月刊バスケットボール6月号

Bリーグ

2021.02.11

シーズンハイの26得点とエースの貫禄を見せた田中大貴「毎試合、アグレッシブにオフェンスを引っ張っていく意識を持っている」

 2月10日、水曜ナイトゲームでアルバルク東京は千葉ジェッツと激突。2018、19年のファイナリスト同士の対決は終盤の激しいクロスゲームを82-77で制し、A東京が今季22勝目を挙げた。

 

 

東地区のライバル相手に掴んだ

「価値ある大きな一勝」

 

 今季のA東京は、この試合前の時点で21勝13敗と東地区6位。激戦区の中で6割越えの勝率ながらワイルドカードを含めてもチャンピオンシップ圏外と、厳しい戦いを強いられていた。コロナの影響もあり主軸のケビン・ジョーンズとディション・トーマスの合流が遅れ、エナジーあふれる司令塔の小島元基、成長株の小酒部泰暉のケガも重なったことで、なかなか調子をつかめない時期が長かった。

 

 しかし、1月13日の天皇杯3次ラウンドでサンロッカーズ渋谷を打ち破ると、風向きが変化し始める。ブレイク明けに島根スサノオマジックに連勝すると、続く宇都宮ブレックス戦でもリーグ首位クラブを59得点に抑える堅守で勝利。富山グラウジーズとのホームゲームこそ星を分けたが、A東京が波に乗っていることは間違いなかった。

 

 迎えた昨夜の千葉戦。特に第3QまでのA東京の闘いぶりは見事だった。第20節を終えた時点でリーグ2位の平均87.9得点を誇る千葉を相手に、最初の30分間を45失点に抑えたのだ。最終クォーターこそ32失点を喫したが、「今日は、リーグトップを争う千葉を相手に選手たちが本当にタフに戦ってくれました。今までに千葉とは何十回と戦ってきましたが、キーポイントはトランジションオフェンスとオフェンスリバウンドで、そこを抑えることが勝利につながったと思います」とルカ・パヴィチェヴィッチHCは試合を総括。

 

 続けて「千葉と宇都宮はすばらしいコーチングの下でプレーしている上位2クラブです。センターラインにも良い選手がそろっているので、この2クラブに追い付くという意味でも今日の勝利は非常に価値のある大きな一勝でした。対戦相手に関係なく目先の試合を一つでも多く勝ってどんどんゲーム差を縮めていきたい、チャンピオンシップに出られるように懸命な努力をしていきたいと思います」と千葉への勝利に安堵するとともに、さらに気を引き締めた。

 

 

オフェンスをけん引し

エースの役目を全うした田中大貴

 

 パヴィチェヴィッチHCの言葉にもあるように、この一戦を勝ちきった最大の要因は千葉のペースで試合をさせなかったこと。すなわちディフェンスだ。一方で後半だけで53得点を記録したオフェンス面も評価は高いのではないだろうか。

 

 特に第3Qは拮抗した状況から29-17と大きく突き放すことに成功し、この戦いぶりが勝利を手繰り寄せたと言っても過言ではない。そして、この時間帯で存在感を示したのが田中大貴だった。この試合では第3Qだけで放った3Pシュート4本全てを沈め、14得点を集中。シーズンハイのトータル26得点を稼ぎ、エースの仕事を全うした。

 

 エースとは、この日の田中のように重要な局面でチームを導ける選手のことを言うのではないだろうか。

 

 そう思えるほどに、この試合における田中の活躍はエースと呼ぶにふさわしいものだった。「毎試合、自分がアグレッシブにオフェンスを引っ張っていく意識を持っています。その中でうまくいく日、いかない日がありますが、そういう姿勢を失わずに点が取れなかったとしても良いオフェンスをクリエイトできるよう、アシストなどが増えてくればいいなと思っています。今日に関して言えばシュートタッチが良かったので積極的に狙いにいって、それが形になって良かったです」と田中。

 

 点を取りに行くことを第一に考えつつ、適材適所でチームのために役割を変える。今季は主力の離脱も多い中で、より柔軟にプレーしている印象も受ける。事実、平均アシストはリーグ10位の5.0本(トータル170本は同7位)で、この試合でも効果的に得点を重ねつつもアベレージ同様に5アシストを記録した(この試合でB1通算1000アシストを達成!)

 

田中大貴(A東京)がB1通算1,000アシストを達成

 

 振り返れば、エンジンをかけるきっかけにもなった天皇杯3次ラウンドでブザービーターを沈めたのも田中だった。アルバルク東京をけん引するエースは、これから先のシーズンでより存在感を増してくるはずだ。

 

写真/松村健人

取材・文/堀内涼(月刊バスケットボール)



PICK UP