月刊バスケットボール5月号

NBA

2021.04.10

八村 塁(ウィザーズ)、チームハイの22得点で対ウォリアーズ戦逆転勝利に大きく貢献

ビールに対するプレッシャーが厳しい中、八村はチームハイの22得点で存在感を示した(写真をクリックするとインタビュー映像が見られます)

 

 日本時間4月10日(アメリカ時間9日)にサンフランシスコで行われたゴールデン・ステイト・ウォリアーズ対ワシントン・ウィザーズ戦で、八村 塁が序盤からの活躍でウィザーズをけん引し、110-107の勝利に大きく貢献した。八村はこの試合でチームハイの22得点に加えて5リバウンド、1アシスト。フィールドゴールは16本中9本を決め成功率56.5%、±もチームハイとなる+13と非常に効率の良いプレーぶりだった。ウィザーズの最初の6得点はいずれも八村がラッセル・ウエストブルックからのパスを受けて奪ったもの。この3本でティップオフから約1分半の間に、ウィザーズは6-0と好スタートを切ることができた。
試合前の会見でウォリアーズのスティーブ・カーHCは、八村について「彼は強くて身体能力が高く、スターター入りもうなずけます。若手の有望株ですからね。才能豊かなプレーヤーです」と高い評価とともに警戒感を語っていた。「プレーぶりを見るとミドルレンジのショットがうまくゴール周辺で爆発的なプレーをしています。オフェンスリバウンドを獲られないようにして、トランジションでも簡単に得点させないよう気をつけます。できるだけ外から打たせたいですね」というのがカーHCの八村評。彼自身による英文での返答は以下のような流れだった。
“He’s a really athletic, strong player, in their starting line-up for a reason because he’s a good young prospect. So, very talented player, you know just watching him, he’s a…, he’s got a very good mid-range shot and veery explosive around the basket. So, we’ve gotta try to keep him off the offensive boards. And we’ve gotta keep him from scoring easily in transition, try to force him into more perimeter shots.”

 

カーHCは試合前の会見で八村を高く評価し、警戒感も感じさせていたが、ウエストブルック、ビールとの連携を止めるのは容易ではないようだ(写真をクリックするとインタビュー映像が見られます)

 しかし、いざ試合が始まると八村に対するディフェンスはカーHCが示唆したような効果を生み出すことができなかった。やはり最大の得点源であるブラッドリー・ビールに対し特別に高い警戒を保たなければならない。その状況で八村は第1Q残り7分53秒にトランジションでレイアップを決めた時点で10得点。5本のフィールドゴールは前述のトランジションでのレイアップのほかに、ハイポストからのジャンパー2本とドライビング・レイアップにアリウープと、いずれもゴールに近いエリアを攻略したもの。このうち4本にウエストブルックから、1本にビールからのアシストがついており、ウィザーズは“ビッグ3”がウォリアーズのディフェンスにうまく対応してペースをつかんだ形だった。
ただ、ウォリアーズもこの日32得点を挙げたステフィン・カリーを中心に大いに粘りを見せた。第4Q残り2分42秒にビールがアーリーオフェンスからレイアップを決めて102-97の5点差をつけても、ケリー・ウーブレとアンドリュー・ウィギンズのダンクなどで追いすがる。残り33秒にカリーがリバースレイアップを決めた時点では105-104とリードを奪い返し、残り19秒には再びカリーがフリースローで2点を加え、107-104と優位に立った。
ウォリアーズはここまで、リーグの得点ランキング1位に座しているビールの得点を14得点に抑えていた。ところが、カリーのフリースローに続くポゼッションでウエストブルックが放った3Pショットのこぼれ球が左コーナー付近にいたビールの手元に…。残り時間は6秒あまり。このボールを手にしたビールは、クローズアウトしてくるウィギンズのプレッシャーを受けながらみごと3Pショットを成功させ、このプレーで得たファウルによるフリースローも決めて108-107とリードを奪い返すことに成功した。ビールはさらに、ウォリアーズが次のポゼッションをターンオーバーで終えた後にフリースローで2得点を重ね、記録としては試合終了間際のわずか6秒間で6得点。驚異的なクラッチぶりでスコアを110-107とし、ウィザーズの勝利を決定づけた。

 

試合終盤の勝負がかかった一瞬のチャンスを実らせたビールのクラッチぶりには脱帽するしかない


この試合では、勝負を決めたのは最後の局面でのオフェンスリバウンドとブラッドリー・ビールのクラッチ・ショットなのは間違いない。しかしウィザーズ側はウエストブルックが試合を通じてチームをけん引し、記録としても19得点、14リバウンド、14アシストのトリプルダブル。八村は序盤の得点に加え勝負のかかった第4Qにも、残り2分17秒のプルアップ・ジャンパーを含め7得点を積み上げ、ビールが苦しんだ分をしっかり穴埋めする貢献をもたらしていた。ブルック・ロペスはビールに並ぶ20得点。オフェンスでさほど目立たなかったルーキーのデニ・アブディヤも、ビールのクラッチ3Pショットの直後にナイスディフェンスでウォリアーズの得点機をつぶすなど、ウィザーズは個々のプレーヤーができる貢献を持ち寄ったような形で勝利をつかんだ。スコット・ブルックスHCは、序盤のウエストブルックと八村の連携について、「彼(ウエストブルック)とルイはものすごい相乗効果を生んでいる」と絶賛していた。

 カーHCは最大の敗因として、ビールのクラッチプレー以上に前半のウォリアーズのディフェンスに元気がなく、腰が引けてフィジカルな守り方ができていなかったことを挙げていた。しかし裏を返せば、ビッグ3を中心としたウィザーズの勢いが簡単には止められないレベルに上がってきているということなのかもしれない。
ウィザーズはこの2連勝で通算成績を19勝32敗とし、イースタンカンファレンス13位。しかしこの勝敗と順位はチームの現状を表してはいないだろう。翌日(日本時間4月11日)に対戦するフェニックス・サンズは36勝15敗でウエスタンカンファレンス2位のチームだが、激しい試合になりそうだ。

 

試合後会見でのブルックスHCの声は明るく、八村に関しては「ウィザーズ入りして以降毎月成長がみられる」とも話していた

 

取材・文/柴田 健(月バス.com)

(月刊バスケットボール)



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