月刊バスケットボール6月号

NBA

2021.01.28

ジョン・ウォールのトラッシュトークに込められた思い - That’s what two competitive guys do(気のツエエのが2人寄ればこうなるってやつ)

 

 アメリカ現地時間1月26日に行われたヒューストン・ロケッツとワシントン・ウィザーズの一戦は、ジョン・ウォールというウィザーズに過去10シーズン在籍したスターがロケッツのユニフォームを着て古巣を迎え撃つという点で特別な意味のある試合だった。ウィザーズ側にはロケッツから獲得したラッセル・ウエストブルックがおり、そしてウォールが長年バックコート・タンデムを組んできた相棒のブラッドリー・ビールもいるのであって、両者とウォールのマッチアップで何が起きるか、またそれぞれのプレーヤーがどんな数字をたたき出すのか、試合前から注目されて当然だ。
見る側のそんな期待を彼らは裏切らなかった。ウォールは24得点に5アシストでロケッツを107-88の勝利に導いた。一方敗れたウィザーズも、ウエストブルックは19得点、11リバウンドに7アシストを記録し、ビールはゲームハイの33得点に5リバウンド、4アシストと持ち味は発揮していた。
彼らの激突は、特にトレードの当事者同士だったウォールとウエストブルックの間で熱を帯び、第4Qにはトラッシュトーク合戦で両者ともテクニカルファウルを食らってしまった。試合後の会見で、そのときのやり取りで何を話したのかを聞かれたウォールは淡々とこう答えている。「気のツエエのが2人寄ればこうなるってやつですよ(That’s what two competitive guys do)」
具体的に何を話したのかは明かさなかった。たぶん、話せないような言葉遣いだったのかも…とも想像するわけだが、一連のコメントの流れには、そこまでアツくなってしまった要因も含まれていた。「トラッシュトーク…気のツエエのが2人寄ればこうなるってやつですよ。わかりますよね。ラス(ウエストブルックの愛称)には何年もやられ続けてるんでね。リーグに入って以来これで勝ったのは3度目だと思います。何しろスゴい能力の持ち主ですから」
ウォールはいつも非常に早口で淡々と話す。流れるような口調で語られた英文は以下のようなものだったが、なるほどそうなのか。
“Trash talking…, I mean that’s what two competitive guys do. You know I mean, Russ’s been kicking my ass for years. This is only my third win I think against Russ since I’ve been in the league so…, I mean he’s a hell of a talent.”
調べてみると、この日を含めて過去にウォールとウエストブルックは14度対戦しており、確かにウォールはこれが3勝目。大きく負け越しており、悔しかったに違いない。
ただ、ウォールはコメント全体の中で、ウエストブルックに対してある意味でケジメをつけている。ウエストブルックはケガをしていたんだし(自身も故障明けだが)、お互いチームをけん引しようと必死だっただけなのだと、個人的な恨みなどないしトレード関連の感情とも無関係であることを直後に明言したのだ。
ウォールの魅力はこういった潔さにもあると思う。行儀のよい優等生ではないが、図太く、激しく、やるときは徹底的にやる。
両チームの次戦はアメリカ現地時間2月15日(月)の夜(日本時間16日火曜日朝)。ウォールにとって、ウィザーズ以外のジャージーでキャピタルワン・アリーナに登場する初めての機会となる。

 

文/柴田 健(月バス.com)

(月刊バスケットボール)



PICK UP