月刊バスケットボール5月号

NBA

2021.02.25

渡邊雄太は出場ならず - ラプターズ対シクサーズ試合後会見レポート

 

エンビードを抑えるも

ラプターズの逆転勝利ならず

 

 イースタンカンファレンスのトップを走るフィラデルフィア・セブンティシクサーズと上り調子のトロント・ラプターズが、アメリカ現地2月23日に2連戦の2試合目を戦った。2日前の初戦に110-103勝利したのはトロント・ラプターズ。強敵相手の勝利で今シーズン初めて貯金を一つ作ることに成功した。しかし2試合目はシクサーズがモノにした。第1Qに37-18と大量リードを奪い、その後ラプターズの懸命な追い上げに苦しんだが、109-102で逃げ切った。
渡邊雄太の出場がなかったので、この連戦にはやや残念な思いを持った日本のファンも多かったかもしれない。ただ、この日はラプターズにいろいろなことが起きており、渡邊不出場も敗戦も、ラプターズファンの立場ではあまり深く考えない方が良いのではないかという印象だ。逆にシクサーズはラプターズの粘り強さを確認してホームへの帰途についた形だ。
いろいろなこととはまず、前の試合までニック・ナースのアシスタントを務めていたクリス・フィンチがミネソタ・ティンバーウルブズのヘッドコーチに就任し、この日からウルブズで公式戦のベンチに入っていたことが一つだ。また、NBAオールスターのリザーブの発表があったが、そこにラプターズのプレーヤーの名前がなかった(シクサーズ側では、ベン・シモンズが選出されたが、もう一人選出が期待されたトバイアス・ハリスは実現しなかった)。
試合においては、ラプターズはシクサーズの大黒柱たるジョエル・エンビードをディフェンスで非常によく抑え、フィールドゴール13本中わずか3歩しか許さずに今シーズン下から3番目に低い18得点に封じた。これ自体も、プレーオフでの対戦を想定するとラプターズにとって大きな出来事だと言える。
さらにこのシクサーズとの試合に続いて翌24日(日本時間25日)にはマイアミでの対ヒート戦が控えており、ラプターズにとっては非常にせわしない一日だったと思われる。
試合後、ラプターズの会見にはナースHC、フレッド・ヴァンヴリート、ノーマン・パウエルが姿を見せ、それらの点を含めさまざまな質問に対応していたが、会見の雰囲気はどこか和やかな印象だった。ナースHCはエンビードを抑えることに成功しながら敗れたことについて「少なくとも、我々は(エンビードを抑えることが)できると思える域に戻ってきました」と話した。ゆくゆくプレーオフで相まみえる可能性も十分あるが、「少なくとも封じ込められる可能性があるかも…。エンビードはすごすぎるよと投げだすことはありません。この2試合は彼に対して本当に良いプレーができました」
続けてナースHCは、ディフェンス面でシクサーズのシューターに対する対応がベストではなかったこと、その大部分の責任が自身にあったと感じていたことを明かした。「私はいくつかの対応をもう少しうまくやれたかもしれません。シューターに向かっていくプレーヤーたちの対応ですね。うまくできていた日があったのに今夜それができませんでしたが、その責任の大きな部分は私にあります」


どこがうまくできなかったのかについては、ライバルチームにばれてしまうから会見では明かせないという。しかしいずれにしても、チームとして希望を持てたことが伝わってくる内容だ。敗戦の責任をプレーヤーに押し付けていない点もチーム状況の良さを示す一つの兆候だろう。

 

敗戦にも前向きなラプターズ


ヴァンヴリートがオールスターを逃したことについてナースHCはとても残念だと答えていたが、当のヴァンヴリートは、「仕方がないことです。僕も人間ですから悔しいですが、これが最後の機会ではないし」という趣旨の回答をした。また、敗戦についてもあきらめずに最後まで戦えたことを「その点はよい面として持ち帰ることができます」と前向きにとらえ「あのまま突っ走られてもおかしくはありませんでしたが、戦い続けることができましたからね」と話した。

 


アシスタントだったフィンチのウルブズ移籍については、ナースHCもそうだったがパウエルも「コーチ・フィンチにおめでとうと言いたいです」と祝福のコメントをしていた。コーチングスタッフではセルジオ・スカリオロがFIBAユーロバスケット2022予選でスペイン代表を率いるためにチームを一時離れていたということもあり、それまでの通常とは異なる状況にあったが、慌てずに対応していることに賛辞を贈っていた。

 


勝ったシクサーズのドック・リバースはエンビードにラプターズのディフェンスが群がって苦しめられたことについて、「ジョエルはボールを持ったときによくやっていましたよ。判断もよかったです。我々全体としても良い判断ができていました。だから勝てたのです」と話し、6つのターンオーバーを犯したエンビード(チームとしては18個)を擁護していた。また、ベンチスタートで11得点と活躍したシェイク・ミルトンについて「ラプターズのトラップ・ディフェンスに対応するのに、ドリブルしてプレーメイクができる人材が必要でした」と話した。
リバースHCからはプレーオフに関するコメントはなかったが、ラプターズのディフェンスには警戒心を強めている様子だ。両チームがどのように今後絡んでいくかはわからないが、直接対決の機会は面白い戦いになりそうだ。

 

 

 両チームの次戦は、ラプターズが日本時間2月25日(木=アメリカ時間24日の水曜日)にアウェイでの対マイアミ・ヒート戦を控えており、シクサーズは日本時間翌26日(金=アメリカ時間25日の木曜日)にホームでダラス・マーベリックスとの試合を予定している。

 

 

文/柴田 健(月バス.com)
(月刊バスケットボール)



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