月刊バスケットボール5月号

Bリーグ

2021.04.12

31得点の大爆発で秋田ノーザンハピネッツを勝利に導いた細谷将司「すごく信頼感が増した試合だった」

 シーズンも終盤戦に突入し、チャンピオンシップレースがますます激化しているB1東地区。川崎ブレイブサンダースがホームに秋田ノーザンハピネッツを迎えた第32節のゲーム2。前日の敗戦(55-82)で6連敗と悪い流れをなかなか払拭できない秋田だったが、この日は終始、攻防に気迫のこもったプレーを見せた。

 

細谷の打つシュートは引き寄せられるかのようにリングに吸い込まれた

 

ベンチ出場の細谷将司が

八面六臂のパフォーマンスで秋田をけん引

 

 第1Qは前日同様、ロースコアの展開となる。川崎は序盤で辻直人が決めた3Pシュート以降、外角のシュートタッチが定まらず、一方の秋田も川崎の素早いローテーションディフェンスを振り切ることができないまま時間が進んでいった。クォーター後半は点が伸び、22-15と川崎リードで進んだが、点数以上の重さを感じる立ち上がりとなった。

 

 重い空気を吹き飛ばしたのは秋田のシックススマン細谷将司。1Q途中で登場した細谷は、なかなかフィールドゴールを決め切れないチームの中でアウトサイドから活路を見いだし1Q終盤に2本の3Pをヒットすると、2Qに入ってその勢いをさらに加速させる。

 

 大浦颯太の3Pシュートで2Qをスタートさせた秋田は、続けざまに細谷がレイアップで加点。それ以降は秋田が決めれば川崎も大塚裕土のミドルジャンパー、ジョーダン・ヒースの3Pで反撃し、第1Qとは一転、点の取り合いとなった。ここで抜け出したのは秋田で、流れを呼び込んだのはまたしても細谷の3P。自身の2Q最初の3Pでこの試合初めてのリード奪うと、その後も小気味よく得点を重ね前半で23得点。細谷は「最初のシュートやアクションが決まったり、納得する動きができると乗っていくリズムが自分の中ではあって、今日は1本目からその感覚がありました。3Pもフローターも入ったので、『今日はいけるな』っていう感じで、そこからは打てば何でも入るし、動きも全部うまくいきました」と前半を振り返る。

 

“ゾーンに入る”

まさにそんな神懸かったパフォーマンスだった。

 

細谷の活躍に触発された大浦も14得点、4リバウンド、4アシストの好パフォーマンス

 

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チーム全体としてステップアップした

後半の戦いぶり

 

 それでも、前半のスコアは42-42。川崎もアウトサイドが絶不調(試合を通して3Pシュート29分の1)ながら増田啓介やニック・ファジーカスらが懸命にインサイドで得点し、秋田のファウルを誘発してはフリースローで試合を繋いでいたからだ。

 

 リズムは秋田にあったが、点差が離れない。前半をけん引した細谷自身も「前半で手が震えていた」と言うほどに疲労困憊の状況で、後半はチーム力が問われることとなった。

 

 その後半は再び川崎にリズムを渡しかける時間帯もあったが、チームとして上回った秋田が流れを引き寄せた。細谷が生み出したリズムを先発の大浦とリザーブの保岡龍斗の若手コンビが引き継ぎ、チーム全体としてアウトサイドシュートがスパーク。ディフェンスでも川崎のビッグラインナップに対してインサイドで簡単に得点を許さずに、ミスを誘発しトランジションからイージーバスケットを連発。

 

 最後は保岡がワイドオープンの3Pをブザービーターで沈め、このクォーター序盤の8点ビハインドを覆し、63-60で最終クォーターへ。以降は川崎に一度もアドバンテージを取られないまま93-84で連敗を止めた。

 

 細谷は後半の8得点を含めて、トータル31得点。Bリーグ開幕年の2016年10月9日の三遠ネオフェニックス戦で記録した39得点に次ぐ、キャリア2番目の大量得点で勝利に大きく貢献した。「うちには川崎のニック・ファジーカス選手のような選手がいないので、日本人選手の誰かが爆発しないと今の状況で(勝つことが)厳しいのは僕も分かっていました。その誰かが今日は僕だった」と細谷。

 

 細谷自身、このところ調子が上がらず前日のゲーム1でも無得点だっただけに、自身のパフォーマンスに対する喜びをもっと表現してもおかしくはないが、発したのはあくまでもチームの勝利について。

 

まさにチームでつかみ取った会心の勝利だった

 

 彼はこの試合を「すごく(チームとしての)信頼感が増した試合だった」と表現した。

 

「ハーフタイムにみんなが僕に声をかけてくれて、そこで僕は『次はみんなの番だよ、後半は頼むわ』って伝えました。(後半は)コートにいるときもベンチに座っているときもみんなから『俺がやってやる』という思いがすごく伝わってきたので、3Qのブザービーターくらいから『今日は勝てるかもしれない』と感じていました。僕が下がっている時間帯で大浦がチームをコントロールして、自分でもアタックして点を取って、そういうときに勝ちを意識しました。古川(孝敏)さんもコートいましたし『ああ、もう大丈夫だ』って。すごく信頼感が増した試合だったと思いますね。今までとは違う…何ていうんですかね? 信頼を持てた、チームとしても自信を持てた試合でした」

 

 この勝利で秋田は26勝24敗。順位的にもまだまだ厳しい戦いが続くが、この試合を一つのきっかけとしてチームが急上昇することに期待したい。

 

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写真/B.LEAGUE

取材・文/堀内涼(月刊バスケットボール)



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