月刊バスケットボール5月号

Bリーグ

2021.06.25

B3アルティーリ千葉に電撃就任 - 世界4強指揮官アンドレ・レマニスの素顔(1)

 2021-22シーズンからB3に新規参入する話題のチーム、アルティーリ千葉が、いきなり衝撃的コーチ人事でバスケットボール界を揺るがす。昨年まで、現在FIBA世界ランキング3位の男子オーストラリア代表を率いたアンドレ・レマニス氏を、創立初シーズンのヘッドに迎えたのだ。

 オーストラリアはランキングが示すとおりの強豪国で、2016年のリオオリンピックと2019年のFIBAワールドカップで世界の4強入りを果たしている。そのベンチボスとして陣頭指揮に当たるとともに、バスケットボールを通じて多くの若者たちの成長を後押ししてきたレマニス氏に、さっそく時間をもらった。今日から4日間連載の形で、レマニス氏のコーチング哲学、これまでの輝かしいキャリア、特徴的なオフェンスとディフェンスのシステム、そしてレマニス氏自身が深い愛着を持っている千葉の町で成し遂げようとしているゴールについて、4編に分けて紹介していく。

 

リオオリンピック時の男子オーストラリア代表。後列右から2番目がレマニスHC(写真/©fiba.basketball)

 

“教え子”2人がNBA入り


――日本に来てくださることになり大変光栄です。まずは自己紹介を兼ねて、ご自身のコーチング哲学や勝利のバスケットボールの考え方をお話いただけますか?

 

 こうしてあらたなチームを率いる機会をもらえたことに感謝しており、身が引き締まる思いです。輝かしいバスケットボールの伝統を持つ、私も大好きな千葉という町で、その発展に関われることをとてもうれしく思っています。私としては地域について学び、皆さんには私のことも知ってもらって、良い方向に前進していきたいですね。
コーチとしての私の考え方には、二つの要素があります。一つ目は、人の成長を助けることこそがコーチとしての喜びだということです。アスリートも、コーチ陣も、それ以外の立場で関わる人も含め、それぞれの成長を後押しできたらうれしいですね。
オーストラリアでプロを目指す若者たちに関わって仕事をしてきたわけですが、例えばこれまでに、うれしいことにNBA入りを果たした若者が2人いました(フェニックスサンズのフォワード、トーリー・クレイグと、昨秋ニューオリンズ・ペリカンズと2ウェイ契約を結び現在フリーエージェントとなっているウィル・マグネイ)。私の元に来てくれて、NBAに行きたいと言ってそれを目指す訓練を始めた彼らが、その目標を達成して成果を喜ぶ姿を見られたのはとてもうれしかったです。大きなことを成し遂げて憧れの地位に到達するのを見ながら、その成長の小さなかけらを共有できたと感じられるというのは、私にとっては大きな成功です。アルティーリ千葉でも同じことをしたいですね。やって来た人が成長し、向上するクラブとして知られるようになりたいです。
成長して別の場所に行くとしても、いいじゃないですか。あらたなプレーヤーがまたやって来て、私が育成に関わる中でより高い目標に向かっていくなら、クラブとしてもそのプレーヤーとしてもそれは成功です。そうした流れを見て、意欲的なプレーヤーたちがウチに来たいと思ってくれるようになりますからね。バスケットボールのプレーヤーとしてだけではなく、人としての成長に力を注いでコート外でも高い価値を持つ人材を生み出すのが大事です。
プレーの面で集まってくるプレーヤーたちに要求したいのは、チームとしての考え方を徹底することです。個を犠牲にしても集団として得になるような働きをできる人に来てもらいたいものです。
オフェンスを例にとれば、一人にボールを預けてそのプレーヤーに頼るというやり方は、私の性には合いません。お互いのために動き、ボールを展開して、スクリーンを仕掛けて、空いているプレーヤーにボールを回してチームとして機能し、目指す結果を追い求めるようなスタイルです。
ファンの皆さんには、巧みなスペーシングとボール回し、チームメイトのためにプレーする姿をお見せしたいです。これは一般論としても見ていて楽しいスタイルだと思いますよ。
ディフェンスではフルコートで頑張れるように。言葉としては、「disruptive(破壊的)」というイメージです。プレーする相手によってやり方は変わりますが、ポイントガードにボールを持たせず他のプレーヤーにやらせるように仕向けたり、特定の部分を潰すような。例えば器用なポストマンがいる相手ならそこを重点的にディナイするようなことです。

 ピック&ロールにダブルチームで対抗したり、ポストマンの前に立ちはだかってボールをさわらせなかったり、いろんな方法で破壊的になることを目指します。いずれにしてもディフェンスは奮闘と努力(energy and effort)がカギですから、プレーヤーたちには頑張ってもらわないといけません。
チームとして5人が集中してプレーするのが、私として誇らしいと思えるバスケットボール。千葉のファンの皆さんにも気に入ってもらえることを願っています。頑張って絶対あきらめないチームを作りますよ。

 


アンドレ・レマニス
Andrej Lemanis
生年月日: 1969年3月18日(52歳)
国籍: オーストラリア、ラトビア

 

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取材・文/柴田 健(月バス.com)

(月刊バスケットボール)



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