月刊バスケットボール5月号

NBA

2021.04.15

ニック・ナースHCの対ホークス戦渡邊雄太評 – 日本時間4月15日、トロント・ラプターズ対サンアントニオ・スパーズ戦試合前会見より

 

前日の渡邊の出来について、ナースHCはポジティブなコメントを残した(写真をクリックするとインタビュー映像を見られます)

 

 103-108で敗れた前日(日本時間4月14日)の対アトランタ・ホークス戦で15分5秒プレーした渡邊雄太は、4リバウンド、1アシストを記録したほか、相手のシューターたちやルー・ウィリアムスとのマッチアップでも持ち味を発揮していた。ただしドリブルドライブやカットでボールを受けゴール周辺までで勝負するオフェンスの機会がないまま7試合ぶりに無得点だったこともあり、ニック・ナースHCがこのところチーム全体に関してよく話しているアグレッシブさと安定感の不足という点では微妙な結果とも思える。渡邊は、ホークスがラプターズを引き離した第2Qに7分33秒出場していたために、±もチームで2番目に低い-7。4つのリバウンドと1アシストはすべて、ラプターズが追い上げた第4Qに記録してまたしてもクロスゲームを落としただけに、「惜しい」と感じてしまう。
そこで、対サンアントニオ・スパーズ戦の試合前会見でニック・ナースHCに、前日の試合を終えてから渡邊と何か話したり、助言したりしたかどうかを聞いてみた。ナースHCは、渡邊との会話があったかどうかは答えなかったが、ことさら前日の出来に不満を抱いてはいない様子で、以下のようなコメントを返してくれた。

 

「彼はここ2-3試合、良いプレーを続けていましたよね。私としては誰に対しても、試合後の会見で『まったくミスがなくショットも入っていた』と言える試合が、例えば2度ならまだしも3度も続くとは思っていません。昨夜も良かった点はいくつもありましたしね。最近の流れと同じだけの出来ではありませんでしたが、頑張っていましたよ」
「リーグでもトップクラスの点取り屋であるルー・ウィリアムスにマッチアップする機会も得ていたし、それは簡単なことではありません。良い活躍が2-3試合続いた後の昨夜は最高の出来とは言いませんが、普通の出来でした。でもまったく悪くはありませんでしたよ」
“Yeah, I mean I think he’s had…, he had a run of a couple…, two or three really good games in a row, right? I don’t think I ever expect anybody to…, you know I think two games for sure, if not three where I came after the game and said I don’t think you made any mistakes and made some shots and he did some things last night.”
“It was a little bit…, not as quite good as those. But again, he was out there working. You know he was going ahead guarding Luo Williams at one time, who is one of the best scorers in the league. So again he's drawn some tough assignment. It wasn’t his best game last night after the two or three in a row that he had good but it wasn’t…, you know it was kind of an average game. But it wasn’t awful by any means.”

 

 

 渡邊へのコメントを含め、ナースHCの表情は昨日の会見と比べると明るい様子に見えた。3日前にニューヨーク・ニックスとの僅差の試合に敗れ、2日前にはラプターズと別に請け負っているカナダ代表HCとして、同チームの主力の一人であるジャマール・マレー(デンバー・ナゲッツ)の左ヒザ前十字靭帯断裂という衝撃的な出来事にも直面しなければならなかった。ホークスとの試合を前にした会見では、見る側がそういう絵で見ているからかもしれないが、穏やかな対応の中にもやや疲れがあったように思えた。
15日の相手となるスパーズは、現在26勝26敗の成績でウエスタンカンファレンス9位に位置している。直近の流れは5連敗のあとの2連勝中。やや波のあるように見える流れだが、この5連敗には2度の延長の末に敗れた対ホークス戦、その2日後にやはり延長で敗れた対インディアナ・ペイサーズ戦と現在同カンファレンス4位でシーズンを通じて好調を保っているデンバー・ナゲッツとのアウェイでの2試合が含まれている。また、2連勝は現在同カンファレンス7位のダラス・マーベリックスに対するアウェイでの勝利で始まっており、ラプターズは5試合の遠征を締めくくる最後の対戦相手だ。
ラプターズは昨夜の敗戦で通算成績が21勝34敗のイースタンカンファレンス11位。プレーイン・トーナメント出場圏内の10位に位置するシカゴ・ブルズとのゲーム差は2。また、12位のワシントン・ウィザーズ(20勝33敗)とはゲーム差なし、13位のクリーブランド・キャバリアーズ(19勝34敗)とは1ゲーム差という“団子状態”だ。ウィザーズは2日前に、リーグトップのユタ・ジャズをアウェイで撃破し、勢いがついてきていることもあり、ポストシーズンをにらむ立場では一つも負けられない状態と言ってよいだろう。スパーズはプレーイン・トーナメント出場圏内だが、直接的なプレーオフ出場権獲得(カンファレンス6位までに与えられる)の可能性も十分ある中、こちらもこの日のラプターズには勝っておきたいところに違いない。
この試合の3時間前に公表されたインジャリー・レポートによると、ラプターズはカイル・ラウリー、フレッド・ヴァンヴリート、ディアンドレ・ベンブリー、ゲイリー・トレントJr、ジェイレン・ハリスが“Out(欠場)”。一方スパーズはゴーギ・ジェンとトレイ・ライルズが“Out”となっている。

取材・文/柴田 健(月バス.com)
(月刊バスケットボール)



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