月刊バスケットボール5月号

Bリーグ

2021.01.07

東海大をインカレ優勝に導いた津屋一球がBリーグで活躍中

 

 東海大の陸川章コーチから“東海大の魂”と評された津屋一球は、昨年のインカレでキャプテンとしてチームを2年ぶり6回目の優勝に導いた熱い男だ。その津屋が、12月18日、三遠ネオフェニックスに特別指定選手として入団し、現在、Bリーガーとなって活躍している。

 

 津屋のプロデビューは、2020年12月20日、新潟との第2戦だった。1Qの残り1分49秒、太田敦也に代わってコートインし、いきなりサーディ・ラベナの3Pシュートをお膳立てするアシストを決め、さらに2Qの1分半過ぎにはネナド・ミリェノヴィッチのアシストでディープスリーを沈めてプロ初得点をマーク。すると場内には「津屋ってる~(つやってる~)」の声援が……。結局、出場時間11分55秒、6得点(3Pシュート2本)、2アシストでデビュー戦を終えた。

 

 その後の試合でも確実に出場機会を得て戦力となっている津屋にとって、2021年、最初の対戦相手はサンロッカーズ渋谷(1月2日、3日)だった。渋谷にはベンドラメ礼生ら3人の東海大の先輩たちがおり、楽しみな一戦でもあった。ところが、三遠はアクシデントが続く。第1戦ではラベナが右第4指中手骨斜骨折で戦線離脱。しかもブザービーターの逆転負けを喫すると、第2戦ではステヴァン・イェロヴァッツが右足を痛めてベンチへ。厳しい戦いを余儀なくされた。

 

 外国籍選手のケガもあり、津屋の出場時間は23分57秒。これまでの中で最長となったものの、リングに嫌われてなかなか得意の3Pシュートが決まらない。しかし、決して下を向くことなくリングにアタックし、リバウンドに飛びついた。

 

 試合後、三遠のブラフニスラフ・ヴィチェンティッチHCは、津屋について「とても才能のある、ポテンシャルのある選手だと思っています。練習中からとてもハードワークしている選手で、1年目の難しさがある中でサーディ・ラベナと共に中心となっていますし、ネオフェニックスの将来を背負っていく選手になってほしい」とコメントした。

 

 また、先輩のベンドラメ礼生にも津屋のプレーについて聞いてみた。「最後まで頑張れる選手。どんな状況でもしっかりボールにハッスルできて、全力でプレーできるというのはすごく大事なことだと思います。彼はコートに出ている間、相手が外国籍選手であろうと積極的にリバウンドを取りに行くし、ボールを持ったら積極的にリングにアタックしていました。そういう姿勢を持っている選手は、チームにとって大事な存在です。たとえシュートが入らなくてもそれを続けるというのはチーム内に伝染するので、チームに一人は必ずいてほしい頼れる選手、彼を見てすごくいい選手だなと思いました。これからは彼が三遠に流れを持ってくる時間帯、試合が増えてくるんじゃないかというのは感じましたね」と、後輩のプレーを讃えた。

 

 渋谷戦を終えた直後、津屋に自身のプレーについて聞いてみた

 

まず今日(第2戦)の試合を振り返ってください。

 渋谷のアグレッシブなディフェンスに自分らが引いてしまって、その結果あの点差(64-105)になったと思います。個人的には3Pシュートが得意なので、チャンスがあったら打っていこうと思っていましたし、先輩たちも「打て、打て」と言ってくれるので、今日は確率がすごく悪かったんですけど、(2本)決めることができたのは良かったです。

 

これまで出場した5試合を振り返っての感想と、今後の課題について教えてください。

 チームのルール、ディフェンスの守り方など、それをしっかり理解してなるべく早く信頼してもらえるようにしたいと思います。その中でディフェンスからアグレッシブにプレーすることを個人的に目標にしていたので、それはこれまでの試合で体現できていたのかなと思います。でもやっぱり先ほど言ったように3Pシュートを得意としていて、打たしてもらっている中、昨日と新潟戦は良かったんですけど、それ以外ではちゃんと決め切れていないので、これからはチームのプラスになるシュートをしっかり決め切れる選手にならなければとはすごく感じています。

 

 

試合中、スローインなどでパスカットされることもありましたが、その辺についてはどう思いますか?

 まだまだです。チームのルールは頭には入れていますが、実際に体でやるのとは違います。そこは先輩たちとのコミュニケーションがまだ足りていないのでミスが起きるし、完全に自分が悪いミスもたくさんあったので、自分のプレータイムが少ない状況でターンオーバー0を意識してしっかりやっていかなければと思いました。

 

大学の先輩であるベンドラメ選手たちと対戦して感じたことはありますか?

 レオさん、関野(剛平)さん、石井(講祐)さんとか、実際にマッチアップさせてもらって、映像でしか見たことがなかった先輩たちなので、マッチアップした時はすごく感慨深いものがありました。実際に付いてみて、自分のレベルがまだまだだというのをすごく感じました。特にディフェンスのアグレッシブさ。自分もそれをモットーにしているのですが、それ以上に圧がすごかったです。状況判断なども本当に優れています。自分はまだルーキーですけど、これからいろいろな先輩たちとマッチアップしていく中でそういったことをしっかり学んで、成長していきたいとすごく思いました。

 

昨日と今日では何が違ったと感じましたか?

 昨日の負け方(ブザービーターでの敗戦)もありますし、今日の午前中にミーティングをして、チームが一つにならないとだめだというのをみんなが理解して、そんなに悪い雰囲気ではなかったんです。でも、ゲームになった時に人任せになる部分が昨日より今日の方が多かったのかなとすごく思います。自分は新人なので、言えないという感じもありましたが、今日の試合でそれではだめだと思いました。自分のミス、チームのミスを減らすためにも自分から積極的にコミュニケーションを取りに行く必要を感じました。渋谷も昨日の前半は良くなかったと思うんですけど、それをしっかり修正してきていましたから。自分らはそれ以上に準備をしないといけないと思います。

 

では最後にお聞きします。先ほどチームのプラスになるシュートを決められるようになりたいとおっしゃいましたが、得意の3Pシュート以外でこれから会得したいプレーは何ですか?

 大雑把ですけど、ピックを使ったあとのドライブなど、最近できるようになってきました。大学の留学生とは違って、Bリーグの外国籍選手はNBAの経験や、ユーロリーグの経験があるから、すごくレベルが高くてブロックショットがうまい選手が多い。そういう選手がブロックに飛んでくるのに対してアシストパスを出したり、フローターシュートや、浮かせるレイアップシュートに持っていけるようにしたいです。アルバルク東京の田中大貴さんのように、自分もそういうプレーをもっとできるようになりたいです。

 

 

津屋 一球(つや・かずま)

1998年6月7日生まれ(22歳)/190cm/90kg/シューティングガード/青森県出身/津軽中→洛南高→東海大(2021年3月卒業)/全国ミニバス大会を皮切りに、都道府県対抗ジュニアオールスター、インターハイ、ウインターカップ、国体など国内のビッグゲームだけでなく、高校3年時に出場した第24回FIBA ASIA U18男子バスケットボール選手権大会(2016年/準優勝)をはじめ、FIBA U19 バスケットボールワールドカップ(2017年/10位)など国際大会でも活躍。さらに聴覚障害者による第3回U21デフバスケットボール世界選手権(2018年)では日本を準優勝に導き、MVP、得点王に輝いた。昨年末のインカレ後には、Bリーグの三遠ネオフェニックスに特別指定選手として入団し、プロのコートで存在感を放っている。

 

写真/B.LEAGUE

取材・文/飯塚友子



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