月刊バスケットボール5月号

NBA

2021.05.24

八村 塁(ウィザーズ)、惜敗も歴史的プレーオフデビュー戦で12得点

スターターとしてNBAプレーオフデビューを果たした八村は12得点を記録した

 

 八村 塁が所属するワシントン・ウィザーズが、日本時間5月24日未明(アメリカ時間23日午後)に2021NBAプレーオフの初戦に臨んだ。イースタンカンファレンス第8シードのウィザーズ(レギュラーシーズン34勝38敗)は、最初のシリーズの相手が同カンファレンス第1シードのフィラデルフィア・セブンティシクサーズ(同49勝23敗)。118-125でアウェイのウィザーズが惜敗という結果だったが、内容的には第8シードと第1シードという順位差を感じさせるものではなく、次戦以降の激戦を予感させる展開だった。

 会場となったフィラデルフィアのウェルズ・ファーゴ・センターにはチケット完売の11,160人の大観衆が集まり、すでに一昨シーズンまでの空気感が戻ってきている様子だった。その中で、スターターとして出場した八村は12得点、5リバウンド。競った展開となった第4Qに3Pショット2本を成功させるなど、フィールドゴール8本中5本を成功させる堅実な貢献をもたらした。八村がこの試合に出場したことで、NBAプレーオフの歴史に初めて日本人プレーヤーが登場した。
シクサーズの勝因は、ジョエル・エンビードが30得点、とバイアス・ハリスがプレーオフでのキャリアハイとなる37得点を記録したほか、211cmの超大型ポイントガード、ベン・シモンズも6得点、15リバウンド、15アシストと中心的なプレーヤーがインパクトのある活躍を見せたことが大きい。前半に28得点と爆発したハリスは後半9得点にとどまったが、逆に前半9得点だったエンビードが後半21得点。3人の活躍を軸に、控えセンターのドワイト・ハワードも良い動きも見せ、要所でシューターのセス・カリーがダメージの大きな3Pショットを成功させた。サイズとフィジカルな強さを前面に押し出しながら、バックコート陣のプレーメイクやディフェンスでもウィザーズを上回った。

 ウィザーズ側もラッセル・ウエストブルックが16得点、5リバウンド、14アシストを記録し、得点源のブラッドリー・ビールも33得点を記録し十分対抗できていた。アレックス・レン、ロビン・ロペス、ダニウェル・ギャフォードの3人のセンター陣もエンビード封じに奮闘。しかし「ファウルをせずに抑える」という試合前に掲げていた課題を理想的な形で実行するのは容易ではなかった。

 試合後に会見に応じたビールは、得点面で大きな貢献があったにもかかわらず、「今日、僕はまったくいいプレーをしたとは思いません」と悔しさをにじませた。しかし「チームとしても調子が良くなかった中で、それでも終盤まで勝ち目のある展開ができていました。今後にも十分希望を持てますよ」と次戦以降での巻き返しに強い意欲と自信を見せた。

 

ビールは第8シードとしてこのシリーズでアップセットを起こす自信を失ってはいないようだ


実際に、シクサーズが波に乗った展開を見せたのは、16-4とリードを奪った第1Qの最初の6分間と、第3Qの限られた時間帯で、それ以外の時間帯は互角の展開。ウィザーズは開始早々のシクサーズのランにはすかさず対応し、第1Qを28-27の1点リードで終え、前半終了時点でも62-61と同じリードを保っていた。

 スコット・ブルックスHCも、「こちらが頑張ったこと、遂行したことに恥じる部分はありません。相手がほんの少し良いプレーをしたということです」と自らの戦い方についての手応えを見せていた。また八村についても、「ルイはなかなか堅調でした」と話し、初めてのプレーオフでベテランぞろいの第1シードに健闘したことをねぎらった。
一方、シクサーズ側はホームでの快勝にも油断した様子はない。エンビードは「プレーオフに出てきたチームはすべていいチーム。過去に第8シードが勝った例もあります」と話し、気を引き締めていた。
まだまだ面白くなりそうなこのシリーズの次戦は、日本時間5月27日の午前8時(アメリカ時間26日午後7時)にティップオフ。シクサーズが第1シードらしくホームコート・アドバンテージを維持するか。あるいは、1試合とはいえプレーオフを経験した八村とウィザーズがシリーズのインテンシティーに適応して勝利をむしり取るか。ウィザーズが勝てば、それは同時に「日本人プレーヤーのNBAプレーオフ初勝利」。楽しみなシリーズが続く。

 

エンビードは試合後の会見で、勝って兜の緒を締めるコメントを発していた

 

取材・文/柴田 健(月バス.com)
(月刊バスケットボール)



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