月刊バスケットボール5月号

京都精華学園が大阪薫英女学院との行き詰まる競り合いを制し、約半世紀ぶりの近畿大会制覇!【近畿大会2021】

 6月25から27日にかけて京都府で行われた「第68回近畿高等学校バスケットボール大会」。女子決勝のカードは京都府代表の京都精華学園と大阪府代表の大阪薫英女学院となった。

 

 京都精華は1年生PGの#17堀内桜花、高い身体能力を誇る#18イゾジェ・ウチェ、オールラウンドな3年生#4瀬川心暖らを起点に、粒ぞろいの戦力が攻防でうまく融合するバスケットを展開。際立ったエースこそ不在ながら、個々が能力の高さを示し、園田学園、奈良文化、大阪桐蔭に貫禄の勝利を収めた。

 

 対する大阪薫英女学院は2年生キャプテンの#4都野七海、鋭いドライブが持ち味の3年生#9宮城楽子ら、ガード陣を起点に激しいディフェンスと、アウトサイドの決定力を武器に勝ち上がった。

 

今年の薫英は決してサイズのあるチームではないが、ディフェンスの強度とスピードが際立つ

 

 薫英としては高さで劣る分、平面のスピードとアウトサイドの成功率がカギになってくる試合で、安藤香織コーチも、「大阪府ではうちのセンターが大きい方になるので、高さ対策の練習というのは実際はできていません。取られたら取り返すということしかないと思っています。昨年のウインターカップでももうちょっと取り返せいたらと思っていたので。ある程度、ディフェンスのところは仕方のない部分ですが、オフェンスで点を取るなり、ファウルをもらっていかないと戦えないです」と勝敗のポイントを口にしていた。

 

 迎えた決勝。薫英は安藤コーチの言葉どおりのバスケットを体現する。第1Q早々に都野や宮城らがスピードに乗ったドライブでペイントをこじ開けると、アウトサイドからも効率よくスコアを伸ばす。

 

 高さの面でも序盤から積極的なディフェンスを仕掛け、京都精華に高さの利をうまく使わせず、リズムを乱してしにかかる。センターを外におびき出し、逆サイドのプレーヤーがスピードのミスマッチを生かしたドライブで次々と加点すると、第1Qで32-16の大量リードを奪った。

 

#4都野を筆頭とする薫英の攻防にわたる積極性が京都精華のリズムを乱した

 

 対する京都精華は薫英のディフェンスとアップテンポなバスケットに翻弄されてリズムをつかむことができない。山本綱義コーチは「序盤はこれまでやってきたことが全くできていませんでした。例えば吹奏楽団にしてもすばらしいバイオリニストなどの演奏者がいても指揮者がいなかったら演奏を始めることはできませんよね。選手たちにはまずは指揮棒をしっかりと見なさい、最低限の指示を聞いて、一つにまとまりなさいということを伝えました」と第1Q後のインターバルでの出来事を明かす。

 

 山本コーチの一喝でようやく目が覚めたチームは、第2Qには薫英のスピードに対しても冷静に対処。途中出場の#8山﨑玲音が冷静にゲームをコントロールしながら、ウチェのインサイドを起点にハーフコートでじわじわと詰め寄る。

 

 それでも、薫英は要所で都野がドライブから得点を重ねるなど、リードは奪わせず。前半は42-37と薫英がリードして折り返す。

 

身体能力の高さと走力を兼ね備える#18ウチェの存在は薫英以外のチームにとっても驚異そのものだ

 

 しかし、後半開始早々に京都精華が逆転に成功すると、そこから試合はシーソーゲームに突入。京都精華が堀内から#16八木悠香のホットラインで得点すれば、薫英も#7奥村萌生の3Pで応戦。その後も点の取り合いと守り合いを交互に繰り返しながら、62-60と京都精華が僅か2点リードで試合はラストクォーターを迎えた。

 

 第4Qは京都精華がウチェのインサイドを起点に先行し、薫英がオールコートプレスからボールをスティールするなどし、何とか食らい付く展開となる。それでもあとワンゴールが届かない薫英は、懸命なディフェンスでワンポゼッション差を追うが、ついに逆転するには至らず。85-79で京都精華が激闘を制した。

 

勝利した京都精華・山本コーチは「練習試合もできずに練習時間自体も限られた中での日々なので、実際のところ2対2くらいまでしかしっかりとはできていません。3対3、4対4のプレーがしっかりできていない中で、試合を重ねるごとに2対2、3対2、3対3と、この辺りがしっかりとつながってきた印象です」とコメント。ようやくチームとしての完成度が上がってきた実感を得ていた。

 

 キャプテンの瀬川も「薫英さんに勝てたのは初めてなので、すごくうれしいです。ただ、この決勝戦のように相手が強くなればなるほど自分がもっと活躍できるようにならないとなと思っています。今までは穴埋めのところを下級生がやっていたんですけど、最近になって植村(文音)などが3年生としての自覚を持って、コートの中でも声かけをしています。3年生が自覚を持ててきていると感じています」と、課題と共にチームへ手応えも感じている様子だ。

 

京都精華は#4瀬川を中心に3年生と1、2年生の力がうまくミックスされつつある

 

 京都精華の近畿大会制覇は、同校の前身にあたる精華女子高校時代に優勝した1964年大会以来、実に57年ぶりのこと。この結果を弾みにインターハイに乗り込みたいところだ。

 

 敗れた薫英にとっても、戦えた部分とそうでなかった部分がはっきりと表れたことで、インターハイ本番までの期間は、より明確に課題に向き合えることだろう。

 

 両チームにとって、この決勝戦は自分たちの現在地と強み、弱みを知るのにはうってつけの試合だったはずだ。

 

写真/石塚康隆

取材・文/堀内涼(月刊バスケットボール)



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