月刊バスケットボール5月号

Wリーグ

2021.03.19

高さのトヨタか、速さのENEOSか。Wリーグファイナルが始まる

 ENEOSサンフラワーズ、トヨタ自動車アンテロープスによるWリーグ2020-21シーズンのファイナルが、3月20日より、国立代々木競技場第2体育館で行われる。

 ENEOSはレギュラーシーズンの東地区1位、セミファイナルでは西地区2位のデンソー・アイリスを破ってきた。同様にトヨタ自動車も西地区1位、セミファイナルで東地区2位の富士通レッドウェーブに勝ってのファイナル進出を果たしている。

 昨シーズンまでのWリーグは、12チーム1リーグ制で、シーズン中の毎週末にそれぞれの対戦を分散し、全国各地で開催してきたが、今シーズンはレギュレーションを変更し、東西6チームずつの2地区制を導入し、開催地を集中させるなど、コロナ禍における対策を講じてきた。そのため、レギュラーシーズン中は東西間の対戦はなかったのだが、ファイナルに進んだ両チームは1試合だけ対戦している。それが昨年12月20日に行われた皇后杯決勝である。

 

ENEOS #11岡本と渡嘉敷

トヨタ自動車 #0 馬瓜エブリン

 

 Wリーグの前半戦が終了し、中断期に行われた皇后杯。前半戦全勝で東地区1位をひた走っていたENEOSだったが、皇后杯ではセンターの梅沢カディシャ樹奈、シューターの林咲希ら主力が故障で欠場。さらに準々決勝の序盤で日本代表でもエースを務める渡嘉敷来夢が負傷し、戦列を離れた。そうした非常事態で臨んだ決勝戦は、トヨタ自動車優位との見方が多かっただろう。実際、前半戦はトヨタ自動車がリードする展開だったが、後半に入ってENEOSが執念の逆転劇を見せて、皇后杯8連覇を果たしたのだ。まさに女王のプライドを感じさせる試合だった。

 

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 再び決勝の舞台で対峙する両チーム。トヨタ自動車にしてみればリベンジの場だ。ぶっつけ本番で、しかも主力を欠くENEOSとの対戦に、受け身になってしまった皇后杯での敗戦。「ミスを修正していけば、次は勝てるところまで来ている」とルーカス・モンデーロHC。馬瓜エブリンも「Wリーグでこの借りを返したい」と皇后杯後に語ってる。プレーオフセミファイナルの富士通戦もリバウンドで圧倒し、2連勝とチームのムードはいい。また、ファイナル前の会見で、長岡萌映子もENEOSの速い展開を警戒しつつ、「集中力を切らさないこと、チャレンジャーとしてアグレッシブにプレーすること」と気を引き締めている。さらに皇后杯では欠場していた林が加わったことで、「攻撃力が増している」と分析している。

 一方、Wリーグ12連覇がかかるENEOSは、渡嘉敷欠場後の、リーグ後半戦で12連覇について触れられたキャプテンの岡本彩也花は「今はそれどころではなく、目の前の一戦一戦をどう戦うか」と話していたが、シーズン最終週でシャンソン化粧品に黒星を喫するなど、けが人の影響による選手層の厳しさを露呈していた。

 

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 セミファイナルのデンソー戦もそれぞれ1点差、2点差と薄氷を踏みながらの勝利だった。しかし、裏を返せばENEOSの勝負強さを表しているともいえる。対戦したデンソーのマリーナ・マルコヴィッチHCも「経験の差」を敗因の一つに挙げている。さらに、大黒柱の渡嘉敷が突然いなくなった皇后杯とは違い、新たなラインナップで後半戦を戦ってきており、連携面でも進歩してきている。「ENEOSのバスケットはリバウンドを取って、走ること。それを40分間、全員で」と岡本が話すように、スモールラインナップになり、より高速なバスケットに磨きがかかってきている。
高さと層の厚さで優るトヨタ自動車、速さと経験値ではENEOS。この両者の激突となる Wリーグファイナルは2勝先取したチームが優勝となる。この2勝というのも大きなポイントになりそうだが、果たして栄冠を勝ち取るのはどちらのチームか。試合の模様はNHK BS1のほか、バスケットLIVE、スポーツナビ、W-TVにてライブ中継される。

 

■Wリーグプレーオフ公式サイト

https://www.wjbl.org/playoff/20-21/

(文:飯田康二・写真:石塚康隆/月刊バスケットボール)

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