月刊バスケットボール6月号

Bリーグ

2021.01.13

【インタビュー】コンパクトな“和製ザイオン”石橋玲音(関東学院大) - B.DREAM PROJECT 2021 PROSPECT

力強いドライブでゴールにアタックする石橋(右)

 

さりげないウォームアップ・ルーティンが目を引いた

 

 この日、メディア受付開始早々に手続きを済ませた私は、誰もいないトライアウト会場の取材場所で一人腰かけて時を費やしていた。しばらくするとプレーヤーたちの最初の一群が姿を見せ、コート上が徐々に騒々しくなる。
最初のレポートで記したとおり、ここに集まったプレーヤーに魅力のない者はいない。しかし、逆に飛びぬけて圧倒的なモンスターもいない。そんな中で注目すべきはどのプレーヤーか。
こんなとき、一つの指標としてウォームアップのルーティンに注目している。必ずしもそのプレーヤーの評価を決するポイントではないだろうが、目的意識を感じられるルーティンは、そのプレーヤーがきちんとした指導を受けてきたことを示す一つのサインだと思うのだ。
コートに姿を現した最初の一群の中に一人、そんなプレーヤーがいた。私から反対側のゴールで、1メートル程度の距離から何度も同じショットを繰り返していた。しばらくすると距離が変わった。続いてそれはスリーのエリアへと移り、最後の方ではドライブでペイントにアタックしてのジャンパー…という流れをたどった。
遠目にもものすごい体つきだった。石橋玲音(22)。関東学院大学に籍を置く187cmのフォワードだ。トライアウトでは最後のスクリメージに選抜された10人に残った。彼の話を聞きたいと思った。


――始まる前にウォームアップを見ていて、きちんとしたルーティンを持っているなと思いました。いつもやっているんですか?
石橋 最初ゴール下から始めるのは、同じフォームで打っていくようにしているんです。いつも、徐々に離れていくという練習をしていて、普段やっていることを今日もやりました。
――自分のプレーを紹介するとしたら、どんなプレーヤーということになりますか?
石橋 一番の武器だと思っているのはフィジカルで、ドライブから最後に相手と接触したときにも負けないでそのままシュートにもっていくのが強みだと思っています。
――目指した選手、あこがれの選手はいましたか?
石橋 NBAだとレブロン・ジェームス(ロサンジェルス・レイカーズ)がずっと好きで。小学生の頃からですね。
――お世話になった人と言えばどんな人が浮かびますか?
石橋 たくさんいるんですよ。ミニバスのコーチも今でもお世話になってますし、高校(アレセイア湘南高校)の監督も進路で相談したりもしてます。特に大学でお世話になった先輩が二人いて、今アースフレンズ東京Zで活躍している選手、群馬(クレインサンダーズ)の練習生で頑張っている選手もいて、面倒を見てもらっています。

 

 多くの師や先輩たちへの恩を感じながらBリーグの舞台を目指す石橋の語り口は物静かで落ち着きがある。スクリメージでの荒々しい姿とは一見好対照だ。
プレーぶりで際立ったのはポストアップでの1対1における抜群の強さ。高い位置でボールを受けてのペイント・アタックも強烈極まりなかった。大きな相手でもガンガンやり合い、押し勝つ。
ただし、やみくもにフィジカルだけで戦うのではなく、見ているとミスマッチになったと思える状況でボールを要求してゴールにアタックするシーンが何度もあった。自分の強みと弱みをわきまえ、落ち着いて状況判断を重ねながら挑む。それはこの場に何をしに来ているのかをきちんと理解しているからこそできることだ。


「2番くらいまでポジションを上げたい」


――将来の夢を教えてください。
石橋 プロを目指そうと思ったきっかけが、横浜ビーコルセアーズの試合を見に行ったことだったので、いつか地元でできたらいいなって思っています。レベルアップしていって…という感じです。
――今の自分に加えたいものは何ですか?
石橋 外のシュートをもうちょっと確率良く決めたいのと、ハンドリングです。自信をもってボールを扱えるようになりたいです。
――今のポジションは3番ですか?
石橋 チーム状況もあって大学までずっとパワーフォワードをやってきたんですけど、Bリーグに入ると(サイズ的に)厳しいので、2番ぐらいまでポジションを上げたいですね。
――今日うまくいったこと、行かなかったことはどんなことでしたか?
石橋 うまくいったのは強いドライブで、ファウルももらえましたし、インサイドでも点を獲れたのが良かったです。悪かったところはスリーが入らなかったのと、ターンオーバーが少し多かったことですね。


鋭い眼光と強靭な肉体の石橋は、本人が好きなプレーヤーとして挙げたレブロンにも共通するものがあるが、ザイオン・ウィリアムソン(ニューオリンズ・ペリカンズ)が一回りコンパクトになったような風貌と言ったほうがより近いように感じた。ドリブルやポンプフェイクにも、ザイオンと同じように「力強い」では言い表しきれない迫力がある。ただしプロでやっていくには、これも本人が話しているとおりロングレンジの決定力やハンドリングを改善して、2番で活躍できるようになるのが理想だろう。
それに必要な努力を積むことができるか。この日の様子だけですべてを判断できるわけもないが、ウォームアップ時のルーティンに賭けてみたくなる。短い時間を無駄にせず準備する姿は、子どもたちに見てほしいプロの姿勢そのものだった。

 

Bリーグ入りに向けた課題の一つに石橋はロングレンジの決定力を挙げた


写真/©B.LEAGUE
取材・文/柴田 健(月バス.com)
(月刊バスケットボール)



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