月刊バスケットボール5月号

【バスケットボールで日本を元気に】「次はバスケットが日本を元気にする番だと思っていました」(馬瓜エブリン/トヨタ自動車)

 

 3月20日(土)、21日(日)に行われた20-21Wリーグ プレーオフ ファイナルで、12連覇を目指す女王ENEOSを2連勝で下し、初優勝を手にしたトヨタ自動車。そのメンバーの一人で、果敢にリングにアタックするドライブやリバウンドといった得意のプレーだけでなく、近年磨いてきたミドルレンジのジャンパーを確実に沈めチームの勝利に貢献したのが馬瓜エブリンだ。

 

 馬瓜自身は桜花学園高時代に3冠を達成するなど数々の全国大会優勝を経験してきたが、「今回の優勝は特別なものがあります」と言う。「桜花学園は常勝軍団で優勝を求められるチームだったので、優勝してもホッとする感じでした。でも今回のWリーグでの優勝は、11連覇してきたENEOSさんを倒しての優勝。これまでももちろん優勝に向けて毎日練習してきたのですが、どこか『できたらいいな』と感じでもありました。それが今季はチームのメンバーのコンディションも良くて優勝が現実味を帯びてきました。また皇后杯決勝で負けたことで、自分たちはどうやって戦っていくべきなのかの共通認識を持てたのが本当に大きなことだったと思います」。

 

 

 優勝した喜びをそう語る馬瓜は、プレーだけでなく、チームが得点したときに見せる明るい笑顔、ピンチになりそうなときの仲間への積極的な声かけでもチームを盛り上げていたが、「笑顔や声出しでチームを明るくすることは自分の能力だと思いますし、役割でもあると自覚しています。自分自身がどういう状況であっても、それはしていこうとトヨタ自動車に入ってからはずっと心掛けてきました」と言う。チームには妹のステファニーも在籍していて、今回のファイナルでも2人が同時にコートに立つ時間が多かったが、「妹の方がもっと元気。自分が落ち込んでいたりすると『しっかりしなよ!』みたいに声をかけてくれます」とのこと。こうした馬瓜姉妹の明るさが、トヨタ自動車の初優勝に一役買っている部分もあったはずだ。

 

 その馬瓜に、リーグ前のコロナによる自粛期間中はどんなことをしていたのかを聞くと、「ビデオチャットツールなどを使ってコミュニケーションをとっていました。その中で、モンデーロHCがスペイン出身なので『じゃあ、みんなでスペイン語を練習しよう』とか、リーグが始まったときにどうすればお客さんを盛り上げることができるか、グループに分かれてそれぞれが発表したりということをやっていました」とのこと。「これまではリーグが終わったら代表活動ということがずっと続いてきたので、2~3か月の休みと言うのは初めてでした。でも、色んなことを学べたり、色んなトレーニングをしたりといいリフレッシュにもなりました」と前向きに過ごしていたようだ。

 

 

 日本バスケットボール協会では「バスケットボールで日本を元気に」の理念の下、バスケットボールに関わる機会が減少したファンの方々をはじめ、日本の皆様へ元気を届けたいとの趣旨で、JBA 公式 YouTube を利用して過去試合コンテンツのオンライン配信や選手からのメッセージを通じて、エールを届けている。

 

 競技者向けに今年3月には馬瓜も「一つ一つの体験を大切にして次につなげていってほしい」という内容の動画メッセージを送っているが、「こういう企画に参加できて良かったです」と馬瓜。「これまでは野球やサッカーが日本のスポーツ界を盛り上げ来てくれましたが、『次はバスケットの番だ!』と思っていたんです。バスケットは音楽やダンスと融合したりなど、若者が興味を持ってくれるキッカケとなると思います」とバスケットの可能性を信じている。

 

 その馬瓜は、今年のオリンピックで代表としてプレーする可能性が高い。「開催されるかどうか、盛り上がるのかどうかいろいろありますが、オリンピックはずっと自分が出たいと思って追いかけてきた夢の一つ。もし出れるのであればしっかりと準備をしていきたい」という馬瓜が笑顔で躍動するプレーを見れば、きっと元気がもらえるはずだ。

 

(月刊バスケットボール)



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