月刊バスケットボール5月号

Bリーグ

2021.02.01

今季初のスタメン起用となったジョシュ・ダンカン(千葉)「自分の努力が100%出せた試合だった」

 6thマンにはベンチからの出場で試合の流れを変えるゲームチェンジャー役の選手もいれば、セカンドユニットの中心としてスターター同様の安定感をもたらし、チームに貢献するタイプの選手もいる。

 

 千葉ジェッツの6thマン、ジョシュ・ダンカンは後者だ。

 

 今季は第 19節・大阪エヴェッサとの第1戦終了時点で、出場した30試合全てでベンチから登場し、平均12.9得点。その中で2桁得点が20試合(内20得点以上が4試合)という抜群の安定感で、千葉のベンチに厚みをもたらしている。

 

 

ダンカンは大野HCにとって“一番の心の拠り所”

 

 そんなダンカンが1月31日の大阪との第2戦で今季初のスターターを務めた。原修太と佐藤卓磨をスターターに入れ、ディフェンスのインテンシティを上げたかったという戦術的な組み合わせ、そして「自分たちのバスケットがなかなかできない中で、何か(雰囲気を変える)きっかけを探さないといけかったので、スタートを変える決断をした」という大野篤史HCの思いからダンカンを組み込むに至ったのだ。そもそも大野HCはなぜダンカンを頑なにスターター起用しなかったのか。試合後の会見でそのことを尋ねると、このような答えが返ってきた。

 

「(ダンカンを)後半でスタメンに入れることなどはあったんですけど、それよりも彼の安定感が僕の中では一番の心の拠り所のような感じがあって。彼はどこで出てもしっかりと仕事をしてくれる選手なので、あえて6thマンとして起用していました。(ベンチ起用していたのは)彼のプレーがほかの選手よりも劣っているからではなくて、試合全体の中で彼が必要な時間帯にしっかりと出すことを意識していたからです」

 

 辛口コメントも多い印象がある大野HCがここまで称賛するということが、ダンカンの存在が千葉にとってどれほど大きなのものかを物語っている。

 

 NBAでもそうだ。かつてサンアントニオ・スパーズでチャンピオンリング獲得に大きく貢献したマヌ・ジノビリやゴールデンステイト・ウォリアーズで王朝を築いたキーメンバーの一人、アンドレ・イグダーラもオールスター級の実力がありながらチームバランスを考慮してセカンドユニットの一員としてプレーしていた。強いチームには必ずすばらしい6thマンがいるのだ。

 

 

今季初のスタメン起用にも動じず

チームハイの19得点

 

 リーグは違えどダンカンも彼らと同様の立ち位置にあり、大野HCの考えもしっかりと理解している。「スタートでもベンチでもマインドセットは変わらずプレーしています。(今日の試合が)今季の初スターター出場でしたが、長いキャリアの中でスタートで出ることもありましたし、ベンチから出ることもあったので、しっかりとそこはアジャストしています」とダンカン。

 

 いつもと変わらぬ気持ちで挑んだこの試合でも、普段通り序盤からコンスタントに得点。接戦となった終盤ではオフェンスリバウンドでも貢献し、果敢なアタックで大阪から多くのファウルを引き出しフリースローを確実に沈めていった。「昨日の負けがあったので、それがモチベーションにもなって今日はやること全てにおいてアグレッシブにプレーしようと思っていました。もちろん自分だけの努力ではなくて、チームの努力が実になったことで勝利につながったと思います。個人としてはプレーの出来が100%というよりも努力が100%出せた試合でした」と、ダンカン。

 

 キャリア13年を誇るベテランがここ一番で指揮官の期待に応え、チームを救う活躍を見せた。千葉の強さの根底にあるのは圧倒的な選手層の厚さと、それをまとめ上げる大野HCを筆頭とするコーチングスタッフの統率力、そんなチームの背中を押すアツいブースターの存在だ。

 

 そして、そのチームの屋台骨を支える一人がジョシュ・ダンカンなのである。

 

 

写真/B.LEAGUE

取材・文/堀内涼(月刊バスケットボール)



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