【Jr.ウインターカップ】選手から指導者へ、秋葉真司(三河U15)の挑戦
Jr.ウインターカップ2日目。1回戦で尚学館中(宮崎)を破って2回戦に駒を進めたシーホース三河U15は香川代表のVerde Marugameと対戦。序盤からロースコアな試合展開ながらもジワジワと点差を開き、49-36で3回戦進出を決めた。
順調な滑り出しを見せた三河U15のベンチには見慣れた元選手の姿があった。現在、ユースチームのアシスタントコーチを務める秋葉真司だ。現役時代にはアースフレンズ東京Zやサンロッカーズ渋谷でプレー経験を持つ秋葉は、2019年11月に三河アカデミーコーチとして指導者に転身。第一回のJr.ウインターカップにコーチとして参加している。今回はそんな秋葉“コーチ”に話を聞いた。
伊良部勝志HC(右)とともにシーホース三河U15を指揮する
“戦える選手”を育てていきたい
無事に3回戦進出となりました。おめでとうございます。選手からコーチに転向しての全国大会となりますが、どのような思いでこの大会に臨んでいますか?
ありがとうございます。僕自身としては正直、こういう会場の雰囲気に慣れている部分があります。でも、選手たちはそうではありません。そこをいかに(選手たちと)同じ気持ち、目線に立ってあげられるかがサポートする身として大事かなと思って大会に臨んでいます。昨日の試合もそうだったんですけど、大きな体育館で試合をするので選手たちは緊張してしまうんです。心の部分のケアがすごく大事だなと感じています。難しいなって。
秋葉コーチとしてはこの雰囲気は逆に懐かしいのではありませんか?
そうですね(笑)。プロのときは4面そろうことはほとんどありませんでしたが、ウインターカップとかの雰囲気を思い出して、『本当に久しぶりだな、懐かしいな』って思います。
コーチに転向して選手目線では見えなかった部分が見えてきたということはありますか?
今、コーチになって1年ちょっと経ちました。まだまだ僕自身がコーチとして未熟なんですけど、自分が彼らと同じ年齢だったときと比べるとすごいバスケットのスキルが高いし、選手たちに入ってくる情報量もすごく多いです。ただ、得た情報からまねることは誰にでもできることなので、(元選手として)ユースチームの子たちには『そのプレーがなぜあるのか? なぜこのプレーをやるべきなのか?』という『なぜ?』の部分を伝えられるんじゃないかなと思っているんですね。
伝え方であったり、言葉のかみ砕き方はまだまだだなって感じていますし、感覚の部分をいかに言語化して伝えらえるかというところに苦戦しています。日々勉強しながらですし、逆に選手たちから教えてもらうことが多いかもしれません。例えば、僕が伝えた言葉や表現に対して選手から「今のってどういう意味ですか?」と聞かれたりしたときに『あ、今の表現だと伝わらないのか』とか。それに対してどこが分からなかったのかを僕自身も正直に(選手たちに)聞くべきだなと感じますね。
伝えたいことがあってもなかなか言葉に出てこないんですよ。感覚の部分ってバスケットにはどうしてもあるじゃないですか。僕の中では感覚で当たり前のことでも子どもたちにとってはそうではないこともあるので、いかに自分自身が選手に寄り添っていけるかが大事かなと思いますね。
選手だったからこそ分かる部分をコーチとして若い世代に還元している
自身もまだまだお若いですが、練習中は選手たちに混じってプレーすることもありますか?
ありますね! チーム練習の前にスキル系のワークアウトの時間を別で設けていて、僕がそこの担当をやらせてもらっています。そこで見本を見せたりぶつかり合いの練習とかは、僕の方がまだ体が強いのでそういうときに混じったりはしています。
コーチとしてどんな選手を育成していきたいですか?
まず、指導する際に技術ももちろん教えるんですけど、それよりも心の部分が大事かなと感じています。僕自身、選手時代に主力として長い時間プレーしている時期もあれば、長い時間をベンチで過ごす経験もしてきました。今日もベンチに座っている子たちの心の持ち方をそれぞれに考えてほしいと思っていたし、逆に試合に出ているメンバーに関しては“戦う” というところを意識してほしかったです。勝ち負けももちろんありますけど、それ以前にまずはいかに戦えるか、その中で技術が出てこないといけません。スキルで戦うのではなくて、戦いの中でスキルが発揮されるが重要で、それを選手には伝えていきたいです。“戦える選手”を育てていきたいですね。
今、中学や高校では選手個人の役割がたくさんあります。それは(育成のために)一つの役割に限定していないからです。でも、カテゴリーが上がっていけばいくほど、選手それぞれの役割が明確になってきます。そうなったときのために今はいかに個を育てられるか、そしてその個をチームの中で、組織の中で生かせる人材を輩出するためにも、戦える選手を育てるというのがすごく大事な部分かなと思いますね。
まずは戦う意識付けということですね。
はい。スキルがあっても戦えない子もいるんです。そういう選手が戦えるようになっていってほしいです。その中で負けるのは仕方のないことですし、勝ち負け以前にまずは戦える選手を育てていきたいです。
U15のカテゴリーは心身ともに最も成長する時期だと思います。指導していて楽しさもあるのではありませんか?
いやあ、楽しいですね。昨日言ったことがもう今日できているということもありますし、逆に『これはできそうなのにできないんだ』ということもあったりして。心も体も成長している途中なので、できる、できないよりも今の時点では知っているか知っていないかが大切だと思うんですよ。「これ知ってる、なんか見たことある!」とか、そういうのが大事じゃないかなって。
では、最後にこの大会の目標を教えてください。
僕らコーチ陣としての目標は明確にはありません。というのも、今大会は選手たち自身に目標を設定させていて、彼らの目標は『まずは1戦1戦勝つこと』。その中で日本一を目指していきたいと言っているので、僕たちとしてはそのサポートをすること。僕個人としては彼らにしっかりと寄り添っていくことが目標です。今日の試合に関しては『選手たちを信じる』というのをテーマとして掲げていたので、試合ごとにこういったテーマを掲げて、僕自身もチャレンジしていきたいと思います。
写真/JBA、B.LEAGUE
取材・文/堀内涼(月刊バスケットボール)