月刊バスケットボール6月号

NBA

2021.01.23

I think I suck right now(今の僕はサイテーだと思ってます) - 自らの出来に“眉をひそめる”アンソニー・デイビス

 

 昨シーズンのレギュラーシーズンでリーグ最高成績を収めたミルウォーキー・バックスを113-106で下したディフェンディング・チャンピオンのロサンジェルス・レイカーズは、ここまでの16試合を12勝4敗としている。これはロサンジェルス・クリッパーズとユタ・ジャズ(ともに11勝4敗)を勝ち星一つ分上回るリーグ全体の最高成績だ。
にもかかわらず主力の一人であるアンソニー・デイビスの試合後会見の言葉は今一つさえない…というよりももっと厳しく自分を責めるようなコメントを残していた。しかし本人が「今の僕はサイテーだと思ってます(I think I suck right now)」と言うほどのプレーぶりだっただろうか。
この日のデイビスは18得点、9リバウンド、6アシスト、2ブロックに1スティール。普通ならば悪くない数字に見える。実際今シーズンのアベレージ――14試合に出場して平均21.1得点(FG成功率52.5%、3P成功率35.1%)、9.0リバウンド、3.6アシスト、1.9ブロック――と大きな差があるようには見えない。
ただ、後半だけに限ると得点は5にとどまっていた。しかもそれはすべて第3Qに記録しており、最終クォーターは無得点でリバウンドも1本のみだったのだ。緊迫した展開が続いた試合で、昨シーズンと一昨シーズンにMVPに輝いたヤニス・アデトクンポ(昨シーズンは最優秀ディフェンシブ・プレーヤー賞も受賞)とマッチアップしたデイビスにしてみれば、最も自分の価値をアピールしたい時間帯で思うようなプレーができなかったのがよほど悔しかったのだろう。
ただ、デイビスは感情的になっていたわけではなく、冷静に自身のプレーを分析していた。「今は僕自身、自分に対して厳しくなっています。今の僕はサイテーです。シュートが入らないし、フリースローもダメです。でも、積極的になれたことでポストに入ったりペイントに攻め込んだりして、仲間たちにオープンスペースを生むことはできたと思います」
一連の流れを実際にデイビス自身がどのように表現していたかと言うと、以下のようなものだった。
“Right now I’m so hard on myself, man. I think I suck right now. I’m not making the shots. I’m not making free throws. But, I think tonight my aggressiveness, you know, just being the post and getting to the paint, you know, allowed guys to get open.”
最後を前向きな言葉でまとめてくれていてホッとする。それに、第4Qにも大事なところでアシスト3本を記録しており、“ダメダメ”な終わり方ではなかったのだ。
デイビスは別のやり取りで、アデトクンポが優秀な存在で昨シーズンの最優秀ディフェンシブ・プレーヤー受賞に値する存在であることも明言していた。このあたりが成熟した人柄を感じさせるし、伝統あるフランチャイズの未来を背負う立場やディフェンディング・チャンピオンとしての誇りを自覚していることも伝わってくる。
レイカーズは現時点で17度リーグ制覇を成し遂げているが、これはボストン・セルティックスに並ぶ最多タイ記録。もう一つ加えて文句なくリーグ最強フランチャイズの称号を手にしたいはずだ。それにはデイビスの活躍が欠かせない。


文/柴田 健(月バス.com)
(月刊バスケットボール)



PICK UP