月刊バスケットボール6月号

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2021.03.17

ヒル真理(足羽高校卒、ボーリング・グリーン州大4年生) - アメリカで手にしたもの(2)

渡米後のヒル真理はIMGアカデミー、タラハシ・コミュニティー・カレッジ(TCC)、サウスジョージア・テクニカル・カレッジ(SGTC)と3つのステップを経て、2019年の夏にNCAAディビジョンIのボーリング・グリーン州大(BGSU)入りを実現した。

 

MAC公式戦で果敢なドライブを試みるヒル

 

 

NCAA ディビジョンIデビュー戦でチーム歴代2位の9スティール

 

 目標をNCAAディビジョンIの大学でプレーすることと定めていたヒルにとって、SGTCでの時間は大学のリクルーターにアピールする重要な時間。IMGアカデミー時代と同じく緊迫した日々が続く一年だったが、ヒルはコート上でもコート外でも結果を残すことができた。
2018-19シーズン、ポイントガードとしてヒルは平均5.6得点、4.8リバウンドに加え、NJCAAディビジョンI全体の3位となる6.4アシスト、同9位の3.7スティールという好成績を残し、カンファレンス(ジョージア州内の短大が参加するリージョン17)のチャンピオンシップでMVPに輝いた。チームとしてもSGTCはリージョン17で18勝0敗の成績を残し、NJCAA全米トーナメントに出場を果たしている。
TCCでの全米制覇を含め、ヒルがこうした実績を当たり前のように積み上げたことは驚くべきことだ。足羽高校時代まではフォワードやセンターの役割を務めていたヒルにとって、渡米後のポイントガードへのコンバートは大きなチャレンジだったからだ。「こちらに来て戦略とか、考えてプレーするのが面白いなと思いました」とは言うものの、フィジカルが強くスピードもあるプレーヤーが多いアメリカのポイントガードたちを相手に競争して勝つというのは、非常に高いハードルだ。
「最初は、私がポイントガード!? という驚きもあったんですけど、上の2人(ルイジアナ州大でプレーしたライアン[理奈]とヴァンガード大に所属した恵理)も日本ではポイントガードではなかったけれどアメリカに来てからポイントガードになったんですよね。だから私ももしかしたら…。身長もそんなに高くないですし(ヒルは身長168cm)」。身近に存在した先駆者たちの姿をインスピレーションとして変化を前向きに捉えた結果、幸運がヒルの後についてきた。
SGTCのこのシーズン最後の試合を見ていたリクルーターの中に、ヒルが現在所属しているボーリング・グリーン州大(BGSU)でアシスタントを務めるジョエル・ワイマー氏がいたのだ。
SGTCの公式サイトに、同短大での活躍をステップにして夢だったNCAAディビジョンIでのプレーを実現させたヒルに関する記事が今も公開されている。そこには、ヘッドコーチのロビン・フラリック氏が有能なポイントガードを探していたこと、そのフラリック氏にワイマー氏がヒルの様子を伝えた際に好印象を持ったこと、さらにはその後BGSUでスターターとして活躍したヒルの様子が詳しく報じられている。こうした4年制大学への転入は、短大側にとっても誇らしいニュースなのだ。

 ちなみにSGTCからBGSUへの転入に際し、TOEFLのスコアは不要だった。というのも、SGTCをGPA3.8の成績で卒業した時点で、すでにBGSUに3年生として転入するための条件を満たしていたからだ。こういった点は、アメリカへのバスケットボール留学を検討する若者や家庭にとっては、参考にしてもよい事項なのかもしれない。「大学によっても違うのかもしれませんが、私の場合はテストを受けることもなく進みました」とヒルは話してくれた。
ただしバスケットボールに関しては、ビジットの際にトライアウト的なステップを踏んでいた。「ボーリング・グリーンのコーチが興味を持って電話してきてくれて、ビジットに来ないかと。そこでチーム練習で3対3や5対5をして、その後電話でぜひオファーしたいということを伝えていただきました」
こうしてヒルの夢が一つかなうこととなった。BGSUファルコンズでのデビューは2019年11月6日。#11のジャージに身を包んで2019-20シーズン開幕戦にスターターとして出場したヒルは、35分間のプレーで2得点、5リバウンド、4アシストに加え、BGSUの歴史に名を刻む9スティールという数字を残し、89-62の勝利に貢献した。9スティールはBGSUの歴代2位となる快記録。しかも、試合開始早々に10点リードを奪われ窮地に立たされた後、ヒルのスティールは反撃を勢いづかせる大きな要因となっていた。シーズン初戦に勝利をもたらしたヒルの“ボール・ホーク”ぶりに、フラリックHCは試合後「(ヒルは)ボールを奪う能力が非常に優れています。そのおかげでチームがいい状態に戻ることができました」と称賛を贈っていた。(パート3に続く)

 

こちらの画像をクリックすると、月バス公式YouTubeチャンネルでインタビュー映像を閲覧可能!

 

写真/BGSU Athletics

取材・文/柴田 健(月バス.com)
(月刊バスケットボール) 



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