月刊バスケットボール6月号

NBA

2021.04.09

渡邊雄太(ラプターズ)の直近3試合オフェンス評

ディフェンス面での貢献が目を引く渡邊だが、直近3試合はオフェンスでもアグレッシブさが増していた

 

アグレッシブにペイントで暴れる渡邊

 

 日本時間4月9日朝にティップオフを迎えるトロント・ラプターズ対シカゴ・ブルズの一戦は、両チームにとって落とせない大事な試合だ。20勝31敗でイースタンカンファレンス11位のラプターズに対し、ブルズは21勝28敗で10位。プレーオフ進出権を争えるプレーイン・トーナメントへの出場権が与えられるのは10位までであり、この試合の勝敗はゆくゆくポストシーズンの運命に直接的に影響してくるからだ。
この試合を前にして、渡邊雄太の調子が上がってきている。2日前のロサンジェルス・レイカーズとの試合を終えた段階で今シーズンの出場は32試合となり、平均出場時間11.7分でアベレージは2.6得点、3.1リバウンド、0.5アシスト。しかしこれを直近3試合に限るといずれも13分以上の出場で、5.3得点、4.8リバウンド、1.3アシストとなり、チームも2勝1敗だ。数字の上昇は出場時間の増加に伴うものでもあるので、一概に調子の良し悪しを反映していないかもしれないが、ディフェンスとリバウンドで非常に活発な働きをしているのが見るからに明らかな上に、上記3試合ではこのところニック・ナースHCが渡邊の課題として話すことが多かった「3Pラインとゴールの間でのボールの扱い方」という点で、それまであまり見られなかった強さを見せ始めているのだ。
渡邊が直近3試合で成功させたフィールドゴールは7本。そのうちの3本はドリブルドライブかオフボールでのカットムーブでペイントにアタックし、トラフィックの中でコンタクトを受けながらねじ込む、あるいはそれが落ちても自らのプットバックで得点してくる、というものであり、自ら決めたケースと別に、アウトサイドからペイントへのドライブ&キックでアシストを記録したケースも2本ある。自ら決めた残りの4本は、ブレイクからのダンクが3本、ゴール下でのこぼれ球を拾って決めたプットバックが1本という内訳だ。
一言でいえば、主にディフェンス面で発揮されていたアグレッシブさが、それまでとは異なるレベルに到達してオフェンス面にも非常に強く表れているように思える。対レイカーズ戦で渡邊が記録した8得点は、1月31日の対オーランド・マジック戦で記録した11得点以来の高さだった。この様子についてレイカーズとの試合後ニック・ナースHCに尋ねると、「彼は今日もまた上出来でした。よくやったと思います。ゴール近辺で何度かしっかり決めてくれました」と明るい答えが返ってきた。「ディフェンス面も本当に良く、パッと浮かぶのは一つだけですが、抜かれたシーンでも本当に懸命に相手に対してプレッシャーをかけようとしていて。でもそれ以外の場面では相手の前に立ちはだかっていました。これで3Pショットが1-2本決まれば最高でしたけど…。チャンスがありましたしね。でも今夜は非常に良かったです。活躍が見られてうれしいですよ」

 ナースHC自身の英文による回答は以下のような流れだった。
“He was good again tonight. I thought he had played good. He had some good finishes on the glass, really good defensively. I can only really remember one tonight. He got beaten and he just was really really trying hard and applying pressure when the guy got past him. But other than that he kept his guy in front of him all night. I would have loved to see him knock down a couple of those threes…, right? He had some good chances there. But he played extremely well tonight. It’s good to see it.”
レイカーズ相手の渡邊は8得点に加え、3リバウンド、1アシスト、2スティール、1ブロックだった。得点には、この日のNBAトップ10プレーで第6位にランクされたユーロステップからのダンクが含まれている。
第2Qにはルーズボールに激しくダイブし、アレックス・カルーソとのジャンプボールに持ち込んでラプターズのポゼッションを守ったシーンがあった。この時点でのスコアは34-68。34点差のダブルスコアで負けているという、気力を失ってしまいそうな劣勢の状態だったが、そんなことはまったく感じさせないひたむきなハッスルだった。こうした要素のすべてが好材料だ。

 

【関連記事】 渡邊雄太(ラプターズ)、ウィザーズ戦でラッセル・ウエストブルックを苦しめる

【関連記事】 渡邊雄太とディアンドレ・ベンブリー、ラプターズで育まれる友情



PICK UP