月刊バスケットボール5月号

Bリーグ

2021.01.13

東山のエースガード米須玲音が特別指定選手として川崎に加入!

 ウインターカップから約2週間。今大会で輝いた一人の若者がBリーグの門をたたいた。

 

 米須玲音。

 

 東山高を率い、チームを大会準優勝に導いた司令塔だ。1月13日、川崎ブレイブサンダースが米須を特別指定選手としてチームに迎え入れることを発表した。

 

背番号は「3」、憧れの並里成(琉球)と同じ背番号を着ける

 

クラブ史上初の現役高校生プレーヤー誕生

 

 1950年のクラブ創部以来、現役高校生をチームに迎え入れるのは川崎にとって初めてのことだ。北卓也GMは「ディフェンスを翻弄するパスセンス、パス1本でファストブレイクを出すプレーなどたくさんの魅力があります。見ている方々を興奮させるプレーヤーだと思っています」と米須を評すると共に、加入の経緯について「2019年をウインターカップの準決勝(福岡第一戦)を見ていて、当時の注目選手は河村勇輝選手(東海大1年)だったのですが、東山にパスがうまい子がいるなというのが私が映像越しで見た米須選手との初対面でした。その後いろいろな情報を集め始めて、昨年のウインターカップ京都府予選の前に大澤(徹也)先生に連絡をして、(他のクラブから)特別指定選手などの声掛けがあるのかを確認しました」と説明。

 

 これまでは『リクルートは大学から』という色が濃かった日本のトップリーグだが、近年は高校生以下のカテゴリーにも優れた選手が多く、川崎も高校生プレーヤーに注目し始めていた。その中で北GMの目に留まったのが米須だったのだ。

 

 見る者を驚かせる天性のパスセンスはもちろん、仙台大明成戦とのウインターカップ決勝終盤に同点に追い付くフリースローを3本決め切った点も、北GMが心を打たれたシーンの一つだったそうだ。

 

 最後の大会に集中させたいという大澤コーチの意向もあり、具体的に特別指定選手として迎え入れるための話が進んだのは大会終了後。米須自身も「ウインターカップが終わって高校バスケを引退した後、自分はどうしていけばいいのかと考えたときに大学に入るまでしっかりと努力する、大学までの期間でしっかりとバスケットをしたいと思っていました。その数ヶ月間で成長できる部分を探すことが必要」と考えていたことから、川崎への加入が実現した。

 

 

長い目で育成し、やがては川崎のフランチャイズプレーヤーに

 

 川崎はリーグでもトップクラブの一つであり、いくら高校界を沸かせた米須とて即戦力となることは現実的ではない。北GMも米須を長い目で育成していく方針を示しており、米須自身も川崎での経験を今後のキャリアにつなげていくことを考えている。進学予定である日本大の大先輩・篠山竜青、タフなディフェンスとアグレッシブさが持ち味の藤井祐眞、フィジカルな司令塔 青木保憲ら同じポジションの選手から多くの学びを得ることができるはず。

 

 この会見時点で、米須がチームに合流して1週間ほどが経過。「数日間ですが練習をしている中で、皆さん練習や試合の中でコミュニケーションを取って楽しんでバスケットをやっているなと思っていて、自分も高校バスケを楽しんでプレーすることを考えてやってきて、その部分は川崎にも共通していて、自分に合っていると感じています」と米須。トップクラブでプレーする中で「体の当たりが全然違うと感じたし、自分が得意とするパスが全然通らない、通すスペースがないと感じています。でも自分がここにいる限りはチャレンジして、自分のパスをどれだけ通用するのかを考えながらプレーしていきたい」とプロの環境に適応している最中だ。

 

早くもブレイブレッドが様になっている

 

 もがきながらも成長を続ける米須の姿を見守りながら、北GMは一つの壮大なビジョンを描いている。それは「(米須を)中長期的に育成していって、最終的には川崎のフランチャイズプレーヤーに、日本を代表する選手になってもらえれば」というものだ。選手として、ヘッドコーチとして、そしてゼネラルマネージャーとしてあらゆる面からクラブを見てきた北GMのこの言葉が、米須に対する期待がどれだけ大きいのかを物語る。

 

 誰にでもB1に挑戦できるチャンスがあるわけではない。狭き門をくぐり抜けてそのスタートラインに立った米須にはティーンエイジャーらしく自分の色を出しながら、プロの環境で多くを吸収して大学以降のキャリアにつなげてもらいたい。

 

 そして、米須自身も口にした大切なことを常に心に秘めておいてもらいたい。その思いは恩師・大澤コーチから寄せられたメッセージの最後にも記されていた。

 

「楽しむことを忘れずに」

 

取材・文・写真/堀内涼(月刊バスケットボール)



PICK UP