月刊バスケットボール5月号

NBA

2021.02.27

八村 塁(ウィザーズ)、10%+アップのパフォーマンスで西海岸遠征勝ち越しに貢献

 

デンバー・ナゲッツを倒して西海岸遠征を勝ち越す


ワシントン・ウィザーズが4試合のウエストコースト・スウィングを3勝1敗で終えた。その最後の試合となったアメリカ現地2月25日の対デンバー・ナゲッツ戦は、第1Qの平均得点がリーグ1位の31得点というナゲッツを相手に、26-22とリードして第2Qを迎える好スタートを切り、優勢に試合を運んで112-110という僅差の勝利。最後はジャマール・マレーが終了間際のワンプレーで、彼らしからぬ判断ミスを犯して得点機を逸し、ウィザーズが辛くも逃げ切るという幕切れだった。
その中で八村 塁は20得点、5リバウンド、2アシストとチームの期待に応える活躍を見せた。20得点のうち8得点は、ラッセル・ウエストブルックのロブを受けてのアリウープダンク、NBAリーグパス解説者のドリュー・グッデン氏(ウィザーズほかで活躍した元NBAプレーヤー)が「A little Kawhi Lonard-ish(ちょっとロサンジェルス・クリッパーズのカワイ・レナードっぽかった)」と感心しながら説明したレッグスルー・クロスオーバーからのドライビング・レイアップなどで第1Qに奪ったもの。スコット・ブルックスHCは試合後、「彼として最高の試合の一つでしたね」と称賛を惜しまなかった。「もう3回くらい言っているかもしれませんが、最高の試合、最高の試合、さらにそれを上回る最高の試合ということです」

 

「ルイは成長し続けている」とスコットHCは八村を絶賛した


これで八村は自身最長記録となる10試合連続の2ケタ得点。ウィザーズはその10試合で7勝3敗と好成績を収めることができている。通算成績12勝18敗のイースタンカンファレンス12位という現在地は、開幕から2勝8敗で始まった今シーズン初頭を思えば大きな前進だ。現時点で同カンファレンス5位のトロント・ラプターズが16勝17敗。その位置まで2.5ゲーム差しかないのであり、レギュラーシーズン後のプレーイン・トーナメントだけではなく、6位以上が自動的に進出できるプレーオフのスポットも、間違いなく視野に入れることができる位置に這い上がってきた。この日も33得点といつもどおり優秀な仕事ぶりだったブラッドリー・ビールと、当たり前のようにトリプルダブルを記録しているラッセル・ウエストブルック(16得点、10アシスト、10リバウンド)に加え、八村の安定ぶりやハウル・ネト、ロビン・ロペスらのロールプレーヤーとしての貢献ぶりは、今や上位チームにとって脅威。コロナの影響で低迷が続いた後、オールスター・ブレイクを上々のチーム状況で迎えられそうだ。

 

現時点でリーグNo.1のスコアラーらしくこの日もビールは33得点を機得した

 

最後の局面では、自らの逆転3Pショットも味方へのおぜん立ても可能と思われたマレーだったが、ショットを躊躇しファクンド・カンパッゾに出したパスもベストではなかったことを受け、会見では悔しそうな表情で「次は絶対に自分で狙います」と話していた

 

オールスタークラスとのマッチアップに大奮闘した八村


それにしても、この4試合の遠征中における八村は特筆に値する活躍だった。主にマッチアップした相手には、オールスタークラスが名を連ねる。
2月21日の対ポートランド・トレイルブレイザーズ戦(118-111で勝利)ではスターティングフォワードのロバート・コビントンのほか、ピック&ロールでスウィッチした後にポイントガードのディミアン・リラードと対峙するシーンも何度もあった。リラードは今シーズン、現時点で得点ランキング3位(平均29.6得点)のスコアリング・ガードだ。
続く22日の対ロサンジェルス・レイカーズ戦では、オフェンスではカイル・クーズマに、ディフェンスでは史上最高のプレーヤーと称されることも多いレブロン・ジェームスとマッチアップする機会が多かった。この試合での見せ場も多々あったが、第4Qに延長に持ち込む流れでの価値ある3Pショットや、試合を通じてディフェンスでジェームスに対峙して8ターンオーバーを誘ったことなど、勝利への貢献度は非常に大きかった。
翌日行われた対ロサンジェルス・クリッパーズ戦はカワイ・レナードとのマッチアップがメイン。NBAファイナルMVPを2度受賞し、昨年はオールスターMVPとしてコービー・ブライアント・トロフィーを手にしたフォワードだ。
遠征最後のこの日、ナゲッツ戦で対峙したのは屈強なマイケル・ポーターJr.だった。まだ3年目の若手とはいえ、ニコラ・ヨキッチやジャマール・マレーらがうまくボールを回しながら攻め込んでくるナゲッツのオフェンスの中で、203cmの八村よりも大きな208cmのポーターと対峙するのが楽なわけもない。しかし八村は数字としても成果を残している。

 

八村の西海岸遠征における成績

 

 アウェイでいずれも順位が上のチームを相手にしている中、強烈なマッチアップを全力で受け止めた結果として、得点とリバウンドは八村のシーズンアベレージ(13.6得点、5.7リバウンド)を10%以上も上回っていた。ウィザーズの次戦は日本時間27日(土)午前(アメリカ時間26日金曜日夜)にワシントンD.C.で行われる対ミネソタ・ティンバーウルブズ戦だが、ホームで更なる活躍を期待できる好数字だ。
ウィザーズはオールスター・ブレイクまでに、その試合を含め5試合を予定している。後半戦に向け弾みをつけられるか、その戦い方はカギとなりそうだ。

 

文/柴田 健(月バス.com)
(月刊バスケットボール)



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