月刊バスケットボール5月号

NBA

2021.04.28

信頼と出場時間を勝ち取る渡邊雄太(ラプターズ) - 対キャバリアーズ戦は19分52秒の出場で9得点(FG4/4)

 

 日本時間の4月19日にトロント・ラプターズとの本契約サインが発表となった渡邊雄太が、その後3試合すべてに出場して堅実な働きを見せている。スターターがコートに戻ってきたことで、ニック・ナースHCは渡邊の出場時間が減少するだろうことを話していたが、日本時間4月27日(アメリカ時間26日)の対クリーブランド・キャバリアーズ戦では19分52秒間コートに立ち、112-96の勝利に大きく貢献した。
この試合での渡邊は、フィールドゴール4本すべて(うち3Pショット1本)を成功させて9得点、2リバウンドを記録し、±も+5で数字としても堅実だった。第4Qには相手のポイントガード、ダリウス・ガーランドをフェイスガードしてほぼプレーさせない場面があった。オフェンス面でも、同じく第4Qにマラカイ・フリンのアシストを受けた豪快なダンクを叩き込み、重要な時間帯に流れをしっかり保持する3Pショットを沈めている。
その前の2試合でも内容としては決して悪くはなかったが、いずれも出場時間が15分以下だった。ここから時間を延ばすためには何かさらに必要な要素があるのか。キャバリアーズとの試合を前に、ナースHCに「残る12試合に向けユウタにもっとやってほしいと思っている特段のことはありますか?」と尋ねると、以下のような答えだった。
「いいえ。過去1ヵ月話してきたようにアグレッシブさが高まってきているので、私の方でうまく出場時間を都合できるかどうかという状態です。最低でも、セカンドユニットのローテーションで出てほしいと思っていますし、状況によってコートに立つ時間が長引くこともあると彼らにも伝えています。誰とマッチアップするかによらず出場機会を作れると思うし、特に今日は(クリス)ブーシェイと(ゲイリー)トレントJrが欠場なのでそうなりやすいでしょうから、8人目までには出てもらって、9分、9分半、10分プレーしていい流れを作ってほしいですね」

 

対キャバリアーズ戦試合前会見でナースHCは渡邊を9-10分間プレーさせる想定を語っていた(写真をクリックするとインタビュー映像を見られます)

 

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“No, not really. I think we are happy with how he’s upped his aggressiveness and the things we’ve talked about over last month. It’s just on me to find him the minutes and I really want you know to make sure that he gets his second unit rotation for sure if not more than that you know. I think again if you know I always say if the guy coming on the second unit gets on a nice run, he’s gonna extend those minutes, sometimes really long, right? We’ve seen that happen, too. So, I just …, but I do want to make sure he gets that regardless of who we’re playing or the match-ups or whatever. I’ve gotta find a way to get him in there. It should be a little easier tonight with Boucher out and with Gary Trent out. I mean we’re now…., we’re down to you know, Yuta would be for sure in the top eight tonight. So, maybe play nine, maybe nine and a half or ten. We’ll see but he’ll give them a good run tonight hopefully.”


この会話を受けての19分52秒間出場は、当初予定が倍増したことを意味している。第4Qには、試合の流れを渡さないという意味で、渡邊を下げられる状況ではなかったとも感じられた。渡邊がボックス&ワンでマッチアップしたガーランドは身長185cmのポイントガードで、八村 塁(ワシントン・ウィザーズ)やザイオン・ウィリアムソン(ニューオリンズ・ペリカンズ)と同じ2019NBAドラフトで全体5位指名を受けてキャバリアーズ入りしたプレーヤーだ。クイックネスを生かし、この日男13得点、10アシストを記録していた。
渡邊がガーランドに対するフェイスガードを任されたのはラプターズが98-85と13点リードしていた第4Q残り5分45秒から。勝負が見えてきた状況で、相手の攻め気をそぐ結果につながった。
それがねらいだっただろうことはもちろん感じられた。しかし、良い流れの中で残り時間もまだあった状態であり、個別に渡邊を対するテストをする目的だったかもしれないとも思えた。

 試合後の会見ではその点を確かめさせてもらった。理由は前者の方で、つまり試合の重要局面を渡邊に任せたということを、ナースHCは以下のように話してくれた。
「ボックス&ワンにして、ユウタをワンにしようと決めました。彼はこちらが得点した後すぐにガーランドを捕まえて、その後3度のポゼッションではボールに触れさせなかったし、3回連続で止められたんじゃないかと思います(実際には1度ガーランド選手がボール運びをするシーンがあり、一度ジャレット・アレンが3Pプレーを成功させている)。大きかったですね。ワンを務めるプレーヤーが、相手にボールを持つ機会を与えなかったのですから。そうなると彼らは攻めづらくなります」
“We went to a box&one and we decided Yuta was gonna be the one. And you saw he was picking him up right as soon as we scored and denying him the whole possession. I’m not sure Garland touched the ball three straight possessions and we got three straight stops. So, that’s important that the guy that’s playing the one makes sure the guy that we don’t wanna score doesn’t touch it. It’s hard for them to score when he doesn’t.”
「ユウタは良い出来でしたね。頑張っていたし動きが良かったです。リバウンドは2本ですが、彼の手に触れて他のプレーヤーに渡って保持できたようなケースは5本はあったと思います。ショットもしっかり決めていました。彼が決めた3Pショットはいったんインサイドに切れてから大急ぎで3Pラインの外に戻って来て体勢を整えて放ったもので、流れを作るスリーでした。もうちょっと出てもらっても良かったかもしれません。ほとんど20分近かったですけど、もうちょっといってもよかったかも…。今夜も良い出来でしたね」
“But Yuta had a really good game. I thought he played hard, he was active. I mean he’s got credit for two rebounds. But I bet he got his hands on about another five that he tipped somebody or kept alive. Again, hard-playing game and very successful in shooting. I thought the three he hit, it was…, we were kind of bottled up and he raced back behind the line, going backwards, kind of was able to get his feet set and knock it down. That was kind of a momentum three there, too so…. Probably should have played him some more. I almost got him to 20 minutes tonight. I should have probably gotten him a few more but he was good tonight.”

 

こちらは試合後会見でのナースHC。渡邊の活躍について高評価をしていた(写真をクリックするとインタビュー映像を見られます)


ナースHCのコメントからは渡邊に対する信頼が明らかだ。それはここまでの過程で勝ち取ったのであり、当初の倍に伸びた出場時間はそれを象徴するデータと言える。この日の試合を含め、本契約サイン後の3試合での渡邊は平均16.2分の出場で5.7得点、1.7リバウンド、0.7アシスト、フィールドゴール成功率63.6%、3P成功率60.0%という数字。イースタンカンファレンスの順位争いを考えると一つも落とせない今後の試合でも、その活躍に期待がかかる。

 

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取材・文/柴田 健(月バス.com)
(月刊バスケットボール)



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