月刊バスケットボール6月号

NBA

2021.01.22

It just happened, man(こんなことってあるんですね)- 15年前の1月22日、コービー・ブライアントはNBA歴代2位の1試合81得点を記録した

 

 2006年1月22日、ロサンジェルス・レイカーズ対トロント・ラプターズの試合が行われたステイプルズ・センター(アメリカ、ロサンジェルス)は、歴史の舞台となった。レイカーズのコービー・ブライアントが、NBA歴代2位となる1試合81得点を記録したのだ。しかも前半を終えて49-63と14点ビハインドという展開で、追い上げなければならなかった後半に55得点という恐るべきスパートぶり。最終的にチームを122-104の快勝に導いてみせた。
ブライアントの81得点は、1962年にウィルト・チェンバレンが記録した1試合100得点に次ぐ大記録であり、ガードとしては堂々歴代最高記録である。この日以降の1試合最高得点は、デビン・ブッカー(フェニックス・サンズ)が2017年3月24日の対ボストン・セルティックス戦で記録した70得点。このブッカーを含め70得点以上の記録は過去に11回のみで、達成したプレーヤーは6人しかいない(チェンバレンが一人で6度記録している)。
試合後、会見に姿を見せたコービーは穏やかな表情で記者たちからの質問に対応した。「こんなことってあるんですね(It just happened, man)」と話すコービーの口調はそんな大記録を自分でも信じられないといった感じで、興奮冷めやらぬ様子だった。
この「こんなことってあるんですね(It just happened, man)」は、記者からの「過去どれだけさかのぼればこれほど得点した試合があるか」という質問に対する答えの中で出てきた表現。その前後の流れは、以下のように喜びと驚きが混ざったような、幸福感が伝わってくるものだった。
「いやぁ、これまでにはないんじゃないかなと…。夢にも見たことはなかったです。夢にもないですね。何というか…。こんなことってあるんですね。そうなんです。何と言えばよいのか…、わかりません。そんな類いのことですね」
ブライアント自身が発した言葉そのものをできるだけ忠実に書いてみると以下のようになる。
“Never, I didn’t.., I.., not even in my dreams. Not even in my dreams. It is something that just kinda.., It just happened, man.., just happened. It’s tough to explain. It’s just .., I don’t know. Just one of those things.”
ブライアントは質問した記者と特別に親しかったのだろうか。そこまでは調べがつかない。ただ、「It just happened」に続く“man”という単語から少なくとも、「あなたも見ましたよね。こんなのそうそうないですよ」というような、信じられない瞬間を異なる立場ながら共有した者同士の近しさが伝わってくる。後に偉大なレジェンドとなる若き日のスーパースター(当時27歳)とのこんなやりとりは、この記者にとって一生の宝物に違いない。

 輝かしい記録、色褪せない記憶とともに、コービー・ブライアントは永遠の存在だ。

 

文/柴田 健(月バス.com)
(月刊バスケットボール)



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