月刊バスケットボール6月号

NBA

2021.04.18

八村 塁vs.対ザイオン・ウィリアムソン - 数字はザイオン、勝負は八村が制する

 

 日本時間4月17日(アメリカ時間16日)に行われたワシントン・ウィザーズ対ニューオリンズ・ペリカンズ戦は、延長にもつれ込む激闘の末にウィザーズが117-115で勝利。その中で八村 塁は42分22秒間出場して6得点、3リバウンド、3アシスト、2スティールの数字を残した。また、延長戦では注目のザイオン・ウィリアムソンに対するディフェンスのプレーで、自身に対するファウルコールにチャレンジを主張してこれが成功。1点リードの残り3分43秒に勝負に大きく影響するジャッジが覆ったことで、ウィザーズに好機がもたらされることになり、判断力で勝利に貢献する形となった。
ウィリアムソンは2019年のNBAドラフトで全体1位指名を受けたプレーヤーで、同年にウィザーズから全体9位で指名された八村がどのようにマッチアップするかに注目が集まっていた。数字上ウィリアムソンは21得点と7リバウンドを記録し、持ち味を一定以上発揮した。しかし自身へのパスを八村に阻止された前述のプレー(最初は八村のファウルとコールされたが最終的にはウィリアムソンのファウルで確定)を含めターンオーバーも7つ犯すなど、八村とダニエル・ギャフォードを中心としたウィザーズのディフェンスに苦しめられた。
試合後の会見では、ウィザーズのスコット・ブルックスHCが八村のチャレンジ要求について質問を受け、その判断に対する信用を以下のように話していた。

 

「ルイが『コーチ、彼が引っかけたんですよ』と言ってきました。いろんなプレーヤーを見てきた中で、私は彼を信用しているし、ラッセル(ウエストブルック)もルイを信用しています。彼らが『チャレンジしましょう』と言ったんです。あの判断は大きかったし、大きなプレーでした。自分の手柄と言いたいところですができません。あの二人の手柄ですね」
“Tonight, it was Rui, he said “coach, he hooked me”. I’ve seen enough of certain players in the league. And I trusted and Russell trusted Rui as well and they just…, “let’s challenge it. That was a big decision and a big play I wish I can get credit for. But I can’t. it was those two guys.”

 

試合後会見でブルックスHCは延長戦でのジャッジに対するチャレンジについて、八村とウエストブルックの判断と主張を高く評価していた(文中のやり取りは写真から見られるインタビュー映像の3分10秒過ぎあたりからみられます)

 

 ブルックスHCはさらに、そのプレー自体についても詳しく振り返った。
「できれば彼(ウィリアムソン)の前に立って、うまくいかなければトップからダブルチームしてと思っていました。でも、彼(八村)が引っかけられたのを感じながら対抗し続けたのが良かったですね。もしも引っ掛けられたまま引いてしまったら、いずれにしてもあのコールをしてもらえなかいでしょう」
“Yeah, we wanted…, we wanted to try to…, front him if we can. If not, we were gonna double from the top. But yeah, I thought he…, good thing I loved about it, he’s felt the hook and had to continue to fight through it. If you just accept the hook and concede you’re not gonna get those…, you know, calls either way.”

 

 勝負どころで八村が好判断で貢献したのに対し、ウィリアムソンの方は逆に冷静さを欠いた形だ。115-115のタイで迎えたウィザーズの最後のオフェンスでも、ウエストブルックが残り1秒で放ったショットに対しファウルを犯し、フリースローを与えてしまったのはウィリアムソンだった。
ペリカンズのスタン・バン・ガンディHCは会見でウィリアムソンについて「彼は身体的にも内面的にも相手を打ち負かすことができます。でもその二つ目が今日はうまくできませんでした(He can beat you physically and he can beat you with his mind. And the second part he really didn’t do tonight)」と話した。その要因には八村だけでなくギャフォードのアグレッシブなプレーが果たした役割が大きかったと言い、「ギャフォードに楽にプレーさせないようにできたはずなのに、私がそれをうまくできませんでした(There was more we could have done to make it harder on Gafford to get to the rim every time. I didn’t do a good job with that)」と、自らの責任を明確にしていた。
ウィリアムソンはギャフォードが立ちはだかるゴール下で、たびたび力でねじ伏せようと強引なフィニッシュを試みたが堅守に阻まれる結果となっていた。ドラフト1位でプロ入りし、2シーズン目の今、リーグ8位の平均26.7得点という好成績を残しているウィリアムソンといえどもまだ成長過程。バン・ガンディHCのコメントからはリーグの将来を背負う若きスターの育成に対する責任感も伝わってきた。

 

バン・ガンディHCはウィリアムソンがいまひとつの出来だったことについて、自らの戦術面での責任にも言及した(文中のコメントは写真から見られるインタビュー映像の2分29秒過ぎあたりからの流れの一部を拾っています)


ウィザーズはこの日の勝利で通算成績を22勝33敗とし、イースタンカンファレンスの12位。この日は順位が近いトロント・ラプターズが勝利し、シカゴ・ブルズが敗れたことにより、プレーイン・トーナメント出場権が得られる10位にラプターズ(23勝34敗)が上昇し、ブルズ(22勝33敗)とともに3チームがゲーム差なしという状況になっている。日本時間4月18日(アメリカ時間17日)に行われるデトロイト・ピストンズとの試合に勝つと単独10位。この試合も面白くなりそうだ。


文/柴田 健(月バス.com)
(月刊バスケットボール)



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