月刊バスケットボール5月号

バスケ男子日本代表FIBA Asia Cup 2021予選展望(2) - 対中国代表戦のカギとしての3Pシューティング

 今回2試合を戦う中国はアジアでは伝統的な強豪であり、過去にヤオ ミンをはじめ何人ものプレーヤーをNBAに送り込んでいる。強化合宿中に会見に応じた田中大貴(アルバルク東京)は、中国代表について「まだどういうメンバーになったかというのを聞かされていない」と明かし「メンバーについては分からないので、今の段階ではイメージが湧いていないです」と話した。ただ、主力ガードのグオ・アイルン(Guo Ailun=192cm/PG)が故障離脱しているとの情報をつかんでいるとのことだ。

 

田中は中国代表の陣容に関して詳細はつかめていないとしながらも、レベルの高い相手との対戦を「楽しみ」と話した


新華社公式サイトなどが報じるところによれば、中国代表は5月半ばに27人の代表候補を招集してキャンプを行い、現在までに田中の言葉どおりグオを含む故障離脱、そして選考の結果として19人までにメンバーが絞られているようだ。

 この19人にはFIBAワールドカップ2019(以下WC2019)に出場したプレーヤーが4人含まれている。ただしその4人には、前述のグオとともに同大会で中国代表をけん引したワン・ジェリン(Wang Zhelin=212cm/C)、212cmのセンター、イー・ジャンリャン(Yi Jianlian)が含まれていない。いずれも故障で今大会への出場を断念したとされている。

 グオはWC2019で平均3.8アシスト(チーム1位)、8.4得点(チ―ム2位)。ワンはWC2019で平均8.0得点(チーム4位)、5.0リバウンド(チーム3位)2016NBAドラフト2巡目57位でメンフィス・グリズリーズに指名されたプレーヤーだ。イーはNBAで5シーズンプレーした経験を持ち、WC2019では平均17.8得点、7.8リバウンドがいずれもチーム1位だった。彼らの離脱は中国代表に少なからぬダメージとなるのは間違いないだろう。
残るメンバーの中心は中国国内のトップリーグであるCBA(Chinese Basketball Association)で2020-21シーズンにファイナリストとなった広東サザンタイガースと遼寧フライングレオパーズに所属するプレーヤー7人。レン・ジュンフェイ(Ren Junfei=205cm/C)、ジャオ・ジーウェイ(Zhao Jiwei=185cm/PG)、ジョウ・チー(Zhou Qi=212cm/C)といったWC2019組の名前もある。
また、FIBA U19ワールドカップ2019に出場したマイケル・ワン(Michael Wang)という若手の注目株もいる。ワンは208cmのパワーフォワードで、アンダーカテゴリーのワールドカップで中国代表としてプレーした経験がある。出身は中国だが、カリフォルニア州の強豪として知られるマターデイ高校を経て、現在はペンシルバニア大学に所属する21歳のプレーヤーだ。
最終的なロスターはまだわからないものの、こうした候補の顔ぶれからも中国代表がこれまで同様に大きな脅威であることは間違いなさそうだ。
世界レベルの高さ、スピード、フィジカルな強さを持つ中国代表との試合は、WC2019を経験した日本代表がその後の成長ぶりを披露する機会となる。あの大会で日本代表は多くの課題を見つけ、改善と向上に取り組んだ。今回フィリピン入りするメンバーには海外組が含まれない見込みとのこともあり、逆に成長の真価がいっそう強く認識できるのではないかと思う。

 WC2019を振り返って、世界を相手にする日本がやらなければならないこととして田中が挙げたのは、ディフェンス面の激しさやコンタクトに対する強さを高めることだった。「ワールドカップではトランジション・ディフェンスが出場32チーム中の最下位。ディフェンスが機能しないと、世界のオフェンス力のある強豪国と戦っていくのは難しいと思います」と、課題意識を明確に語った。合宿でもこの点について、コーチ陣から高いレベルでの要求がなされているという。
一方オフェンス面では、日本代表の成長を示す指標の一つになりそうなのが3Pショットだ。WC2019で日本代表は3Pに関して、成功率が28.7%(出場32チーム中27位)、アテンプト数が18.8(同30位)、成功数が5.4(同29位タイ)という成績だった。予選段階と比較すると、アテンプト数はほぼ同等(予選では18.1本)だが、成功率は37.6%から8.9ポイント下降、成功数も6.8本から1.4本下降している。単純な見方として、アジアから世界に出た結果が精度が下降したという形なのだ。
この点について、WC2019で司令塔を務めた篠山竜青(川崎ブレイブサンダース)は、「ワールドカップを終えてラマスHCから言われていることの一つに、3Pショットのレンジをもっと広げてほしいというのがありました」と話す。「今もそういう練習に取り組んでいます。それをアジアカップまでに自分たちのものにして出せるかというところは1つのポイントになると思います」
また、この項目での戦力アップには、最終的な3Pショットを生み出す起点となるピック&ロールを始める位置を、もう少し高めにしてもいいのではないかという議論があったという。「それを新しいシステムの中でも一つのテーマとして取り組んでいます。リングから遠いところから始めて、よりスペースを空けるようなイメージでやっていこうというのを今後の日本のスタンダードとして、そこからのドライブ&キックで、(3Pショットも)ちょっと離れたところからでも当たり前のように決めきる力が出てくれば、問題解決につながるかなと」

 

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アウトサイドの脅威を高めるためいくとかの工夫を持ってフィリピンに飛ぶと篠山は明かしてくれた


フィリピン入りする候補メンバーには、金丸晃輔(シーホース三河)や辻 直人(川崎ブレイブサンダース)、安藤周人(アルバルク東京)ら秀でたシューターが名を連ねている。起点となるピック&ロールに参加するビッグマンには帰化枠でロシター ライアン(宇都宮ブレックス)あるいはエドワーズ ギャビン(千葉ジェッツ)、ファジーカス ニック(川崎ブレイブサンダース)の活躍が期待でき、竹内公輔(宇都宮ブレックス)、竹内譲次(アルバルク東京)、シェーファー アヴィ幸樹(シーホース三河)ら器用で強さもある顔ぶれがいる。

 田中、篠山、さらには富樫勇樹(千葉ジェッツ)や安藤誓哉(アルバルク東京)らプレーメイカーとの連係で、日本が3Pシューティングの雨を降らせることができるか。アジアカップ2021予選3試合は興味の尽きない試合になりそうだ。

(パート3に続く)

 

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取材・文/柴田 健(月バス.com)

(月刊バスケットボール)



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