月刊バスケットボール5月号

Bリーグ

2021.01.12

【インタビュー】茶目っ気と豪快さが魅力の16歳スイングマン、介川アンソニー翔 - B.DREAM PROJECT 2021 PROSPECT

介川のスケールの大きなプレーぶりはポテンシャルにあふれていた

 

幻のトマホーク・ダンク

 

 B.DREAM PROJECT2日目、参加した100人のプレーヤーからの選抜メンバーによるスクリメージ。コートレベルよりも1階層上の取材スペースのバックボード斜め後方から観戦していると、ブレイクでコートの反対側から介川アンソニー翔がボールを運んできた。加速してペイントに侵入する介川の前に、戻りの早いディフェンダーが横から立ちはだかる。しかし介川は構わず空中に飛び上がり、わずか数メートル先で見ていた私の高さまで届きそうな勢いでゴールに襲い掛かった。
トマホーク! そう思った瞬間、空中でディフェンダーとのコンタクトが起こり“ハイライトフィルム”は生まれなかった。しかし、これはこの日最も迫力に満ちたシーンの一つだった。
16歳の193cm。しかもあのしなやかな運動能力と、能力の高い大人のビッグマンが待ち構えるペイント上空を豪快に滑空していこうとする意気込み。どんな少年なのか知りたくなって当然だ。
スクリメージが終わった後、インタビューの時間をもらうことができた。もじゃもじゃのドレッドの下からこちらをのぞく澄んだ瞳が凛々しい。介川はソーシャル・ディスタンスに配慮した距離に置かれた椅子に腰かけ、にこやかに会話につきあってくれた。


――所属にはアメリカの学校が書かれていますが、日本にお住いなんですか?
介川 はい、東京です。生まれたのも東京で、中2からアメリカのサンディエゴに留学していました。
――日本語と英語とどちらが楽ですか?
介川 今はどちらでも。以前は日本語のほうが得意だったんですけど、アメリカに行って英語も慣れちゃって、同じぐらいです。
――自分のプレーを紹介するとしたら、どんなプレーヤーということになりますか?
介川 身長が高くてボールもつけて、スリーも打てて、ディフェンスもしっかりやる。全体的にできるプレーヤーです。
――オールラウンダーという感じですか?
介川 はい、そうですね。
――その中でも一番得意なのは何でしょうか?
介川 一番と言えばドライブかスリーです。
――今日、ダンクが出ませんでしたね…。最後の方で惜しいところがあったと思いますが。
介川 ええ、あのときはダンクに行こうとしたんですけど、思っていたよりも(踏み切ったスポットが)遠くて(笑) 


しかもレイアップにしようとしたらヘルプが来ちゃってうまくいかなかった…と素直に説明する介川の反応は、伸びやかであとくされがない。若いからというのもあるのだろうか。朗らかで謙虚になりすぎずいや味がないのだ。強烈なプレーぶりや大柄な外見からは想像しづらい、親しみやすい人柄が伝わってくる。プレーの迫力も含め、どことなくシャキール・オニール(元ロサンジェルス・レイカーズ他)の息子で現在ルイジアナ州立大2年生のシャリーフ・オニールのような雰囲気もある。

 

兄と一緒にBリーグの舞台へ

 

――好きな選手はいますか?
介川 今大学生のケイド・カニングハムという選手(オクラホマ州大1年生で2021NBAドラフトにアーリーエントリーする可能性が示唆されている)です。モンテバード高校でプレーしていた選手で、僕ぐらいの身長…、ちょっとデカいぐらい(203cm)だけど、すごくガードみたいな動きをするので、彼を真似しようとしています。
――お世話になった人と言えばどんな人が浮かびますか?
介川 僕はちっちゃい頃からずっと兄貴(B.DREAMに一緒に参加していた介川アンドレー)とバスケを一緒にやってきました。兄貴は暇さえあれば1対1をやってくれて、そこでドリブルとかもできるようになったと思います。
――それは素晴らしいですね。二人そろってプロになれたらいいですね。
介川 はい、それが夢です。
――その夢についてもう少し教えてください。
介川 大学に行ってからBリーグに入りたいですね。そこで活躍できたらNBAも目指したいです。
――NBAも視野に入っているんですね!
介川 はい、もしBリーグで活躍できたらの話ですが、その次は…!
――今の自分に加えたいものは何ですか?
介川 以前からのことなんですけど、もっと筋肉をつけたいです。Bリーガーはみんな筋肉がついていてすごいので、もっと食べて筋肉をつけようと努力していますよ。ハンドリングも、もっともっと、もっと…! 今よりもうんとうまい選手になりたいです。シュートもですね。
――今はどんな環境でプレーしているんですか?
介川 今はコロナであまり体育館に行けていないんです。ただ、夜に自宅近くの市民体育館とかで友達や兄貴と一緒に、暇さえあればやっています。
――どこかに所属してということではないんですか?
介川 ないです。そういう練習はしていないですね。個人練習で1年間やっています。
――今日うまくいったこと、行かなかったことを教えてください。
介川 うまくできたことは自分らしいドライブや、オープンの人を見つけてパスすること。ブロックも何本かあり、ディフェンスもしっかりできました。自分の実力を発揮できなかったところはシュートですね。スリーをあまり見せられませんでした。
――普段の武器が出なかったんですね。
介川 はい、もう全然で…。
――今度見るときはそこですね。
介川 そうですね。もっと頑張りたいです。
――ダンクも…! あれは来ると思ったんですけど、惜しかったですね…
介川 えっへっへ…ありがとうございます!


屈託のない明るい声と会話のテンポの良さで、話していると楽しくなってくる。今でもデカいが、さらにすくすく育ってほしい。

 言葉に込められた意欲を形にできるのはいつ頃か…? チーム練習なしであれだけのプレーを見せる介川のポテンシャルの高さに疑いの余地はない。となると、成長曲線に大きく影響するだろう一つの要素として、今後どのような環境に身を置くかが重要になってきそうだ。そのあたりは邪魔にならないように見守らせてもらいたい。
より大きく、うまく、強く。課題はたくさんあるが、あまり遠くない将来、今回は幻に終わった介川のトマホークをBリーグの舞台で見られることを期待する。お兄さんともども人気が出そうだ。NBAに行く前にたくさん楽しませてもらわなければ。

 

 

サイズだけではなく、フルコートを何度も行き来した後にも悠々と空中を滑空できる運動能力も大きな魅力


写真/©B.LEAGUE
取材・文/柴田 健(月バス.com)
(月刊バスケットボール)



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