月刊バスケットボール5月号

Bリーグ

2021.04.22

沖縄アリーナ初のBリーグ公式戦がついに実現 - 地元琉球の勝利はならず

沖縄アリーナで初めてのB1公式戦には3,521人のファンが集まった(写真/©B.LEAGUE)

 

 今年3月28日に落成式が行われたばかりの沖縄アリーナで4月21日、同会場初となるBリーグ公式戦の琉球ゴールデンキングス対名古屋ダイヤモンドドルフィンズの一戦が開催された。当初は4月10日・11日にシーホース三河との連戦が予定されていたが、新型コロナウイルス感染拡大の影響により開催できず、公式戦に代わってキングスと地元沖縄のバスケットボール愛好者たちを集めて新アリーナのオープンを祝すイベント『Our First Games』を開催していた。
名古屋との試合は同日19時35分にティップオフ。観衆の公式発表は3 ,521人で、本来の8,000人以上という収容人数に比べて少ない印象だが、これは新型コロナウイルス感染拡大対策のために制限を設けたためであり、用意したチケットはすべて売り切れていた。

 琉球はこの試合を前にB1西地区優勝を決めて臨んでいたが、念願のリーグ制覇に向けて勢いを失いたくないところ。一方の名古屋は同地区4位でポストシーズンへの望みがわずかに残っている状態に加えリーグ戦の残る日程(この試合を含め3試合)はすべて琉球が相手ということもあり、あらゆる意味で負けることができない立場であり、激しい戦いが予想される一戦だった。

 

沖縄アリーナ初の得点はエアーズの3Pショットだった(写真/©B.LEAGUE)


試合開始時間が近づき、ノリノリの『Are you ready for this』のビートに乗って両チームのメンバーがセンターサークルに陣取る。日本のバスケットボール界の歴史に刻まれる沖縄アリーナ初のB1公式戦でスターターとしてコートに立ったのは、琉球が岸本隆一、田代直希、キム・ティリ、ジャック・クーリー、牧隼人の5人。対する名古屋は齋藤拓実、安藤周人、狩野祐、ジェフ・エアーズ、レオ・ライオンズという布陣だった。
クーリーとかつて琉球に所属した経歴を持つエアーズがティップに飛び、場内に鳴り響くファンファーレとともにあらたな歴史が刻まれる。

 沖縄アリーナ初のゴールの瞬間はティップオフからわずか10秒後、最初のオフェンシブ・ポゼッションを得た名古屋の先制点という形で生まれた。エアーズが狩野からのアシストを受けて、このアリーナで最初に放ったトップからの3Pショットがみごとにスウィッシュとなったのだ。

 対するホームの琉球が初めて得点したプレーはエアーズの3Pショットに続く最初のオフェンシブ・ポゼッションで、ボールを運んできた岸本からハンドオフでボールを受けたキャプテンの田代がクーリーのハイスクリーンを使ってドライブを試み、ゴール右サイドから難しいティアドロップを柔らかくゴールに沈めた。琉球のホームゲームではおなじみの、三線をフィーチャーした強烈なビートで押しまくるBGMに乗って、ゴールデンキングスも最初のオフェンシブ・ポゼッションで得点を奪うことができた。
試合開始早々の15秒間で両チームが一本ずつショットを成功させスコアは3-2の名古屋リード。一つ一つのポゼッションで、歴史がどんどんと動いていく。
こうして始まった歴史的な一戦に、87-85で勝利したのはアウェイの名古屋だった。しかし琉球がおとなしく引き下がったわけではない。第4Q終盤、85-82の名古屋リードで迎えた残り6秒には、並里とクーリーのハイピックからの展開で見せ場を作った。並里のパスを受けたクーリーが、左サイドで岸本と息の合ったハンドオフ・プレーを2度繰り返して名古屋のブリッツを翻弄。クーリーのスクリーン越しにゴールへの軌道を見出した岸本は、「レインボー」と形容すべき美しい弧を描く同点3Pショットを成功させた。

 場内は地元ファンの万雷の拍手。最終的に琉球の沖縄アリーナにおける初勝利はお預けになったものの、決勝のミドルショットを沈めたライオンズのプロらしい仕事ぶりをも含め、沖縄アリーナの歴史の始まり飾るにふさわしい一戦だった。

 

残り6秒で同点に追いつく3Pショットを決めた岸本とプレーの起点となった並里(写真/©B.LEAGUE)


名古屋の梶山信吾HCは試合直後のインタビューで、「こんな素晴らしいアリーナでバスケットボールができて、本当に僕たちは幸せだと思いますし、そんな中で勝てて本当にうれしく思っています」と新アリーナでの勝利に対する喜びを言い表した。また、最後に決勝のショットを決めたライオンズは「ここはホンモノ。素晴らしいです。非常に良い出来栄えですし、来てくれたファンも応援で盛り上げてくれました。(ホームのファンには)申し訳なかったのですが、僕たちもここでプレーすることを思いっきり楽しませてもらいましたよ。こんなに素晴らしい場所でプレーできるせっかくの機会でしたからね(That’s real. Beautiful. They did a very good job of building this. The fans did a good job of coming out and giving a great energy. Unfortunately, we enjoy playing out there, too. So, you know for us to be able to come here and play in a nice place, we take advantage of it.)」
一方、琉球の藤田弘輝HCは「まずは沖縄アリーナでBリーグの公式戦を開催できた事を心から嬉しく思います。そして琉球ゴールデンキングスの創設からここまで歴史を積み上げてきた多くの方々、球団職員、ステークホルダーの皆さまには言葉にできない感謝の気持ちでいっぱいです」と、歴史的な一戦を終えた後の思いをコメント。また並里も沖縄アリーナでプレーできたことについて「残念ながら負けてしまいましたが、地元沖縄市にできた夢のような沖縄アリーナで試合をすることができ、本当に夢のような時間でした」と万感の思いを言葉にしている。
藤田HCと並里のコメント全文は琉球ゴールデンキングス公式サイトで読むことができます

 

文/柴田 健(月バス.com)
(月刊バスケットボール)



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