月刊バスケットボール5月号

中学(U15)

2021.01.06

【Jr.ウインターカップ】公立中学校の部活チーム唯一の4強入り、秋田市立城南中の強さ


城南は今大会2回戦でLINK(鹿児島)を68-57で、3回戦で倉敷市立南中学校(岡山)を92-74で、そして準々決勝ではEternity(栃木)を66-56で破った

 

 大詰めを迎え男女4強が出そろった今大会、公立中学校の部活チームが一つだけ残っている。男子の秋田市立城南中学校(以下城南)だ。中体連の部活チーム、プロのユースクラブ、地域クラブがそれぞれの立場を尊重しながら腕試しする大舞台。栄田直宏HCは「互いに敬意を払いながら目の前のことを一生懸命やろう」という思いで臨んだという。必ずしも思い通りの人材が集まる環境ではないが、「今持っている実力を発揮して結束力でカバーすることを重んじてやるしかないので、それを貫いた」ことが好結果につながっている。

 

 強さはメンタルだけではない。「自分たちのボールになったらきちんと得点できないとバスケットボールは面白くありません。今集まっている選手はすごく能力もポテンシャルもある子たちなので、(そう感じてもらえるように)戦術面、個人の技術面、コンビネーションは磨いてきたつもりです」と栄田HCは話す。インバウンド時のプレーコール、きちんとパワーポジションでスクエアアップする1対1、コート上の5人が小気味よくカットを繰り返すチームオフェンス、体を張ったディフェンス。どれもチームの意志を体現している。加えて、「ミドルレンジは一番練習していると思ってます」と栄田HCが自信を見せるシューテイングも目を引く。「フリースローと同じくらいのショートコーナー、エルボーやウイングの一歩手前あたりのショットは相当鍛えているつもり」だという。

 

3回戦の対倉敷市立南中学校戦で力強いドライブを仕掛ける小川。3試合で計92得点を荒稼ぎしている

 

 今大会ではスターターは#4中野珠斗、#5小川瑛次郎、#6佐々木 陸、#7高山翔弥、#8高橋峻大で固定し、#9高山凌弥と#10金 佑将がベンチから登場している。主軸はチーム最長身の184cmで最大の得点源として、またリバウンドの柱として活躍する小川と、2番目に大きな181cmで複数ポジションをこなしチームをコントロールする佐々木だ。この二人でチーム得点(今大会平均75.3)の65.9%を稼いでいる(小川が平均30.7得点、佐々木が平均19.0得点)。

 

 佐々木は月刊バスケットボール2018年6月号の全国ミニバス交歓会レポートで、秋田県代表の能代ブルーインズの主軸として取り上げたプレーヤー。当時よりも逞しく落ち着いたリーダーに成長した。多くの場合インバウンドの役割を任され、あるいはここぞという場面ではインバウンドのプレーコールでフィニッシャーにもなる。ボール運びからポストアップまで、まさしくオールラウンドにこなす。

 

 「人を押しのけても自分がトップに、という感じではなかったですけど、いなきゃダメなんです。大事な、大事なプレーヤーでした」とミニバス時代の佐々木を振り返るのは能代ブルーインズの石井恭子総監督。「(城南は)力のある選手がそろっているだけに、バラバラにならないようにまとめる人が必要だと思うんです。だからこそ陸が中心にいてほしいんですよね」と、地元秋田県から温かな声援の言葉を送る。

 

 実は準々決勝の終盤、その佐々木が故障でベンチに下がるアクシデントが起きてしまった。様態が気になる一方、チームプレーと結束力が試される状況だ。結果とは別に、コンディションの好転とチームとしての全力プレーに期待したい。

 

準々決勝の対Eternity戦でミドルジャンパーを放つ佐々木。城南になくてはならない存在だ


会場現地取材/高木希武(月刊バスケットボール) 秋田県取材・文/柴田 健(月バス.com)
(月刊バスケットボール)



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