月刊バスケットボール6月号

【ウインターカップ2020】岐阜女、受け継がれる挑戦者の心

 

岐阜女が無念のベスト16敗退…受け継がれる挑戦者の心

 

今回のウインターカップに向け、紺色ベースの伝統のユニフォームから、挑戦者の気持ちでデザインやカラーを一新した岐阜女。優勝候補・桜花学園のライバルとして注目され、準優勝だった昨年大会の悔しさを晴らすべく今大会に挑んだ。

 

 

 だが、 3回戦に思わぬ伏兵が潜んでいた。2月の関東新人大会で準優勝だった昭和学院だ。 2年前には同じウインターカップで桜花学園を破った“大物食い”のチームに、岐阜女は最大16点リードしながら、アグレッシブに向かってくる相手に対して流れを奪われる。4Q終盤に逆転を許すと、そのまま流れを引き戻せずに70−67でタイムアップ。無念のベスト16敗退となったのだ。

 

 

「甘さがあったのだと思います」

 

 

 試合後のミックスゾーン、あふれる涙で目を真っ赤にしながら、岐阜女の#4佐藤はそう言葉を絞り出した。大黒柱の#7エスターと2人、昨年からスタメンで経験を積んできた佐藤は「(昨年の決勝コートに立って)負けたときの悔しさを分かっているからキャプテンに指名されたのだと思います」と、重みある“4番”を背負ってチームをけん引してきたキャプテン。プレー面では貴重な3Pシューターでもあったが、その肩に背負った重圧は大きかったようで、この試合は3Pシュートが0/5本。「いらない無駄なファウルをしたり、イージーシュートを落としたりして自分たちから崩れてしまいました」と、岐阜女の強みであるディフェンスにも反省が見えた。

 

 安江コーチは「4Qまでに『まずいな』という兆候はありました。積極性が失われて、早く楽になりたいという思いが選手にあったと思います。負けるときはこういうときです」と試合を振り返る。ただ、「3回戦で終わってしまったけれど、日本一を目指して努力を重ねてきたという面では選手たちを誇りに思いますし、またこういう悔しい思いが下級生につながっていく」とも。

 

 

 3年間でじっくり選手を育てる岐阜女は、毎年主力がほぼ3年生。今年も2年生以下の下級生はベンチから試合を眺める時間が長かったが、それでも先輩たちの無念は痛いほどに感じていることだろう。佐藤は後輩たちに向けて「自分たちが果たせなかった日本一に向けて、先生たちを信じて頑張ってほしいです」とエールを送る。

 

 

 ベンチでユニフォームの上に着る黒いTシャツの胸には、戦う準備はできているという意味で「EVERYTHING IS REDY」の文字。また、袖には周りへの恩返しの意味で「GIVING BACK」の文字が入っている。引退した3年生への恩返しの意味でも、下級生は先輩の無念も背負って結果を出したいところ。来年に向けた戦う準備は、すでに始まっている。

 

 

写真/JBA
取材・文/中村麻衣子(月刊バスケットボール)



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