月刊バスケットボール5月号

ついに決勝までたどり着いた東京成徳大 合言葉の『大丈夫』を胸に

 劇的なブザービーターで準決勝進出を決めてから一夜明けた12月27日。東京成徳大は決勝進出を懸けて札幌山の手と対戦。最終スコア96-92と競り勝ち、11年ぶりのファイナル進出を果たした。

 

 序盤から拮抗した攻防を繰り広げた両者の戦いは、前半を終えて成徳が6点リード。成徳は9人の選手をローテーションしながらアウトサイド、ドライブと多彩なオフェンスを見せ、一方の山の手も#4舘山萌菜と#14森岡ほのかを起点にカッティングを多用しながらの戦いを展開した。全国でわずか4校しか立つことのできないメインコートまで勝ち上がった両チーム。試合のクオリティーは言わずもがなだ。

 

いよいよ決勝までたどり着いた成徳#4山田「めちゃくちゃうれしいです!」

 

 展開に変化が見え始めたのは3Q。前日、ブザービーターを沈めた#10佐坂光咲、途中出場の#9山口希乃夏を起点に成徳がリードを拡大。拮抗した試合展開は一転して成徳のペースとなり、4Qには最大17点(90-73)の差が生まれた。

 

 前日は2桁点差から逆転されるまでに追い詰められた成徳。同じ轍は踏まない。そのはずだったが…。山の手が舘山のインサイドや#5森岡かりんの3Pシュートでみるみるその差は縮まり、一時2点差まで迫られた。嫌な記憶がフラッシュバックする。

 

 しかし、この日の成徳は最後まで逆転を許さなかった。「昨日の安城学園戦でも同じような場面があってドキドキしていたんですけど、こういうときこそ落ち着いてやろうと思っていました」と#4山田。前日、勝ち切った経験がこの場面で生きた。遠香周平コーチも「相手は当たってくるので、攻め急いだり慌ててスローインをしないようにというのは課題です」と反省しつつ、「そこは昨日の試合で山田が勉強したと思うし、ほかの選手も簡単でないことを自覚している」と、前日の経験から来る選手たちの戦いぶりに一定の評価を与えていた。

 

選手にとっても遠香コーチにとっても初めての戦いが始まる

 

 成徳の選手たちの間には『大丈夫』という合言葉があるそうだ。いいときも悪いときも常にこの言葉を胸に選手たちは戦っている。『大丈夫』という言葉があったからこそ、前日の大逆転が生まれ、それが経験となって山の手戦でも窮地に持ちこたえられた本物の力へと変わっていった。

 

 決勝の対戦相手は桜花学園だ。「(桜花学園は)本物の王者だと思うので、その相手に対して自分たちのバスケットがどれくらい通用するのか、それともしないのか、やり続けられるのか。このチャレンジだと思います。当然、高さのミスマッチはキツいので、スピードで上回れるのか。そこが上回れれば戦えると思います」と遠香コーチ。

 

 一人で挑んではいけない。ここまでの勝ち上がりもそうだったように、あくまでもチームで戦うことが重要だ。遠香コーチの言葉を借りるならば、「みんなで一つずつ叩いていければ岩も割れるかもしれない」のである。

 

 決勝まで勝ち上がった成徳の力は本物だが、決勝のコートは選手にとってはもちろん初めてで、遠香コーチにとってもヘッドコーチとしては初めて。経験に勝る桜花学園に対して成徳は後手に回るかもしれない。それでも彼女たちなら戦い続けられると信じている。

 

『大丈夫』だ。

 

 

写真/JBA

取材・文/堀内涼(月刊バスケットボール)



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