月刊バスケットボール5月号

NBA

2021.02.26

渡邊雄太(ラプターズ)が直近3試合で出場機会を得られなかった理由

 

ベンチの堅実な貢献を買うニック・ナースHC

 

 日本時間2月25日午前にティップオフを迎えたマイアミ・ヒート対トロント・ラプターズ戦は116-108でヒートが勝利。渡邊雄太の出場はなかった。これで渡邊は3試合連続不出場となり、ソーシャルメディアではベンチプレーヤーのローテーションにおける立ち位置を気にかけるファンの投稿も見受けられる状況となっている。

 実際にどうなるかはわからないが、試合後の会見でニック・ナースHCがこの日の試合でベンチプレーヤーをどう見ていたのかを察する言葉を一言を発していた。「彼らには動き回って元気なプレーでつないでもらうことを期待していました。堅実なプレーぶりでしたね」

 

ベンチの貢献を高く評価したニック・ナースHC

 

 この日ベンチから登場したプレーヤーは以下の7人だ(カッコ内はポジション、出場時間、得点、リバウンド、アシスト、スティール、ブロック、±の順)。

 

アーロン・ベインズ(センター・フォワード、17:09、7P、4R、1A、0S、0B、-2)
ディアンドレ・ベンブリー(ガード・フォワード、4:59、0P、0R、1A、0S、0B、1)
パトリック・マカウ(ガード、8:24、0P、0R、1A、0S、0B、-8)
クリス・ブーシェイ(フォワード・センター、18:22、11P、6R、0A、2S、1B、10)
スタンレー・ジョンソン(フォワード・ガード、3:29、0P、0R、1A、0S、0B、-11)
テレンス・デイビス(ガード、14:39、6P、2R、0A、0S、0B、-3)
マット・トーマス(ガード、6:11、0P、0R、1A、0S、0B、7)
7人の合計: 73:13、24P、12R、6A、2S、1B、-6
全体に占める割合: 出場時間30.5%、得点22.2%、リバウンド37.5%、アシスト20.0%、スティール40.0%、ブロック33.3%、± 75.0%

 

 ±でマイナスが大きいことは「負けに貢献」したような捉え方もあるかもしれないが、個別にみると確かにベンチの数字は堅実なイメージだ。また、シューティングでもこの7人全体でフィールドゴ―ル成功率50.0%(ベインズ3/5、ブーシェイ4/6、デイビス2/6、ジョンソン0/1)、3Pショットも41.7%(ベインズ1/2、ブーシェイ2/3、デイビス2/6、ジョンソン0/1)と良い。
渡邊は2月10日の対ワシントン・ウィザーズ戦から4試合を故障欠場し、その後2試合に出場した後、直近3試合で出場機会を得られていない。開幕からここまで20試合に出場して平均2.8得点(フィールドゴール成功率35.3%、3P 42.9%)、3.2リバウンド、0.4アシスト、0.5スティール、0.6ブロックというアベレージだ。

 このほかの数字では2Pショット成功率が26.1%と低く、これはコーチに響かない数字として挙げられる。しかし得点、リバウンドなどを見るとバックアップでいつ登場してもおかしくないような数字だ。特にリバウンドは、この日ヒートに42-32とやや圧倒されていた項目。渡邊はこのエリアでは貢献を期待できることを数字は示している。

 

この日控えとして最長の18分22秒プレーし、堅実な活躍を見せたブーシェイ

 

OGアヌノビー、カイル・ラウリーの復帰

クリス・フィンチの移籍…


ラプターズは渡邊欠場中の4試合を2勝2敗、出番がなかった3試合を1勝2敗としており、それらを含む直近10試合は6勝4敗だ。
渡邊より一足早く戦列に復帰したOGアヌノビーが、その後安定した活躍をしている(6試合中5試合に出場して平均11.4得点、6.0リバウンド)ことが、渡邊の出場機会に影響しているのは間違いない。渡邊が自己最長の10試合連続出場を果たした期間のうち、後半の7試合はアヌノビーが欠場中だった。
また、この日は、アシスタントだったクリス・フィンチがミネソタ・ティンバーウルブズに移籍してヘッドコーチになったあと、カイル・ラウリーが初めてプレーした試合でもあった。このような状況からベンチプレーヤーの出場機会は圧縮されるのも自然な流れだ。

 

ラウリーは会見で、パスカル・シアカムやアヌノビーらのリバウンドでの奮闘に信頼を寄せていた


前の試合(アメリカ時間2月23日対フィラデルフィア・セブンティシクサーズ戦)で敗れた後、ナースHCはディフェンス面の対応で自身の采配にもう少しうまくできたと感じる部分があったと話していた。次々といろいろなことが日々起こっていく中で、コーチ陣としてさまざまな考えが頭の中をめぐっているだろうことが推察される。
そのような状況で、それでは渡邊がGリーグに送られるようなことはあるだろうか。それは日程的な要素やラプターズ905のプレーヤーにチャンスを与えるという意味合いも含めて、検討されることの一つではあるかもしれない。渡邊を含め、プレーヤーの出入りが生じる可能性がないとは言えない。ただ、開幕当初の3試合も連続して出場機会が得られなかったのであり、試合でもそれ以外でもこれまで行ってきたことをきちんとやり続けることができれば、焦るような状態ではないように思える。

 Gリーグはレギュラーシーズンがアメリカ時間3月6日(土)で終了し、プレーオフも同3月11日(木)で終わる。一方NBAは同3月4日(木)までで前半戦の日程を終え、オールスターブレイクを迎える。

 そこまでにラプターズがプレーする前半戦はあと4試合。直近は日本時間26日(金=アメリカ時間25日の木曜日)のヒューストン・ロケッツとのホームゲームだ。

 

文/柴田 健(月バス.com)
(月刊バスケットボール)



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