月刊バスケットボール6月号

関東大会男子は八王子学園八王子と前橋育英がダブル優勝 フォーマット上、決勝戦は行わず

 6月5、6日の2日間にわたって船橋アリーナで開催された「第75回関東高等学校選手権大会」。今大会は決勝戦を行わないという異例のフォーマットで試合が進んでいった。

 

 Aブロックのベスト4に勝ち上がったのは、八王子学園八王子、正智深谷、桐光学園、前橋育英だ。

 

 

■最後まで崩れなかった八王子学園八王子が正智深谷を下す

 

 八王子学園八王子と対戦した正智深谷は、序盤から八王子の積極的なディフェンスの前にリズムがつかめず重い立ち上がりとなった。一方の八王子も205cmのセンター#5ンジャイ・ムマハドゥ・ムスタファが1Q早々に2ファウルでベンチに下がらざるをえなくなってしまう。しかし、控えセンターの#15清水雄太、#10八重沢連らがペイントエリアで体を張ったプレーを見せると、外からも#13吉田叶貴らがリズムよく得点を重ね、1Qで27-10の大量リードを奪った。

 

 その流れを継続した八王子が前半で42-27とリードした後半。正智深谷が反撃を開始。前半で思うようなプレーができずに終わった#9ルーニー慧が積極的にペイントにアタックし、#4関河虎南もフローターにアイトサイドショットと徐々にリズムを作っていく。

 

#4関河、#9ルーニーを軸に勝ち上がった正智深谷。サイズ不足を補うディフェンス力で勝負していく

 

 2桁あったリードはみるみる縮まり、終盤には5から10点前後の差でゲームが推移。しかし、八王子がこれ以上詰め寄らせることはなかった。最終スコアは77-72と5点差だったが、詰め寄られてはムハマドゥのインサイドやガード陣のアタックで確実に点を返し、準決勝をモノにした。敗れた正智深谷の成田靖コーチはベンチから盛んに「平面で勝負すること」を指示しており、実際にその部分では点が取れていた。それでもアドバンテージを取ることができなかったのは、ディフェンス面だ。

 

 ビッグマンに対する守りこそ徹底されていたが、「今年はサイズがない分、インサイドで踏ん張るということができないので、足が動かないというのがディフェンスの面でもろに影響が出てしまいます。ディフェンスが機能しないとなるとオフェンスも重たくなってしまう」と成田コーチ。

 

 ビッグマンへの対策に関してはある程度うまくいっただけに、コンディションの面も含めて、ディフェンスのベースをより高めていく必要がありそうだ。

 

 勝った八王子にとっては東京都にウインターカップの出場権をプラス1枠持ち帰ると共に間近に迫ったインターハイの都予選に向けて、好材料を手にしたことだろう。

 

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■エース久岡を起点にセカンドユニットも活躍した前橋育英が桐光学園を振り切る

 

 逆の山では桐光学園と前橋育英が激突。#5谷口律、#7オドゲレル トルガの強烈な2人のガードを柱にアグレッシブなリングアタックが魅力の桐光学園に対して、前橋育英は昨年のウインターカップでも主力として戦ったメンバーが多く、新キャプテンの#4久岡賢太郎を軸にタフなディフェンスで勝ち上がってきた。

 

 この試合で最初にリズムをつかんだのは前橋育英。準決勝までの勝ち上りと同様に玉際への執着心を見せ、桐光学園の攻撃をシャットアウト。前橋育英も決してオフェンスが好調だったわけではないが、前半を終えて39-35と4点のリードを保っていた。

 

 しかし、後半に入ると桐光学園も反撃開始。このクォーターでビハインドを帳消しにし54-54で最終クォーターを迎えた。

 

最後は体力的に後手に回った桐光学園だが、#5谷口らポテンシャルの高い選手は多い

 

 ここで再び前に出たのは前橋育英。1回戦が行われた初日から積極的にメンバーチェンジを繰り返して戦ってきたことによって、試合経験を詰めたセカンドユニットも躍動。「群馬県予選でのダブルヘッダーと関東大会でのダブルヘッダーだとやっぱり違うんですよね。各県を代表するチームなので体の当たりなんかも違うし、タイムシェアをしないと持たないよと話しました。それで点差が離れたら積極的にバックアップの選手を出して、彼らにも『今日の最後の試合はバックアップがやれるかどうかで決まるよ』って伝えました。数字に見えない貢献をバックアップメンバーがすごくやってくれた」と、加賀谷寿コーチ。バックアップメンバーの活躍が、桐光学園よりも少しだけ体力的な余裕を生んだのだ。

 

 最後は追いすがる桐光学園を振り切り、78-70で前橋育英が準決勝に勝利。エース久岡の37得点の活躍も光り、八王子学園八王子と共に大会優勝を飾った。

 

「7年前に関東大会の決勝で負けていて、そこから先は良くてベスト4でした。決勝はありませんが、久しぶりに準決勝で勝ててよかったです。昨年のウインターカップ予選でも今の3年生たちだけで勝ってきたので、今年はサイズはないですがガード3人が安定している」と、加賀谷コーチは手応えを口にした。

 

 まだまだ、各チーム未完成という印象が強かった今回の関東大会。それぞれに見えた課題と収穫を持ち帰り、インターハイ予選に、その先の戦いに生かしていくことだろう。

 

最終結果はこちらをチェック!

 

写真/伊藤大允

取材・文/堀内涼(月刊バスケットボール)



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