最後まで高い遂行力を維持した宇都宮ブレックスがアルバルク東京を撃破 クラブ史上初の天皇杯獲得へ王手!
「いつもアルバルク東京さんと試合をするときはどちらが40分間、遂行力を高くプレーできるかが重要です」
天皇杯ファイナルラウンド準決勝のゲーム1、アルバルク東京対宇都宮ブレックスの試合終了後、宇都宮の安齋竜三HCはこう語った。試合内容を見れば安齋HCの言葉の真意が見て取れる。
終始ロースコアな展開で進んだこの試合は、宇都宮が15点、A東京が11点で1Qをフィニッシュした。締まったゲームの中でも目立ったのは宇都宮のディフェンスだ。A東京はこの試合初めてのタイムアウトを1Q残り2分46秒の場面で取ったが、その時点でのスコアは15-7。インサイドではジョシュ・スコットとライアン・ロシターが立ちはだかり、A東京の得意とするピックプレーに対してはスイッチを多用して対応。ロシターしかり、ジェフ・ギブスしかり、スイッチしてもガードにマッチアップできるビッグマンが多い宇都宮のカラーが強く現れた時間帯だった。
要所の活躍が光ったロシターはゲームハイの17得点
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A東京がそのディフェンスに対応できたのは後半からだった。前半のスコアは31-24とA東京は50点にも満たないペースだったが、3Qはケビン・ジョーンズのインサイドポイントで幕を開けると、腰痛症から復帰したアレックス・カークもペイント内でフィニッシャーとなり、リバウンドでもチームに厚みをもたらした。また、宇都宮のスイッチングディフェンスに対してもスペースを広く取って平面のミスマッチを突くなど、順応。
そしてザック・バランスキーがゴール下のシュートをアンドワンでねじ込み、3Q残り3分27秒でついに同点(38-38)。宇都宮の背中を捉えた。宇都宮はディフェンスが破られたことでオフェンスにも悪い流れが伝染し、フィニッシュまで行き切ることができず。無得点の時間が続いた。ただ、「同点に追い付かれた場面で、逆転されていたらタイムアウトを取ろうかと思っていました。でも、逆転されずに、ディフェンスを頑張って良いところでジャンプシュートも決まりました。それで少しずつまた離していくことができた」と安齋HC。
チームとして悪い流れを断ち切る見事な集中力を見せた
宇都宮はテーブス海が起点となり、ギブスのジャンパーをお膳立てすると、直後には自ら切り込んでミドルジャンパーをねじ込み、再びリードを奪った。ここから宇都宮が主導権を握られることはなく、終盤にはA東京のターンオーバーを誘発。4Q残り6分4秒にはライアン・ロシターのワンマン速攻で15点のリードを生み出し、最終スコア64-54で勝敗は決した。
敗れたA東京のルカ・パヴィチェヴィッチHCは「リバウンドに関しては意識してハードに戦いましたが、特に大事なところでリバウンドをつながれたので、それが響きました。そして、遂行力は今日の一番悪いところ。宇都宮はスイッチを多用してきて、それに対して攻めどころはあったけど、それを狙って攻めることができずにミスにつながってしまいました。スイッチ対して相手がローテーションし、クローズアウトしてきたところに対して思い切りよく攻めることができませんでした。ギャップをアタックするチャンスはあったのですが…」と肩を落とした。
安藤誓哉も「3Qで追い上げることができて、そこからチームが勝負のモードに変わらないといけなかったんですけど、メンタル的な部分で最後まで持たなかったと思います」と敗因を口にした。逆転しきれなかったA東京と、逆転させなかった宇都宮の差は僅かなものだ。それが安齋HCとパヴィチェヴィッチHCがそろって口にした“遂行力”の部分。
苦しい台所事情の中、奮闘した安藤だったが及ばず
締まった試合であればあるほど、1本のリバウンド、1本のミスが勝敗大きく影響する。この試合に関しては宇都宮が最後まで集中力を切らさずに戦い抜いた。「天皇杯はチームとしても一度も取ったことがないタイトルなので悲願です。それに2か月後にチャンピオンシップが控えている中で、なかなかリーグ戦ではこういう試合は体験できません。それを自分たちの力で突破すれば、また自信にもなると思いますし、そういう意味でも明日も良いゲームをしたい」と安齋HC。
決勝戦、グランドファイナルの相手は川崎ブレイブサンダース。試合は14時ティップオフだ。
写真/JBA
取材・文/堀内涼(月刊バスケットボール)