月刊バスケットボール6月号

洛南が近畿大附属を撃破し3年ぶりの近畿大会優勝を飾る!【近畿大会2021】

6月25から27日にかけて京都府で行われた「第68回近畿高等学校バスケットボール大会」。

 

 2年ぶりの大会開催で男子決勝に勝ち上がったのは京都府代表の洛南と大阪府代表の近畿大附。

 

 洛南は桜宮、大阪桐蔭、報徳学園を下しての勝ち上がり。エーススコアラーの#5大西一輝、司令塔の#4岩屋頼のガードコンビを軸に、高い能力を持つ2年生の#12星川開聖、爆発力が魅力のシックススマン#7杉信イフェアニらを起点に洛南らしいパッシングゲームと、ディフェンスからの素早い展開で得点を積み重ねた。

 

 一方の近畿大附。大阪府予選を1位通過し、3年ぶりのインターハイ出場を決めたチームは、エースシューターの#8髙畑慶次郎、インサイドの柱#5楊裕貴、スターターで唯一の2年生#12野﨑稜太を軸に、彼らに劣らぬ力を持つベンチメンバーを積極的にローテーションし、ツープラトンで勝ち上がった。

 

スターター、リザーブ問わずアグレッシブに全員で戦うのが近畿大附のスタイルだ

 

 特に準々決勝ではスキルフルな留学生の#13 アデチュチュ・デイビッド・アラバ擁する和歌山南陵にオーバータイムに持ち込まれるものの、辛くも勝利。準決勝では東山をアグレッシブなディフェンスで押さえ込み、85-62で快勝した。

 

 両校の決勝戦、先制したのは近畿大附。楊のインサイドでファーストポイントを挙げると髙畑が持ち味の3P、インサイドの合わせで点を伸ばしていく。対する洛南も大西のレイアップや星川の3Pで応戦。取られては取り返す互角の攻防が続いたが、洛南・杉信が試合の流れを変える。途中出場するやいなや力強いリバウンドショットと3Pでリズムを作ると、最後は#14西村渉への絶妙なアシストを見せ、23-18と洛南がリードして第2Qへ。

 

 近畿大附は3〜5分おきにスターターとセカンドユニットを総入れ替えする準決勝までと同様の戦い方で、常にアグレッシブなディフェンスを仕掛けていった。両チームのディフェンス合戦が続いた第2Qは13-7。大西の3Pや杉信のレイアップなどで得点を伸ばした洛南が36-25で前半を折り返した。

 

洛南に勢いを与えた#7 杉信。パワフルなプレーはインターハイでも見ものだ

 

 迎えた後半。この時間帯が勝負の分かれ目となる。星川のショートジャンパーで先制した洛南は、その後も岩屋がスティールからワンマン速攻、#8籔田恵大がリバウンドをねじ込みアンドワン。ディフェンスでも激しいプレッシャーで近畿大附の5秒バイオレーションを誘うなど、開始4分半の間、近畿大附を無得点に封じ込めた。

 

 何とか打開したい近畿大附だったが、連戦による疲れから動きが止まり、準決勝まで好調だった髙畑の3Pも、後半はリングを捉えることができず。56-38の大差が付いて第3Qを終えると、そこから逆転する力は残されていなかった。

 

 最終スコア73-54で、洛南が2018年以来の近畿大会優勝を飾った。

 

 準々決勝では大阪桐蔭相手に72-67と、薄氷を履む勝利、この決勝戦でも第4Qで15点差前後に押し戻される場面も見られ、盤石の勝利とはならなかったものの、この勝利が自信になっことは確かだ。

 

この試合では不発に終わったが、#8髙畑のアウトサイドが近畿大附のオフェンスの軸となる

 

「近畿のレベルは決して高くなかったけど、苦しい試合もありながら勝ち切れました。ここまでなかなか練習試合もしっかり組めなかった中で、少しずつ修正してくれて優勝できたのは、インターハイに向けては自信になったかなと思います」と吉田裕司コーチ。ただ、「全国では留学生も、強力な布陣のチームもいるのでこのままでは…。あと1か月を切っていますが、洛南らしい粘り強さ、ディフェンスを頑張って速攻に持っていくというところを少しでも強化していきたい」と危機感も募らせた。

 

 新チームでは吉田コーチに代わって指揮を執ることも多い河合祥樹アシスタントコーチも「ホッとした」と安堵しつつも「この勝利が今の洛南にとって本物の強さにはなっていないかなというのが率直な思いです。まだどこにでも負ける可能性のあるチームだと思っています」と、内容には決して満足していない。

 

 特に気にしていたのが点差をつけた後の戦い方だ。「20点開いていて、近畿でもうちょっとで優勝できそうだというところで、選手たちが『優勝できた』というような雰囲気で試合をし始めてしまいました。日本一になりたいと言って練習をしているのに、優勝目前になったらそれをやめてしまうのかって。そこが3年生の弱さ、余裕が出てきたときの弱さです。20点離れたら、僕としては25点、30点と点差を広げて『ここまできたらもう無理だよ』っていうところまでいきたいんですけど…。実際には15点差まで押し戻されて相手に『もう一押ししたらいけるんじゃないか』という感じにさせてしまいました」(河合Aコーチ)

 

 勝利してなお、より高い質のバスケットを追求していく構えだ。

 

洛南としては優勝してなお課題は残るが、タイトル獲得を夏への追い風にしたい

 

 洛南にとっては5年ぶりのインターハイ。「僕自身の高校時代の経験からいうと、ウインターカップと比べてもインターハイはしんどかったという思い出があります。12人のメンバーの中での連戦ですし、新チームの初の全国大会とあって緊張もして、うまくいかなくて怒られて…(笑)。でも、次の日も試合があって体もボロボロになってきますから。今年の選手たちはそれを経験していないからこそ、ここで練習を詰めて追い込まないとインターハイはしんどいんだってことを伝えていきたいです」と河合Aコーチは、準々決勝終了後に語っていた。まだまだ選手たちに教え込まなければならないことは多そうだ。

 

 対する近畿大附の大森健史コーチも、「洛南とは2015年のウインターカップで西野曜(現サンロッカーズ渋谷)たちの代で勝って以来の公式戦での対戦でした。最後は体力が残っていなくて足がついていきませんでしたが、この大会では東山や洛南などの強豪とたくさん試合ができたので、良い経験になりました」と収穫を口にした。

 

 緊急事態宣言が解かれ、まん延防止措置も間もなく解除となる京都府と大阪府。徐々に練習試合なども解禁となってくるはずで、約1か月後に迫ったインターハイ本番に向けての調整は、佳境を迎えている。

 

写真/石塚康隆

取材・文/堀内涼(月刊バスケットボール)



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