこの2年間、山本のような選手はいなかったし、ベンチから勝利への執念を出す選手が重要だということは誰もが理解している。山本へのインタビューがチームに伝われば大歓声が沸き、インタビュー中にも茶化される。こうした愛されキャラがいるチームは強い。   山本がチームの雰囲気を良くし、中田と2年間の悔しさを知る#4永野をはじめとした3年生を軸に、密にコミュニケーションを取り合っているからこそ、今では何でも言い合える関係になった。 常に優勝を目指す大濠にはベスト4はまだ通過点かもしれない。ただ、コートの中と外、2年生2人が起こした自己改革は、2年間で勝ち星がなかったチームを変える大きなきっかけになったことは間違いない。

(月刊バスケットボール編集部)

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