月刊バスケットボール5月号

廣瀬俊朗(元ラグビー日本代表)と、中村太地(韓国KBL原州)から学ぶ - B.LEAGUE U18 TIP-OFF CONFERENCEレポート

 世界に通用する人材やチームを輩出するというミッションの下、Bリーグが開催したB.LEAGUE U18 TIP-OFF CONFERENCE。2月22日にオンラインで行われたこのイベントには、パンデミックの影響で当初の開催予定を見送り中止となった『B.LEAGUE U18 CAMP×B.HOPE HANDS UP PROJECT ~未来へのパスをつなごう in 福島~』に参加予定だった選手たちと、2月に開催予定でこれも同様の理由で中止となったBリーグU15オールスターキャンプに参加予定だったU15の選手たちが参加した。

 ゲスト登壇者は元ラグビー日本代表キャプテンにして現在Bリーグ応援キャプテンも務めている廣瀬俊朗と、現在韓国KBLの原州DB PROMY で活躍中の中村太地。バスケットボール界から巣立ったタレントの副島 淳氏が司会進行を務める中、オンライントークセッションを通じて、2つの重要なテーマが論じられた。

 

世界で戦うとは

 

 島田慎二Bリーグチェアマンのメッセージから始まったトークセッションの最初のテーマは、「世界で戦うとは」というもの。ラグビーワールドカップ2015で世界的強豪として知られる南アフリカを倒した日本代表のメンバーだった廣瀬は、日本代表が強くなることが国内外でリスペクトを得る必須条件との思いを伝えた。そのために、世界を経験した上で自身のスタンダードをどこにおくか。「世界に通用する」ことをスタンダードにした廣瀬のエピソードは若者たちに強い説得力を持って受け取られた様子だった。
それだけでなく、海外のアスリートが時間内にすべてを出し切って居残りせずに練習を終えることやボランティアに積極的なことなど、スポーツがすべてではない「人として」の成長にどのようなことが望まれるかのヒントを数多く提供していた。

 

ラグビー元日本代表キャプテンの廣瀬俊朗は世界で戦った経験を余すところなく伝えた


中村は韓国KBLに挑戦した理由やその時の思いなど、聴講者たちの未来に直結する可能性がある要素を語った。フィジカルも非常に強く、激しいKBLでのキャリアにとどまらず、中村はヨーロッパのクラブなどでのプレーも将来的には視野に入れているとのことだ。韓国行きのきっかけが福岡大大濠高校時代の恩師の存在だったこと、常に成長できる場所にいきたいという意欲、現地で感じる異文化体験の話などは、聴講する選手たちにとってどれもから非常に良い刺激を受けた聴講者も多かったようだ。質疑応答で挑戦に際して不安はなかったかと問われると、「不安しかなかった」と素直な気持ちを吐露。それでも「最初に来たときの気持ちを大事にしています」と強い意志を感じさせるメッセージを発信していた。

 

 

未曾有の事態に直面したとき
スポーツ選手に何ができるか

 

 二つ目のテーマは「未曾有の事態に直面したとき、スポーツ選手に何ができるか」。トークだけでなく、東日本大震災とその後の経過の中でBリーグ、クラブ、選手たちがどのような影響を受け、コミュニティーへの貢献にどんな取り組みをしてきたかを、約45分間かけて語り合った。
廣瀬は自身の取り組みとして、さまざまなものが不足した震災直後は「ラグビー選手はタフなんだからクルマに乗るのをやめよう」と呼びかけたり、ボランティアに取り組んだことなどを話し、中でも実際に被災地に出かけて直接現地の様子を感じ取ることの大切さを説いた。中村は震災当時はまだ地元山口県で中学生だった。部活から帰ってテレビをつけると地震と津波のニュースがあふれていたという。「これが本当に起こっていることなのか…」という当時の衝撃を伝えていた。
Bリーグのこうした取り組みで、日本のバスケットボール界の将来を担う若い世代が競技だけにとどまらない成長の機会を得られるのは重要なことだ。特に広瀬のようなレジェンドや中村をはじめとしたトッププレーヤーの発言には強い影響力が期待できる。「ラグビーでも同様の取り組みが行われていますが、社会貢献などの活動について、この世代からアウェアネスを上げていく、もしくはBリーグとしてこんなことをやっていますということをシェアできる点でも、素晴らしい取り組みだと思います」と廣瀬は言う。
中村はこのトークセッションで、聴講者のプラスになる講和をすると同時に、自身も広瀬から刺激ももらったようだ。「日本代表で勝つというのがどれだけ大変かを学びました。それをわかった上で、日本代表として活躍するには自分としてどうすればよいか。それを考えさせられました」
中村に自身のキャリアビジョンについてたずねると、「特別指定も韓国での挑戦もそうですが、日本人初とか第一人者というのが、自分の中で魅力のある道と捉えています」と何かのパイオニアになろうとする意欲を語り、「日本のバスケに良い影響をもたらしたり、良い選択肢を生み出せるように活躍したいですね」と締めくくった。

 Bリーグは2016年の開幕当初から、国内バスケットボールの強化をねらって各クラブのユースチーム保有を目指しており、2018年にはB1ライセンス取得条件にU15チーム保有を義務付けている。U18チームを所有するクラブも既に存在し、今年の4月からはそのカテゴリーが本格始動することになっている。

※文中敬称略しました

 

 

文/柴田 健(月バス.com)
(月刊バスケットボール)



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